ep.43 お披露目
卑怯者。それが神器科の生徒達がつけた楓のあだ名だ。居心地の悪さは度を越しているが、本戦の地までは神器科の生徒達と同じバスで向かわねばならず、前日のホテルも共にする。これも不正対策の一環。
楓は今、近距離型予選通過者15名の生徒達と共に学校の駐車場で待機していた。そして、ふと人数が一人足りない事に気がつく。
「あの…真城先輩は来ないんですか?」
「はぁ?卑怯者が真城さんの名前を出すな!」
この有り様だ。楓は質問を諦め、とにかく時間が過ぎるよう空を眺めた。すると、一人の男子が他の生徒達に構わず楓に声をかけた。
「真城さんは家の都合で現地集合だよ」
「ああ、そうなんですね!」
現地集合が許されるなら自分も…と少しモヤモヤした気持ちが芽生えたものの、会話が出来る生徒がいるのは嬉しい。顔をよく見てみると、中性的な整った顔立ちをしている、かなりの美青年だった。それに加え男子にしては髪は長めで、体格も華奢なので制服を着ていなければ、女の子と勘違いしてしまいそうな程だ。
「敬語はいいよ。僕も一年生だから」
「え、一年で本戦決めたの!?凄いな…」
「それは井上くんもだけど…」
楓も言われてみればと納得した。ロイヤルのカリサ達と常に行動しているので、彼の感覚が狂っているのだ。
「北条、そんな奴と会話するのはやめろ」
他の生徒から野次が飛ばされる。当然、自分のせいで他人に被害が及ぶのを嫌う楓には耐えられない状況だ。
「なんか、ごめんな。俺は井上 楓。もう話さない方がいいな」
「僕は北条 凪。今は先輩達がうるさそうから、また今度話そうね」
〜
幸いなことにホテルは一人一部屋だった。これで相部屋なら目も当てられない。
「さてと…」
楓はグレイドを取り出し、実験を始める
「能力…あの時はどうやって出せたんだ?」
何度かエイタンに能力を使用してもらい試したものの、再びあの鳥が出ることはなく、能力の無効化も出来なかった。お陰で何度か命の危機にまで晒された。
(ラグナとの戦い、それとエイタンとの手合わせで、能力を出せる神器使いとの差は痛いほど身に染みた。真城先輩も純正神器を使ってくる。なら恐らく能力も…今のままだと勝てないかも…)
楓は目を閉じ集中を始める。しかし、能力が発動する兆しは無かった。
「いつもこれだ。俺が自分の意志で手に入れたものなんて…」
その時、ふと友の言葉が脳裏に浮かんだ
―君がいかに努力しているか、私は知っている
「そうだよな。努力の成果を、お前見せてやらなきゃな。でも…何故だかミアの奴、俺が大会に出る事、そもそも俺が神器を使える事、全く驚いてなかったな。流石に神器まで知らないって事は無いだろうし…」
〜
大会当日、第一回戦
会場はどよめきに包まれていた
―あいつ何者だ?
―何だよあれ…
楓の神器の起動、普段から神器を使うものや、目にしてきた者たちにとって、それはあまりにも歪で禍々しい光景だった。
〜
その様子はミアとグレアも、自宅からテレビの中継で目撃していた。
「ほう。あれが楓の武器か」
「はい。神器と呼ばれているものですね」
「神器か…現代の者達は“アレら”をそう呼んでいるのだな」
「ええ、私には理解できません。何が“神器”なものですか。女神の汚物、いえ…黒歴史でしょう」
「確かに女神も知られたくないだろうな。アレらが世界中の人間達に手渡された本当の理由は」
―くだらない
〜
楓の1回戦の相手は、他校の三年生 芳賀 健人
彼の武器はダブルアックスの形をした複製神器
本戦に出場できるだけあって、その実力は指折りで、それを証明するかのように卒業後の聖隊配属が決まっている。
「なんだその神器は…気持ちわりぃ。聞いたぜ?お前卑怯者なんだってな」
(なんで他校の生徒にまで知られてるんだよ…)
「では両者構えて…試合…始め!」
審判から試合開始の合図が掛かる
―は?
―今何が起こったんだ?
勝負は一瞬―芳賀が間合いに入った途端、頭部への横一線。当然、楓は加減していたし、本戦に向けて対戦相手の身体を切断してしまわないよう、斬撃では無く、衝撃系の攻撃を繰り出す練習していた。
「すみません。大丈夫ですか? あ!…」
楓は芳賀に手を貸そうとしたが、泡を吹いて倒れている様子だったので、医療班の担架に任せることにした
「ふぅ。ヒヤヒヤするわね」
「アタシが徹底的に教えたんで、心配無用っスよ!首が飛ぶなんてないッス。たぶん」
「そんな…芳賀先輩が…ど、どうせまぐれでしょ。ね!真城さん」
「ええ…そうね(まぐれ…あれが?まさか彼が純正神器の適合者だったなんて…どうやら、ただの卑怯者では無さそうだわ)」
楓の二回戦の相手 真城 咲は警戒心を高めた




