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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第四章

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ep.69 焦り

 カリサ・ツィングラー 16歳 オーフィス騎士団 第三調査隊所属の平隊員。幼児期の頃から組織に身を置いており、在籍期間だけならベテランと言えるだろう。


 純白の頭髪に白い肌、透き通るような青眼。そしてモデルのようにスラリと長い手足。出身地は不明だが日本人離れした容姿をしている。


 ラグナから出来損ないと呼ばれはているが、天才の彼が異常なのであって、彼女は落ちこぼれなどではなく平均の範囲内だ。この街の搜索を単独で任されている事からも、部隊の皆から信頼を置かれているのが伺える。


 使用する神器は、可視化された風の斬撃を飛ばす純正神器べガルダ。実は彼女がこの神器に適性を持つと判明してからは5年と短い。なのでカリサも楓と同様にまだまだ成長途中と言えるだろう。


 そんなカリサだが、現在エイタンとラグナと行動を共にし、彼等の口から伝令を聞かされた。


 「三ヶ月後ですって!?」


 「ああ。出来損ないのお前にすら声が掛かるということは、大規模な招集に違いないだろう」


 「そんな…まだヴィクトリアの連中がこの街を狙ってくる可能性は高いのよ!?」


 「そうっスね…でもボスの命令は絶対っス!」


 オーフィス騎士団のボス アンデロ・イ・ハンクスからの指令は、三ヶ月後に各々部隊の拠点に帰還するようにとのこと。


 「ボスは何を考えてるのかしら。邪種と違ってヴィクトリアは人間…捕らえることだって出来るわ。それなら…」


 「カリサ・ツィングラー、ボスに対して意見など…黙っておいてやるが二度目はないと思え」


 「チッ」


 ラグナは普段荒い言動や態度ばかりが目立つが、組織に対する忠誠心は人一倍厚い。特にボスにならその命すら差し出せると日頃から豪語している。


 「カリサ先輩。決まったもんは仕方ないっスよ。カエデさんともちゃんとお別れするッス」


 「な、なんでわざわざあんな奴に…」


 「カエデか…僕もアイツには借りがあったな。いい機会だ。カリサ、これを奴に渡しておいてくれ」


 ラグナがカリサに手渡したのは、小さなペンダントだ。


 「こんな高価なもの…アンタまさか…!?」


 「そんなわけ無いだろう。アイツが持つとメッセージが出るように細工してある」


 「そうよね…流石にね…」


 「アタシはそうゆうの嫌いじゃないっスよ!」


 「え!?」


 「お前らなぁ…」


 呆れるラグナを他所にエイタンがカリサへ近づくと、小さな声で耳打ちをした。


 『一度身を置いた人間は組織を抜ける事は出来ない。でもカリサ先輩がその気なら応援するッスよ?』


 「なんのこと?」


 『駆け落ちッスよ』


 「はぁ!?」


 「お前ら何をコソコソ話している!」


 「な、なんでもないわ!」


 「お子ちゃまのラグナ先輩にはまだ早いっスね!」


 「なっ!?どうゆうことだ!」




 〜


 楓は食後のコーヒーを二人分用意し、テーブルの上へと置いた。カリサはというと太々しく頬杖をつき、当然といった風で感謝の言葉すら発さない。


 「最近忙しそうだな」


 「…そうね」


 カリサは目の前にいる楓に自分がこの街を離れると話出せずにいた。用事を伝えるなら食事の時間にそれとなく言うのが自然の流れだろう。


 エイタンの言葉を真に受けた訳では無いが、彼女自身思うところはあった。


 (邪徒相手には手足も出ないし、神器を使い始めて一年未満のカエデにも…私は向いてないんじゃ…)


 「俺…もう一度邪種が出現するエリアに行きたいんだ。聖隊の人達に見つからずに戦える場所は無いか?」


 「はぁ?今のカエデは神器すら起動出来ないじゃない。その原因を突き止めてからじゃないと…」


 「いや、そんな悠長にしている場合じゃないんだ。次アイツらがこの街に攻めてきたら…」


 楓がいうアイツらとはヴィクトリアのことだろう。確かに神出鬼没で何を考えているかわからない。いつこの街に現れてもおかしくはない。


 「…わかったわ。ちょっと時間はかかるだろうけどエイタンに」


 「俺一人で行く」


 「なんですって!?カエデ…それは辞めときなさい」


 「守られてちゃ駄目なんだ。本当に追い込まれないと、俺の恐怖は消えない気がする」


 カリサは思考を巡らせた。原因は不明だが楓はなにやらトラウマを抱えている様子で、上手く神器を起動させることが出来ない。


 「逆効果よ。現実を見なさい!」


 「そうか…わかったよ」


 楓は天井を数秒見上げると、コーヒーを片手に部屋へと戻っていった。なんとか説得出来たようでカリサも安堵した。



 翌朝


 「カエデ〜!寝てるのかしら?」


 珍しくもカリサは朝早くに目が覚めた。だが、リビングには楓の姿は無く、昼まで待っても現れないので部屋を覗くことにした。


 「い、いない!?」


 部屋のドアを開け見渡しても楓の姿はない。


 「まさか…」


 カリサは慌てて机の下のスイッチを押すも

 壁の一部が回転し始めた。しかし


 「うそ…グレイドがない…」


 そこにある筈のグレイドが無い。ただの自主トレーニングであれば心配の必要は無いが、昨日の楓の言葉がカリサの脳裏を過っていた。


 『もう一度邪種が現れるエリアに…』


 「あのバカ!」




 邪種包囲エリア32 通称 荒地の海


 この国でもトップクラスの激戦区であり、当然許可なく踏み入る事は許されない。以前、カリサとエイタンに連れられ修行に来た場所だ。


 (バレずにここまではこれたな…)


 警備している聖隊の目を盗み海を目指す。前回の経験から、このエリアでは上陸してからの戦闘が主なので、海に近づけば近づくほど警備は薄くなると予想していた。それが正しいのか潮の香りが近づくほど人の気配は薄れていく。


 (本当にグレアさんに対する恐怖か…戦いそのものが怖いのか試さないと)


 楓は焦っていた。自分の信念に背いてしまうのが


 (不思議なもんだ…今は戦えない自分が怖い)

 


—俺の手の届く範囲の人間は…守りたいんだ

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