ep.40 不穏
エイタン・ニケルメ 最年少ながらオーフィス騎士団 五番隊副隊長という地位に就いており、組織のなかでも三番隊副隊長のラグナと双璧を成す若き天才だ。
彼女の神器の名はクリセイオー。刀身は銀だが刃の部分は輝く金に塗装されており、柄は赤色の派手な大剣だ。クリセイオーの特筆すべきはその能力—
「カエデさん。っぱないっスね!」
「いや…エイタンの方が凄いだろ」
楓は現在トーナメントの予選に向けての練習中。カリサは妹がベッタリなので、特別にエイタンに修行をつけてもらっていた。
「アタシとここまでヤれるのは、ヤバいっス。これマジっスから!」
(確かに…エイタンは能力を使ってないとはいえ、人類最強組織の副隊長と、身体能力だけならここまで戦えてるんだもんな…)
辺りを見渡すと平坦だった筈の大地が、大きな穴や斬撃の跡で見る影もなく荒れ果てていた。
「ただ、ロイヤルって分かってても、小さな女の子に手加減されてると思うと、なんかこう…来るものがあるな…」
「いやいや、まだ神器起動させて一年も経ってないんスよね?カエデさんは伸び代だらけっスよ!」
実際、エイタンは楓と剣を合わせ驚愕していた。
(正直、今のカエデさんに勝てる学生がいるとは思えないっスね…いや、一人いたッスか)
「そうか…もっと頑張らないとな」
その心とは裏腹に楓の身体からエネルギーが溢れる感覚があった。あの夢での疲労も抜け、今は万全の状態だ。
(エイタンの言葉を真に受けるわけじゃないけど…)
―正直、負ける気がしない
〜
一方、楓の家で妹とカリサは仲良く炬燵を囲み、蜜柑を食べていた。
栞は蜜柑の白い筋を指で丁寧に剥きながら、不服そうな顔をしている。
「お兄ちゃんは毎日毎日、妹を置いて何処行ってんだか」
「あら?栞はお兄ちゃん大好きっ子だったの?」
「そうでは無いですけど…せっかく帰ってきたのに」
「お邪魔だったかしら?」
「いやいや、カリサさんは邪魔じゃないです!お陰で今一人ぼっちじゃ無いし!でも家族なんで…」
家族―カリサは物心ついた頃から組織に配属され、親の顔も知らないので、彼女には分からない感覚だった。
「栞は高校も神器科よね?その後は?」
「あたしはロイヤルに入るのが夢なんですよー!」
カリサがぎくりと肩を揺らす
「でもどうやったら入れるんだろ?カリサさん知ってます?」
「さ、さぁ?わからないかな〜…」
カリサの態度を見て栞は疑問を感じたが、他の話題を思いついたので深くは気にしなかった。
「そう言えば神器トーナメントが近いですよね!今年の目玉はやっぱり真城先輩かな〜!あたしの憧れなんです」
「それは楽しみね」
(真城…真城 咲ね。今組織がスカウトしてるっていう、うちの神器科二年で1位の成績を誇る、純正神器家系のお嬢様)
「カリサさんは注目してる選手とかいます?」
「私?うーん、秘密かな」
「え!?もしかして彼氏とか?」
「ち、違うわよ!」
〜
某国、地下室にて。バーのような内装の室内に、四人の男達がいた。三人はカウンターで酒を呷り、もう一人は壁の突起にぶら下がり懸垂をしている。
部屋の扉が開き、そこへ小さな女の子が現れた。
「ハーリィか。クイーンはなんて?」
「気をつけてって言ってたです」
「ひ~!ありがたいお言葉!」
「これ貰ったです」
「こ、これは…チーフ!」
チーフと呼ばれた男が懸垂を止め、壁から地面へと降りた。男は入れ墨をいれた浅黒く筋骨隆々な肉体をしており、髪形はドレッドヘアー、いかにも屈強そうな外見をしている。
男がハーリィから手のひらサイズの宝石を受け取ると、舐め回すように観察を始めた。
「これは…【奴】を召喚出来る魔の宝具か…クイーンはゴウラの件を、かなり重く見ているようだな」
「ゴウラって誰だ?暗殺部隊にそんな奴いたか?」
「調査隊のゴウラ・アンガスだな」
「調査隊?そんなカスにクイーンが?」
「ゴウラは邪徒化にも適合した男だ。俺達程では無いが入隊条件も満たしていた」
「へぇ〜、それはやりがいありそうですね」
「だが殺ったのは高校生のガキらしいな」
「なーんだ。やっぱカス?どうします?チーフ」
「本当に殺ったのが高校生のガキなら、神器トーナメントとかいうふざけた大会に出るてくるだろう」
「エト、バルドロ、ギル、ハーリィ。行くぞ…日本へ。皆殺しだ」
―ヴィクトリア兵団 直属 特殊部隊 アドス
隊長のミドラ・イプシロンは部下を引き連れ狩りへと向かった
序章にイラスト貼ってみました




