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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第三章

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ep.39 お買い物

 「カエデ。これあげる」


 「え、何これ」


 ある日の朝、カリサからバッチのような物を手渡された。全体は銀色で、そこに赤や青などの小さな宝石が装飾されており、中心には自らの尾に噛みつく蛇の姿が描かれている。


 「このバッチはオーフィス騎士団 調査隊員の証よ」


 「…はい?」


 カリサが上着の内側を開くと、そこには同じバッチがつけられていた。楓の胸中は嫌な予感で埋め尽くされる。


 「ちょっと待て…どうゆう事だ?」


 「あ、でもカエデは仮隊員だから、まだ身に着けちゃ駄目よ。失くさないように保管してなさい」


 この時、楓は珍しくも勘が働いた。カリサ再びが碌でもない計画を立てていると。


 「…とりあえず説明を」


 「全校神器トーナメントって知ってる?」


 「ああ。二週間後に行われる神器科の全国大会だろ?毎年テレビでやってる…」


 楓の答えを聞き、カリサはニヤリとした表情を浮かべたのを見て、楓は何かを察した。


 「おい、まさか…」


 「私とエイタンで、カエデを組織に推薦したんだけど、その前に実績が欲しいって言われたのよ」


 「ちょっと待てぃ!推薦ってなんだよ!また勝手な事を…」


 推薦はカリサの嘘だった。楓が見せたラグナの神器を無効化した能力。組織の上役達は興味を持ったものの、少年は無所属で素性の知れぬ人物。


 今回大会に出場させるのは、少年を一度公の場に出すことで、他に反応する組織や国がないか確認する為。言わば様子見だ


 「決まったものは仕方ないじゃない♪」


 「そもそも俺は普通科なんだぞ…出れるわけないだろ!いや…どうせロイヤルの権力でどうにかするんだろうな…」


 「わかってきたわね。とりあえず一週間後に選考があるから、本戦に出れるように頑張って」


 

 「はぁ。どうすんだよこれから…テレビに出たくねぇよ俺」


 「眼鏡とか掛けてみる?」




 「…なぁ、妹よ。まだ終わらないのか?」


 「次はあっちの店」


 複合型施設のショッピングモールは年も明け、冬休みと言うこともありセールなどのイベントも盛んで、人で溢れ活気立っている。この日の楓は、しおりの荷物持ちだ。


 「服なんか買っても寮生活で殆ど制服だろ?まだ背は伸びるかもしれないし、金が勿体なくないか?」


 「わかってないな。てかお兄ちゃんも少しくらい服買ったら?そんなんだからいつまで経っても彼女出来ないのだよ」


 「やかましい」


 楓もお洒落に興味がないわけでは無いが、日々の節約生活で財布の紐が固い。それに比べ栞の神器科では給料を貰いながら学校に通える。なので楓とは違い手持ちに余裕があるのだ。


 「カリサさん…は釣り合わないか…誰かいい人いないの?」


 「いい人か。最近女子とは…」


 ふと、思い浮かぶのはいつも無表情のミア。そして、その保護者のグレアくらいか


 (ミアか…カリサが釣り合わないならもっと無理だな。グレアさんも同じく…)


 「あ、花子と寧々だ!」


 栞が突然少し離れた場所にいる二人組に気づくと、大きく手を振り始めた。恐らく同じ歳くらいの女の子に見える。


 「花子〜!寧々〜!」


 「友達か?」


 「うん。神器科で同じクラスなの」


 「話してきたら?俺はその辺で時間潰してるから」


 「ありがと!」


 寮生活で家族より友達の方が一緒にいる時間が長いとはいえ、外出先で会うのとはまた違うだろう。楓は妹に気を遣って大荷物を持ちながらその場を後にした。



 「さっきのがお兄ちゃん?」


 「そうだよ〜」


 「流石に栞の兄なだけあってかっこよかったね」


 「でしょでしょ!」


 「やっぱり栞と同じでお兄ちゃんも強いのよね…?」


 「まさか。お兄ちゃんに神器の適正は無いし、喧嘩もしたこと無いよ。私の足元にも及ばないんだから〜」




 独りぼっちになった楓は人混みに疲れ、カフェに入ることにした。店内で空いてる席を探していると、偶然にも友人の姿が。


 「ミア?」


 「カエデか。奇遇だな」


 「ミアも買い物か?一人?」


 「いや。グレアは用あって席を外している」


 「なるほどな。他に席空いてなさそうだし、俺も座っていいか?」


 「ああ。構わないとも」


 ミアの席はソファが二つあり、スペースに余裕がある。奥に荷物も置かせてもらい、楓は彼女の正面の位置に座った。テーブルの上を見ると食べかけのパンケーキとコーヒーが二人分置いてある。


 「カエデの分も頼もうか?」


 「いや。俺はコーヒーだけで充分だよ」


 「そうか」


 「あら?カエデさん?」


 楓が声の方へ目を向けるとグレアの姿があった。用を済ませ丁度戻ってきたというところか。


 ミアが猫を呼ぶように自分の横を手でポンポンと叩くと、グレアは頭を下げそこへ座った。


 (これじゃ三者面談だな。何を話せば…)


 「カエデくん。何も食べないのですか?」


 「あ、はい。妹と来てまして」


 「カエデに妹が…そうか。今は一緒に居ないのか?」


 「友達と話してるよ」


 その時、楓は一つこれは言うべきかと悩み始めた。まだ乗り気では無いが、友達ミアには話しておくべきだろう。


 「そうだ。俺二週間後くらいにテレビに出るんだ」


 「…」


 覚悟を決めたカミングアウト。しかし、ミアからの反応は一切ない。


 「テレビですか!それは凄いですね」


 「グレア。テレビとは何の事だ?」


 「確かにミア様のお家には置いておりませんね」


 (ミア…今度はテレビも知らないのか…)


 グレアがテレビについて説明を始めた。ミアは、そんなものが…等と相槌を打ちつつ素直に聞いている。


 「カエデさん。二週間後、ということはもしかすると、神器トーナメントに出場するのですか?」


 「あ、はい。出ます」


 「でしたらテレビでなく、現地で観戦するという選択肢も取れますね。ミア様。いかがなさいますか?」


 (現地観戦…当然のように言ってるけど…。これが金持ちか)


 トーナメントのチケットは一年前から販売されており、当然、今から取れるはずはないのが普通だ。


 「せっかくだ。テレビで見よう」


 (なぜ…)


 「ではこの後、ミア様に相応しいテレビを選びにいきましょう!」


 「ありがとうグレア。カエデ、楽しみにしているぞ」


 「…ああ。頑張るよ」


 その後、妹からの連絡を受けミア達と別れた。

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