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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第三章

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ep.56 お昼の時間

 二年生になっても、昼休みは一年生の頃と同じ。友と食堂で時間を共にする。楓は授業が終わるといつもと同じように、弁当を鞄から取り出しミアを誘いに行く。


 「ミア、行こうぜ」


 「すまないが教師から呼ばれていてな。後で合流する」


 「そうか。じゃあ先に席だけ取っとくな」


 「ああ。頼んだ」


 楓はミアと別れ一人で食堂に向かう。教室から出ようとした途端、廊下から何やら悲鳴のような甲高い声が聞こえてきた。声の方に目を向けると、女子達が集まり、騒がしくしていた。


 (もしかして…真城先輩か?)


 まるで町中で芸能人が発見されたかのような人だかり。真城 咲と初対面に会った際にも同じような光景を目撃していたので、楓はその時の事を連想していた。


 しかし、中心を歩く人物は男子の制服を着ているようなので真城 咲では無いようだ。その男子の姿に見覚えは無いので、恐らく神器科の生徒だと思われる。


 楓は一度教室の中に避難すると、丁度クラスの友達、神器科オタクのたけしが居たので声をかけた。


 「健、あれは何の騒ぎだ?」


 「ん?どれどれ。あー!北条くんだね。神器科二年生の美男子で、成績も学年で一位の」


 「なんで知ってんだよ…」


 「いやいや、普通科の皆も知ってるよ。あの人気がその証拠。変なのは楓の方だよ」


 「言われてみれば確かにそうだな」


 楓は興味本位で人気者が廊下を通過する際に、一目見ようと教室の窓から廊下を眺めた。


 「このクラスに井上 楓くんはいるかな?」


 (ん?なんだ?)


 なにやら教室の入り口が騒がしく、教室内にいる他の生徒達の視線が自分に向けられている事に楓は気がついた。


 「楓…呼ばれてるよ」


 「え!?なんだよ…」


 楓は呼び出しに応じて教室の入り口に向かうと、噂に違わぬ美男子がいた。


 「…あれ?お前は確かトーナメントの時の…北条…ってそうか!北条 凪!」


 「うん!井上くん。久しぶりだね」


 近くで顔を見てから記憶が呼び起こされた。この男子が会場に向かうバスを待っている際、唯一自分に話しかけてくれた北条 凪である事を。


 「俺になんの用だ?」


 「その…食事でも一緒にどうかなって」


 「え?…飯!?まぁいいけど」


 彼がわざわざ神器科の校舎から自分を誘いに来たことには驚いたが、楓もその気持ちを無下にはしない。他の生徒達を押し退け共に食堂へと向かった。


 「あの…井上くん」


 「ん?どうした?」


 「今日はミアさんは一緒じゃないのかな?」


 「え?ミア」


 この時、楓はピンと直感が働いた。北条のような美男子がわざわざ自分を誘いにくるなど違和感がある。つまり彼の真の目的は…


 (これは…北条の奴…もしやミア狙いか?)


 「…えっと?」


 「ああ、今職員室に行っててな。あとで来るよ」


 「そっか」


 北条の顔を見ると安心しているようだ。楓は更に自分の推理の正しさを実感する。ここで確信を得るために追撃を‐


 「どうしてミアの話を?」


 「い、いや!別に!井上くんとミアさんが一緒に食事してるのは有名だから」


 (この慌てよう…決まりだな!)


 楓は自分の事には信じられない程鈍感だが、他人の色恋事情に対しては無駄に鋭い。それは妹に現在好きな人がいるかどうかすぐに察してしまうほど。


 二人は食堂の席に着き、ミアの帰りを待った。


 「トーナメントは途中で邪魔が入って…神器科の皆はあの日のために頑張ってきたのに」


 「僕は一年だからまだ…三年生だった今の卒業生達は無念だっただろうね」


 神器科トーナメントは一年に一度の大舞台だ。日程的にも調整出来なかったようで、あのまま流れてしまった。


 「井上くん凄かったね」


 「ん?なにが?」


 「真城さんに勝ったんだよ?あのまま行けば優勝だって…」


 「いや、あれは…」


 楓の脳裏に過ぎる、勝ったと言っていいのかわからない内容の試合。どこまでが能力なのかはわかってないが、全てだとしたらしょうもなさすぎるので、偶然が重なっただけだろう。


 「そういや、他の選手の試合あまり見てなかったな。北条はどうだったんだ?」


 「一回戦目は無事に勝てたけど、その後避難が始まっちゃって」


 「そうか…」


 北条と楓が話していると食堂が少し静かになった。何事かと視線を向けると、弁当箱を持ちこちらに歩いてくるミアの姿があった。


 「ミアか」


 「あ…」


 情けなくも小さな声をあげる北条を見ると顔を真っ赤にしていた。その様子から誰が見てもミアに気があることは明白で。楓も笑いを精一杯堪えていた。


 「待たせたな。おや?そちらは」


 楓は北条の肩を小突いて、彼の口から話すように促した。意地悪ではなく楓なりの気遣い…アシストだ


 「ほ、北条 凪です」


 「今日は北条も一緒に食べるって。いいよな」


 「ああ。構わないとも。ミア・リヴェデーレだ」


 「はい!よろしくお願いします」


 北条の改まった態度に楓はにやけ顔を隠せなくなっていたが、手動かし食事の準備を進める。


 ミアがランチョンマットを敷き、襟元にナフキンを掛ける。楓にとっては見慣れたものだが、北条はその姿や所作に見惚れている様子だった。


 「何か?」


 「いえ!すみません」


 あまりに凝視していた為、ミアは北条を不審に思ってしまったようだ。北条も視線を外すと席から立ち上がると、料理の注文をしにカウンターへ向かった。


 「ミア。先生からの呼び出し長かったな」


 「ああ。学級委員長にならないかと提案を受けてな」


 ミアは抜けているところはあるが、成績は優秀で筆記テストでは常に一番。初めて知ったとき楓はとても驚いたが、他の生徒達は当然の事のように捉えている。


 「え!?良いじゃん。委員長になるの?」


 「いや、私には荷が重そうなので断ってしまった」


 「そうか…学級委員長は忙しそうだからな」


 「放課後は自転車の訓練もあるし、なかなか時間が取れないのだ」


 「そうか…」


 「補助輪をつければ問題なく乗れるのだが…しかし、グレアが首を縦に振らなくてな」


 「まぁ…時間があれば俺も付き合うよ」


 「お待たせ」


 北条が料理を手に席へ戻って来た。メニューはハヤシライス定食だ。


 「じゃあ食べるか」


 皆で手を合わせ食事を食べ始める。


 「あの…ミアさんが食べているものは?」


 「これか?クリームパンだが」


 驚愕の表情を浮かべる北条を横目に楓は苦笑いしつつ、ミアと北条の仲を深める為サポートにまわった。

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