ep.66 理由
オーフィス騎士団。ボスである アンデロ・イ・ハンクス を中心に悪魔の川を始めとした邪種出現のホットゾーンを抑え込み、人類守護の最前線を担っている。
現在、世間では邪種の最高レベルは脅威度7とされているが、オーフィス騎士団の受け持つエリアでは脅威度13までが確認されている
つまり彼等が崩れてしまえば、より多くの凶悪な化け物達が世界に解き放たれる事になる。
「アンディ辞めさせなさい!ミア様の身体は…」
「限界…なのだろう?700年前、我々は何も出来なかった。あの戦いはミア様がお一人で終わらせたようなものだからな」
あの戦い…全ての者が死力を尽くしたが、最後に立っていたのは一人のみ。そのせいで皆が主の姿を見失ってしまった。
「わかっているなら!」
アンディは手を前に出し、叫ぶグレアを制止すると言葉を続けた。
「…それとな、いいかいグレア。邪種…恐らくあれらの化け物達は全てヴィクトリアが世界に送り出している」
「は…?」
グレアの胃は更に痛み出した。
それが事実であればもうヴィクトリアと戦うしか—
「オーフィス騎士団、そしてヴィクトリアが設立されたのはもうかなり昔の話だ。組織というものが形になる前、私も彼等に誘われていたからな。ある程度の事情は知っているのさ」
アンディは立ち上がると、和室の窓を空け外を眺める。庭は日本庭園風の豪勢な作りで、荘厳な光景が広がっていた。
「正直奴らの思想も全く理解出来ない訳では無い…が、馬鹿な話だ。奴らは本気で信じている。これが平和だとな」
「化け物達が闊歩する世界が平和…ですって?」
「奴らは何も学んでいない…1000年前から何も…な」
庭を眺めるアンディの横顔は何処か淋しげだ
「わかったかい?ヴィクトリアを討てば全ては終わる。だから私は待っていた。あの御方の帰りを」
「だからってオーフィス騎士団まで…」
「いいや。奴らがその気になれば、我らなど容易く滅ぼされてしまう。理由は分からんが今までは見逃されていただけさ。人類最強などと持て囃されてはいるが、私が作った組織などただの時間稼ぎでしかない」
グレアには目の前の男に返す言葉が見つからない。ここまで追い詰められているとは思ってもみなかった。
「でもミア様のお命は…」
「ミア様なら平和の為、そのお命を惜しみなく犠牲にされるはずだ。それがあの御方の使命なのだから」
「アンディ…!」
グレアは立ち上がると、アンディの顔目掛けて拳を振るった。しかし、片手で難なく受け止められる。
「私だって心苦しいよ。手を貸してほしいだけなら、わざわざ総攻撃などしない。撤収して世界中に邪種を解き放てばいいだけだからな。少しでもミア様のご負担を減らす為だ。全ては世界の為」
「アンディ…一度ミア様と話を」
「その必要はない」
アンディの返事はこれまでに無く力強いものだった
「アンディ…怖いのね?あの御方に否定されたらって。自分の思想が間違っているんじゃないかって」
突如アンディの表情は強張り、眼光はより鋭くなり、額には血管が浮かびはじめる。
「お前なんぞに何が……いや、すまない」
アンディはテーブルに戻ると、グラスに日本酒を注ぎ一気に飲み干した。
「というわけで君と会うのもこれが最後になるだろう。ミア様の事は頼んだよ」
「アンディ!待ちなさい!」
声はかけるものの、700年の負い目があるせいか、グレアは足早に部屋を後にするアンディを引き止める事が出来なかった。
「ミア様…わたしはどうすれば…」
〜
「おはようございますです!」
「ハーリィか。グレアは?」
「グレア姉様は出かけておりますです!」
「そうか。ではグレアが戻るまでよろしく頼む」
「はいです。ミア様!」




