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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第三章

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ep.58 笑顔

 玄関からリビングへ案内すると、

 皿洗いをする少女にホーマインは声をかけた。


 「おや?ハーリィ。なぜここにいるのじゃ?」


 「第二賢人けんじん様!?」


 話しかけられたハーリィは驚いたようで、手に持ってる皿を床へ落としてしまう。室内には食器が割れる音が鳴り響き静寂となる。


 「ご、ごめんなさい…です」


 「いいのですよハーリィ。怪我はないですか?」


 「はいです」


 「少し自室で休んでなさい」


 退室を促されたハーリィはリビングを後にした。グレアはホーマインを窓際のソファへ案内し、ミアの正面に座らせる。


 その後コーヒーを3人分テーブルに出し、口をつけるより先に、グレアは棚からほうきと分厚い紙袋を取り出した。そして慣れた手つきでキッチンの床に散らばる破片を片付け始める。


 「ミア様…再びこうしてお会い出来るとは」


 「そうだな」


 一言挨拶する間にグレアは掃除を終え、ミアの側に立つ。そして許可が出ると主の隣の席に腰をかけた。


 「ホーマイン…先程のハーリィの反応。あなたもしかしてヴィクトリアに?」


 「そうじゃ」


 ホーマインの返答を聞くと、グレアは周囲に気を放ち始めた。そして睨見つけるかのように鋭い視線を送る。


 「安心せい、わしも見ての通り老いぼれた。残された時間もそう多くない」


 「何故そのような身体に?」


 「力を使いすぎての…核までイカれてしまったようじゃ」


 「そこまで酷使するなんて…あなたいったい」


 驚くグレアを他所に、ミアはコーヒーを一口啜るとホーマインに質問をする。


 「ホーマイン。どうしてここを?」


 「テレビであの少年を見て、ミア様が復活なされたのではと思ったまでです。グレアの情報を辿ってこの家を探し当てました」


 ホーマインの話を聞き、グレアは項垂れた。わざとでは無くとも自分のせいで主の居場所が割れてしまったのだ。そのショックは計り知れない。


 「グレア。わしは一人で来ておるし、他の者にも伝えておらん。あやつらはテレビなど観てもないだろうから、過剰な警戒は不要じゃよ」


 「そもそも、何故貴方がヴィクトリアに?」


 「理想の為じゃ。皆そうじゃろ」


 「理想って…」


 刹那、ホーマインの表情が険しく引き締められた。そして覚悟を決めたのか彼はミアに問う。


 「ミア様はどう思われますか?」


 ミアはコーヒーを口に含み、しばらくの間、沈黙の時間を作った。そして喉を通すと、ゆっくりと話し始めた。


 「今まで眠っていた私が君達に意見するのは筋違いだろう」


 「…では、もう一つお聞かせ願います。わしらとアンディが本格的に対立した場合、どうされるおつもりですか?」


 「ホーマイン!!」


 その質問にグレアは立ち上がり、今にも手を出しそうなほど怒りの感情を露わにする。しかし、ミアが小さく手を上げその先を制止した。


 「どちらにつく。ということはないな」


 「そうですか…」


 「私はあくまで女神の使者であり、人類の味方。人を害するのであれば、私は止めなければならない。それだけだ」


 「…それが…人間相手だとしても?」


 「いい加減にしろって言ってんだろ!!」


 グレアは堪らず身を乗り出し、ホーマインの胸ぐらを掴んだ。そして反対の手を大きく振り上げ狙いを定める。


 「グレア。よせ。ホーマイン…いや、それが君達の出した答えなのだな?」




 「グレアや。心配するな。今日のことは誰にも話したりはせんよ」


 グレアは客人を駅まで送るため、車を走らせていた。ラジオから流れる曲はジャスだ。主を乗せる際はクラシックだが、一人の際はジャズかロックを好んで聞いている。


 「ホーマイン。貴方達…ヴィクトリアは何を考えてるの?」


 「平和じゃよ。人類の皆の平和じゃ」


 グレアの脳裏に浮かぶのは、邪種を人間へ差し向け、魔族を復活させる彼等の姿。


 「まるで反対の方向へ向かっているようにしか見えないわね」


 「ふぇふぇ。耳が痛いのう」


 「ホーマイン…ミア様に何かあれば私は容赦しませんから。覚悟なさい」


 「グレアは相変わらず怖いのう。昔、着替えを覗こうとして…」


 もの凄い勢いでグレアがハンドルを切ると、車体は横に滑り、そのまま停車した。どうやら駅に着いたようだ。


 「なんか言ったか?」


 「…それじゃ帰るとするかのう」


 ホーマインは車を降り、グレアと別れる。

 彼は駅の階段を歩いてるうち、自身の限界が近づいている事に気がついた


―ホーマイン。次に会う時はわからないが、心情的には…私は君の味方でありたい


 「これまでの人生に意味が出来たわい。あれから700年も生き続けた甲斐が…」


 そうして笑うホーマインの身体は崩れ始め、電車に乗ることなくこの世から姿を消した

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