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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第三章

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ep.47 開戦

 注目の対決。その決着に誰もが唖然としていた。

 それはこの二人も同じ…


 「今…何が起こったの?」


 「わかんねーっスけど、カエデさんの勝利みたいっスね…」


 「そうじゃなくて!あの能力は…」


 ハプニングはあったが、楓の能力は確かに相手の力を打ち砕いていた。他の観客達や初見の者にはわからないが、カリサやエイタンは未知能力の存在に気づいているからこそ理解できる。


 (やっぱり楓の力は能力の無効化なの…?)


 カリサが考察していると、その横でエイタンが何やら左耳に付いた無線機に手を当て始めた。


 「あ、すみません。ラグナ先輩から連絡ッス」


 エイタンが話し始めると、先程までとは一転、その表情が真剣なものへと変わる。


 「あー…わかったっス。カリサ先輩。今すぐカエデさんのとこに行って欲しいっす」


 「どうしたの?」


 「ラグナがヴィクトリアと遭遇したらしいッスよ。場内はアタシが見てるんで、カエデさんを頼んだッス」


 指示がラグナへの加勢でないことは、彼のプライドの高さを考慮してのことだろう。敵の目的はわからないが、前回のゴウラ達の件を踏まえると、楓の護衛は必要と思われた。


 「…わかったわ。気をつけてねエイタン」


 「カリサ先輩も頑張るッスよ!」


 エイタンは近くの警備に観客達を避難させるよう指示を出し始めた。ロイヤルのバッチを見せると警備員は顔色を変え、避難の準備を進めた。




 その頃、グレアは現在昼食の用意をしていた。ミアは一人でテレビを見ていたが、異変に気が付き、キッチンへと声を掛けた。


 「グレア。テレビの様子がおかしい」


 「どうされましたか?」


 グレアが戻りテレビを確認すると、砂嵐の映像が映し出されていた。様々な要因が考えられるが…


 「これは…アンテナの調子が悪いのかもしれませんね。数分置いて直らなければ修理の者を呼びましょう」


 「カエデの試合は見られるのか?」


 「先ほど終わったばかりなので、まだ時間に余裕があるかと。いざとなれば自家用ジェット機で会場までお送り致します」


 「そうか。ありがとうグレア」


 ミアは既にジェット機を何度か利用していた。

 主な用途は世界中のカフェ巡りだ。




 「カエデ!」


 「ああ、カリサか…さっきの試合は…」


 「話してる場合じゃない!…ここから…」


 カリサが楓の腕を引き、避難しようとしたその時、後ろの壁に突如大穴が開通された。巻き込まれた聖隊の兵士数人が地面に横たわり、廊下には足音が1つだけ響いていた。


 「お前…さっき勝ったガキだな?俺はミドラってんだ」


 威圧するような低い声、そして筋骨隆々としたドレッドヘアーの男が壁をぬるりと潜り、こちらへ近づいてきた。


 「アンタもヴィクトリアね…?」


 「女。貴様に用は…いや、報告によるとゴウラの調査中、この街にロイヤルの女も居たらしいな。お前がそうか?」


 敵はカリサの問いかけには答えなかったが、それを肯定と捉え、神器べガルダを起動させた。楓も即座にグレイドを起動させ構えを取る


 「カエデ…あの男はやばいわ」


 「ああ。わかってる!」


 「純正神器が二つ…クイーンへのいい土産になるな。さて、一緒にくんのか、死ぬのか。さっさと選べ」


 カリサが否応なしにべガルダによる風の斬撃を飛ばす。続けて楓もグレイドによる追撃エアブレイクを加える。ミドラはそれらを強靭な太腕で一歩も後退することなく受け止めた。


 「なかなか痛えじゃねえの」


 能力や武器を使った訳でもなく、素肌で自身らの必殺技を受け止められた。カリサはミドラとの実力差を察し、即座に無線へと手を伸ばす。


 「エイタンこっちに敵が…!」


 『あー…すまねぇっス。こっちにも二人…ッ!』


 カリサが無線機で援軍を要請するも、向こうでも既に戦闘が行われている様子で、通信は途中で切断された。


 「うそ…」


 「カリサ…ここは俺に任せろ!」


 「はぁ!?なに言ってんの?」


 「敵、他にもいるんだろ?ここは大丈夫だ」


 「もう…あっち行ったりこっち行ったり、私はパシリじゃないのよ!」


 ミドラは二人に対し一気に距離を詰めると、その太腕を引き締め、拳による強打を繰り出す。楓は咄嗟にカリサとの間に滑り込みグレイドで防御した。


 「お前ら痴話喧嘩は他所でやれや」


 「ぐっ…行ってくれ。俺は大丈夫だから…」


 カリサは楓を守るよう指示を受けている。しかし、他にも敵は複数確認され、明らかに人手が足りていない。


 「わかったわ…何かあったら会場の方に逃げるのよ!私はエイタンの加勢に向かう!」


 「ああ。頼んだ!」


 楓はカリサを見送ると、グレイドで相手の腕を押し返し、後ろに数歩下がった。


 「舐めやがって…タイマンで俺に勝てるってか?」


 「ああ。俺ならお前に勝てる」


 「生意気なガキだ…おっと」


 突如、迫りくるグレイドの一閃。ミドラは再び腕で受けようとしたが、ギリギリそれを躱した。


 「…さっきの攻撃は受け止めたのに、なんで今のは避けたんだ?」


 グレイドを掠めたミドラ腕から赤い血が滴り落ちる。躱したのは先程の斬撃との違いを、本能で反射的に感じ取ったからだ。


 「ガキ…貴様、手を抜いていたのか?」


 ミドラの問いかけは半分正解だった。楓は夢から覚めて以来、戦闘中は無意識に身体が動くようになっている。その感覚は自分の身体能力を上回る相手でなければ、自動的に処理してしまう程に鋭い。


 「俺のグレイドは…身体能力への還元率が異常に高い。制御しきれないと相手が大怪我しちゃうからな…」


 楓が倒れている聖隊員達に目を向ける


 「お前は大怪我させても良さそうだ」


 グレイドの刀身全体が真紅に染まり、輝きを放ち始めた。

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