ep.72 再会①
グレアは帰宅すると早々に着替え主の元へ顔を出す。ハーリィはしっかりと仕事をこなせたようで粗探しをする気にもならなかった。
(アンディの事…ミア様に言うわけにはいかない。私がなんとかしないと)
期限は半年後。まだ案は浮かばないが諦めるわけには行かない。主の為に最善を尽くすだけだ。
「ミア様。グレア・モルペンデルただいま戻りました」
「御苦労だったな」
主は独断で外出した理由を聞く様子はない。信用されているのかそれとも—
「あの…カエデさんについてですが」
「恐怖の呪言。なかなかのものだ。流石だなグレア」
やはりバレてる。だが、注意をするわけでもなく主はいつも通り薄い反応をするのみだった。
「ミア様がカエデさんを想う気持ちはわかります。しかしあれが最善策かと」
「グレア」
何を言われるのだろうか。独断で行動してしまったグレアは緊張で表情を強張らせる。
「私も同じことを考えていた」
「ありがとうございます」
意外にも主は肯定的だ。しかし—その先に言葉を紡ぐ
「だがな、グレア。カエデは君が思っているよりずっと強い人間だよ」
主に意見するなんて言語道断だ。だが、これだけは確信を持っている。
「…お言葉ですがミア様。恐怖の呪言が破られることはあり得ません。あれは1000年前魔将をも撤退させた実績がある魔法です」
「ああ。私もそう願っているよ」
〜
街中を歩く男女。男の方は左腕を抱えやかましく声を上げている。
「痛てて…」
「バカね。自分でギプスを外すだなんて。治るのが遅れるだけじゃない」
カリサは深くため息をつくと、悪い顔をし楓の左腕を小突いた。
「痛えって!でも…自ら外しておいて着けてくださいなんて言えねぇよ。病院の人達に申し訳ない」
「仕方ないわね…帰ったら私が巻いてあげるわ」
「悪化しそうだからいいや」
「なんですって!?」
「冗談ですって…」
「カエデ!前」
カリサの呼びかけで楓は正面から人影に気づき、間一髪横に移動することで衝突は避けられた。
「うふふ。ごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ…」
青みがかった髪をした女性。こちらへ頭を下げると、背を向け足早に去っていく。
「まったく。ちゃんと前向いて歩きなさいよね」
「あれ?あの人…」
「なに?知り合い?」
「いや、何処かで見たような…どこだっけ?」
「はいはい。おっさん、早く学校に行くわよ」
「おっさんはやめてくれ」
〜
「ええ、着いたわ。本当にこの街に価値があるのかしら?」
『ホーマインがわざわざ脚を運んだ上、調査隊もそこで消息を絶っている。必ず何かはあるはずだ』
「うふふ。それは楽しみね。ホーマインは生きてると思う?」
『奴は寿命真近だったからな。生きていたとしてそう長くはないだろう』
「裏切りだなんて考えすぎだと思うけど。まあいいでしょう」
『アーノルドも配置についたようだ。いつでも行けるぞ。だがクイーン、君の技は目立つ。くれぐれも行動は慎むように』
「うふふ。ジャック。あなたにクイーンと呼ばれるのはなんだか擽ったいわね」
『…では普段通りイリアと呼んだほうがいいかな?』
「構わないわ。クイーンも気に入っているから」
『全く女ってやつは…君のタイミングで始めてくれ。では』
「…アーノルド。今から5分後、街の中心に邪種を…そうね200匹程送り込んでもらえるかしら?レベルは3でいいわ」
『…御意』




