表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/100

ep.60 勇者の矢

 クロは自慢の脚力を使い、そこから繰り出した爪による斬撃が空を切り、驚愕の表情を浮かべた。


 「今…どうやって俺の攻撃を…」


 「あん?お前も人間かよ。ったくどいつもこいつも、魔族化すんのが流行ってんのか?」


 もう一度…クロは後ろに大きく飛び退くと、再び辺りを駆け回り始めた。音を置き去りにし、移動の余波ですら空気を揺らす。


 「この身体…少しはマシになったな。これいらねぇや」


 「ああ!!僕の雷切…」


 楓は手に持つ神器をぞんざいに手放すと、上着を脱ぎ捨てた。肩と首を軽く回し、準備体操のような動きを始めると不敵に笑った。


 「スピード自慢の魔族か…おもしれぇ」


 「あれ?…うわ!?」


 突如、北条の視界から楓の姿が消えた。少しの間を置いてからその場に土煙が上がり、空気を押しのけるように突風が吹き荒れる。


 「あいつ…どこ行きやがった!?」


 超速で動き回るクロも楓を見失った。しかし、速度を緩める事はない。駆けながら目まぐるしく辺りを見渡し、標的を探す。すると、クロは左肩になにやら暖かさを感じた。


 「捕まえた」


 「は!?」


 振り向くと、探していたはずの楓の姿。状況から察するに、動き回るクロに背後から追いついたと思われる。それも…神器すら使用していない生身の身体で。


 「んな…バカな」


 「まぁまぁだったぞ。ま、俺様ほどじゃないってこった」


 「くそっ離せ!!」


 クロは捕まれた肩を振りほどこうとするが、その握力から逃れられない。慌てて肩の肉ごと断ち切り、再び脚を使い駆け回る。


 「あり得ない…俺より速いなんて…」


 「じゃあ、次はお前の番だな」


 突然、楓はゆっくりとその場に座り、腕を組んで目を閉じた。


 「お前…なにを」


 「早く来いよ」


 「…てめぇ…ナメてんじゃねぇぞ!」


 激昂したクロは目一杯脚に力を込めると、地面に胡座をかく楓に容赦無く襲いかかった。自慢の爪を何度も振るうと地面は抉れ、空気の裂ける音がビュンビュンと耳を突く。しかし—


 「くそっ!なんで当たらねぇんだ」


 目を瞑り地面に座ったままの楓に、どれも当たる気配はない。爪の攻撃のみに集中しようか迷い始めた矢先、標的がゆっくり立ち上がるのを察知すると、クロは猫のように大きく飛び退いた。


 「…飽きた。もう追いかけっこには付き合わねぇ。これからは狩りの時間だ」



 クロは再び辺りを走り回る。楓は辺りをキョロキョロと見渡しながら、頭を数度人差し指で搔いた。その最中クロは何度も彼と目線が合い、背筋に氷を詰められているような感覚に陥る。


 そして逃走の二文字がクロの脳裏を掠めた瞬間、楓の手の甲から赤い光が漏れ出し、光は一羽の鳥の形に姿を変えた。


 鳥は翼を広げると姿を消し、無の空間から赤い弓と矢が出現した。




勇者の矢アローオブアレス 熾天の弓




 「やばいやばいやばい」


 クロの直感は大音量で悲鳴を上げ、即座に楓と真逆の方向へ駆け出した。


 楓が弓を絞るにつれ、空気が割れ、大地も呼応するかのように激しく揺れ出す。


 そして矢が指を離れた途端


 辺りは嘘のように静寂に包まれる。



  ひゅん



 北条が瞬きした後、既にその場にはクロの姿は無く

 白い羽毛だけがふわふわと散っていた。




 「井上くん…?今のは…」


 「あん?身体こいつの名前か。ちょっと加護を使っちまったからすぐ戻るだろ」


 彼が言ってる事の意味が分からず北条は困惑した


 「それより、女」


 「…へ?」


 「寝るから膝枕しろ」


 「な、なにを」


 「早く」


 「…はい」


 北条は言われるがままその場に正座し、両の大腿を貸し出す。楓は図々しくも仰向けに頭を乗せると、すぐに寝息をたて始めた。


 「さっきのは技は…?それに…」


 「井上くん…いつから僕が女だと気づいてたんだろ…」




 「クロがやられただと?」


 「!?」


 北条は声に反応し、即座に顔を上げると二人の男達がこちらを見据えていた。状況から察するに新手だと思われる。


 「こんなガキ共に!?くそっ」


 二人の男は武器を取り出し始め、錠剤を口に入れると肌が黒く染まっていく。


 「不味い…!井上くん!!井上くん起きて」


 顔を数度叩いても楓が目覚を覚ます気配はない。


 「死ねぇ」


 変化を終えた二人の敵はこちらへ接近すると、容赦無く武器を振り被った。北条は逃れる事は不可と判断し、目を瞑ってしまった。


 「やめろ」


 知っている女性の声。北条が恐る恐る目を開くとそこに居たのは、橙色の髪をした一人の少女…ミアの姿だった。


 「ミア…さん?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ