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君が選ぶのは  作者: ぬしぽん
第一章
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ep.3 親友

 「はぁ」


 重いため息を吐きながら職員室を出た。制服はボロボロで全身擦り傷だらけの姿を見て先生達は驚き心配したが、坂道を転がった事を話すと笑いが起きた。おまけにその後しっかり説教された。


 自転車のタイヤはパンクしていたが、車輪は問題無く回った事だけは不幸中の幸いだった。お陰で昼休みには間に合った。


 とは言え遅刻してしまった事実は変わらないし、普通に落ち込む。俯きながら教室を目指し廊下歩いていると誰かにぶつかってしまった。


 「おい。てめぇふざけてんのか?」


 顔を上げると自分より一回りは大きい。まるで壁のような男が立っていた。オマケに人相も悪くいかにも不良といった風貌だ。


 (不味いな。神器科の末藤だ…)


 末藤は同じ1年の中でも素行が悪いことで有名だ。普通科の俺とは校舎も違うし基本的に関わりは無いのだが、神器科の奴らも昼休みは食堂を利用しにこちらの校舎に来る。向こうの校舎にも食堂はあるのだが、こっちのほうが美味しいらしい。同じメニューを出しておけ。


 「悪い。わざとじゃないんだ」


 「はぁ?だからなによ?」


 謝ったのにこれ以上何を求めているんだ。とにかく面倒事はごめんだ。もうヘトヘトだし。誰か助けて。


 「まぁ、落ち着けって〜」


 そんな願いが通じたのか、本当に救いの者が現れてくれた。


 「小林。お前は関係無いだろ。すっこんでろ」


 末藤に拳を収める気は全く無く、完全に臨戦態勢のようだ。一発殴られるだけで済めばいいけど。何より神器科の奴らはプライドが高い。後々まで恨まれるくらいならここで殴られて終わらせた方がいいか?


 「こうゆうのも内心に響くらしいぞ〜。お前は実力あるんだから勿体ないって」


 (確かに。普通に考えたら暴力振るった時点でアウトだよな。冷静に考えると俺の感覚が麻痺してたのかも)


 「チッ。ゴミクズ野郎。次はねえぞ?」


 末藤はそう吐き捨て去っていった。何を考えいるかはわからない。きれいさっぱり水に流してくれるといいのだが。


 「本当にすみませんでしたー!」


 誠心誠意心を込めて頭を下げ声も張り上げた。迷惑をかけたのは事実だし、何より平穏な学園生活を過ごす為でもある。後々まで恨まれるような事は絶対あってはならない。



 「瞬〜!お前はなんていいヤツなんだ。仏かよ」


 小林 瞬 中学生の頃からの親友で気のいい奴だ。進学してからは神器科に行ってしまい、離れてしまったのが本当に寂しい。本音を言うと昼休み毎日一緒にご飯食べて欲しい。


 瞬は背が高く端正な顔立ちとその穏和な性格から女子達からモテるのは勿論、男子達からの人望も厚い。嫉妬する気にすらならない完璧人間だ。


 「暑いから抱きつくなって。それよりその制服どうしたんだ?既にボコられてた?」


 瞬が冗談交じりに笑みを浮かべて聞いてきたが、深刻な顔で心配されるより余っ程気が楽だ。


 「話せば長くなるが」


 「じゃあ昼休み終わるし帰るわ」


 「えー」


 学科が離れてしまってしばらく話すことも無かったが、自然とやり取りができる。親友って素晴らしい。


 「末藤もああ見えて悪いやつじゃ無いんだ。実戦研修が近くて気が立っているのさ。許してやってくれ」


 瞬に言わせれば世の中の全ての人間が善人になりそうな気がする。


 「わかってる。将来国と人類の為に戦ってくれる人材なんだ。神器科の生徒達には頭が上がらないよ」


 本心からそう思ってるし感謝もしている。


 「それにしてもどうして普通科なんだ?適性は無くても楓ならー」


 「瞬。本当に遅れるぞー」


 「わかったよ。じゃ、また」


 「はいよー」


 親友の話を遮った自分に嫌気がさした。

 

 (神器科ねぇ…)


 今から120年ほど前、邪種と呼ばれる怪物共が世界中に姿を現した。人類は世界大戦の真っ只中だったが、邪種の襲撃を恐れた各国は停戦協定を結び怪物達との戦いに備えた。特に軍事力の高い国家の周辺には何故か数多くの邪種が集まり、脅威度の高い個体も集中して出現した。


 邪種相手に銃火器に対する効果は薄く人類は苦戦を強いられたが、戦況は一転。神器と呼ばれる武器が討伐に絶大な成果を上げた。


 神器は化け物が現れた100年前より遥か昔から使用されていたが、その数は少なく貴重で、適性を持つ人間も簡単に見つからない為、戦争の前線で使われることは殆ど無く本土の防衛に使われるのが主だった。邪種討伐に関わらず兵器として使う分にも強力ではあるのだが、希少性と奪われた際のリスクを考えると国の外に出すより国内の防衛に使うのが最善だろう。


 今では国の防衛は銃火器を使った軍隊。周辺に現れる怪物に対しては神器の適正者による聖隊と呼ばれる部隊が編成され討伐に向かうことになっている。邪種が海からしか現れ無いのは幸いだった。街中に突然出現し一般人が襲われることは殆ど無い。


 邪種の出現頻度、脅威度が高い個体が出現し易い国には各国の聖隊が定期的に派遣されるなど国同士助け合う体制が築かれている。化け物達が現れたお陰でこの100年、人間同士の戦争は無く平和になったというのは皮肉な話だ。


 神器の研究が進み、壊れた神器を解体しそこから汎用性の高い武器を開発出来る技術が30年程前に発見された。純粋な神器より性能は劣るが、適正値が緩いため邪種相手に戦える人間が何倍にも増えた。とは言え既存の神器をわざわざバラすような事は勿体無くて出来ないためその数は依然少なく、貴重な戦力の補完の目的で、神器科という学科が新設された。まだ2つの中学と3つの高校にしか導入されて無いが、学費は無料で通いながら給料を貰う事もでき、将来的に聖隊に入ることができたなら給料もかなり良いので人気は高い。それ故に神器科に入れるのは選ばれたエリートだけだ。


 「ま、俺には関係無いかな」


 楓も幼い頃は確かに聖隊に憧れていた。しかし両親を事故で亡くしてからは命の危険がある仕事は辞めたほうがいいと考えるようになったのだ。唯一の肉親となった妹を1人残して死ぬなんてあってはならない。それなのに-


 (あいつめー!兄の気持ちもわからず神器科に入りやがって!)


 妹は何食わぬ顔で中学の神器科に合格した。中学で神器科に入れるのはエリート中のエリート。周りから神童と呼ばれるような存在だ。最初は腰が抜ける程驚いたし祝いはしたが、複雑な気持ちだった。


 「はぁ」


 息を吐くと込み上げてきた感情もすっかり消え去った。


(っと。休み時間はあと何分だろ)


 時間を確認する為にポケットに手を突っ込みスマホを探したが見つからない。心当たりがあるとすれば少女の家だ。カフェオレを作った後キッチンの台の上に置いたままにした気がする。


 (本当に散々な1日だな)


 悲劇の主人公ぶっても解決はしない。流石にスマホが無いと不便な為、面倒だが今日の放課後に再び少女の家にお邪魔させて貰う事にした。



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