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君が選ぶのは  作者: ぬしぽん
第二章
34/50

ep.32 代償

 手合わせの場を解散した後、カリサは楓を家まで担ぎ、部屋のベッドで寝かせた。


 その1時間後、再び楓の家にエイタンが訪れた。ラグナの方はホテルのベッドでふて寝しているらしい。


 カリサは不馴れながらコーヒーを二人分用意し、客人エイタンに自分なりのおもてなしをする。エイタンに敵意などは見られず、落ち着いた様子でカリサの話に耳を傾けていた。



 「—なるほどッス。カリサ先輩的にグレアって人はアタシらの敵では無いと」


 「ええ。ボスの事も知ってそうだったし。個人的に監視はしていたわ」


 「そうっスねー…アタシは良いと思いますけど。まー上の判断次第ッス!」


 組織に対する裏切りと判断されても仕方のない事だ。それでもあの場で打ち明けたのは、カリサなりのグレア達への恩返しといったところか。


 「グレアさんのこと、ボスはなんて?」


 「いやいや、アタシらもボスとは簡単に話せないっスよ!今、フェン隊長に頑張ってもらってるッス!」


 「そう…フェン隊長が」


 五番隊隊長フェン・イーゲルト その実力は言うまでもないが、規律に厳しい人物でボスからの信頼は特に厚い。彼の性格であれば今回の事を黙認しないだろうと、カリサは憂慮していた。


 「それよりアタシはカエデさんが気になるっスよ!なんスかアレ!カリサ先輩が教えたんスか!?」


 椅子から身体を乗り出し、目を輝かせるエイタン。アレとはトライデントを無効化させた、楓の未知の能力についてだろう。


 「まさか。私も知らないわよ。なんなのアレ…」


 神器を無効化する能力。邪種に対してどのように作用するかまではわからないが、神器の適正者に対する抑止力としては充分過ぎる力だ。アレが知られれば、どの国も喉から手が出るほど欲しがり、争いも起こりかねない。


 「そうっスか…じゃあ本人に聞くべしッスね!!」


 「ちょっ!待ちなさい!」


 リビングを飛び出したエイタンは楓の部屋を目指し、階段を駆け上がる。勿論、本気では無いものの、その速度は凄まじく、カリサは引き止めるのを諦め溜息をついた。


 「カエデさーん起きるッス!さぁさぁ!」


 

 エイタンは寝ている楓の身体を容赦なく揺さぶふ。

 しかし、彼の意識は戻らない


 「え、大丈夫っスか!?寝たら死ぬッスよ」


 「いやいや、雪山じゃないんだから…」


 「あ、カリサ先輩!カエデさんやばいっスよ!」


 「ラグナと戦って疲れてるのよ。寝かせてあげて」


 エイタンでは無いが、彼が起きたら聞きたいことはカリサの方にも山程あった。それと今後の自分についての課題が脳裏に浮かび、再び深く息を吐いた。





 帰宅したグレアは即座に自分が見た一部始終をミアへと共有する。かなり衝撃的な内容ではあったが、ミアはというと眉一つ動かさず窓の外を眺めていた。


 「そうか。カエデが私の能力を」


 「はい。間違いありません」





 ―勇者の盾ディフェンスオブアレス

 指定した範囲を天界と繋げ、この世のあらゆる法則を無視し、物体も概念すらも作り変えてしまう最強の防御




 「ミア様。あれは…あの力はミア様と同じ女神の加護で間違いないかと」


 当然、そのような力を代償もなく行使できる筈は

 否、出来るとすれば—


 「…それで、カエデは無事なのか?」


 「彼の身体に異常は見られませんでした」


 「ならばよい」


 「ミア様!」


 グレアが珍しく声を荒げた。その表情だけでも彼女の必死さが伝わってくる


 「グレア。君が何を考えているのかは理解しているつもりだ」


 その一言でグレアは息を詰まらせた。自分があの少年に対して、どのような感情を抱いているか、既に見透かされていたと察して


 「私を想っての事だろうが、それは望んでいない。理解してくれるだろうか?」


 「…はい。申し訳ありませんでした」


 ミアはそのしおらしい態度を見て小さく頷くと、コーヒーを一口啜った。しかしグレアの顔色に変化は見られないので優しく声を掛ける。


 「疲れただろう?少し休んでくるといい」


 「私の事はお気になさらず。それとアンディについてですが…」


 「彼か…」


 オーフィス騎士団を設立し、現在は組織のトップに君臨する人物。今回の件が彼に伝わるのは時間の問題だ


 「ミア様がお目覚めになった事をアンディが知れば…一応私に目が向くようには仕向けました」


 「グレアであっても彼は一筋縄では行かないだろう。何かあれば私が…」


 「それはいけません!ミア様の平穏な日常は私が守らせて頂きます」


 「わかった。君を信じよう」


 「ありがとうございます。ではこの辺りで失礼します」


 「ああ」


 グレアは着替えの為に部屋を後にする。当然、事前に身なりは整えていたが、帰宅したままの姿で家事を行うには抵抗があった。



一人部屋に残るミアは窓の外を眺めた。

その目に映る光景は外の景色では無く遠い日の思い出



勇者の盾ディフェンスオブアレスか…


 「皮肉なものだな」

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