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君が選ぶのは  作者: ぬしぽん
第一章
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ep.13 あの場所へ

 翌朝、カリサは中々起きてこなかった。女性が無防備に寝ている部屋に入るのには躊躇したが、赤の他人を一人残して家を出るのは抵抗があるので仕方なく起こしてから学校に向かう。


 あれから数日、最初の内は疲れていたのだろうと大目に見ていたが、相変わらず起きてこない日々が続いたので今では単純に朝が弱いだけとの結論に至り毎日躊躇無く叩き起こすのが日課になっている。



 「たまには思う存分寝かせてくれる?」

 「お前さぁ」

 「今日はパンでいいわ」

 「はいはい」


 寝癖だらけの仏頂面で朝食を待つ姿に呆れながらも、食パンを焼きハムとチーズを乗せて提供する。自覚があるのか無いのか、まるで親子のような生活にもお互いすっかり慣れていた。


 しかし、いつまでも家に居られるのは困る。彼女が普段どのような事をしているのか。直接聞くことは難しいのであらかじめ用意していた提案をする。


 「今日も探索するんだろ?ついて行ってもいい?」

 「うーん」

 

 返事を濁しつつパンを一口齧り、少し考える素振りを見せ飲み込むと、何かを思い出したかのように目を合わせた。


 「そうね。今のところこの街で邪種に襲われたのは私とあなただけだし。一緒に行動するのも一理あるわ」

 

 だよなと相槌は打ったものの、言われてから状況に気づいた。もし他の人が襲われていたら今頃大騒ぎになっているはずだ。暇つぶし程度の軽い気持ち提案したのにと後悔の念をにじませる。


 朝食の片付けを済ませお互い出かける為の準備しに部屋に戻った。


 楓が先に準備を終え玄関で待っていると、いつものフル装備に身を包んだカリサが階段を降りてきた。グレーと白を基調としたミリタリーチックな服装で、さらにその上からベストを羽織っている。 


 鋭い眼光からは圧されるような迫力があり、朝食を食べていた時とはまるで別人のようだ。すれ違いざま横目でアイコンタクトだけ送り無言のまま玄関を開ける。同行するとは言っても合わせたり待ったりしないという意思表示だろうと楓は感じ取り後ろについて家を後にした。




 何時間街の中を走り回っただろうか。カリサが走る後ろを楓は自転車で無我夢中で追いかけていた。現在何処に向かっているかは不明だが、街を外れて坂道を駆け上がっている。調査とは言っていたがノンストップで数時間走り回ってる何処が調査なのだろうか。


 度々後ろを振り返りこちらの様子を伺っている。恐らくペース合わせてくれているのだろう。あれで全力じゃないのは信じられないが。



 「ハァハァ…ちょっと待って!」

 「なに?」


 流石に限界を感じたので呼びとめる。声を聞いて止まった彼女は汗もかいておらず息切れすらしていない。


 「そろそろ休憩しないか?」

 「…まぁいいわ」


 走るのは辞めてくれたので、隣を自転車を手で押しながらゆっくり歩く。しばらく続いた沈黙に気まずさを感じたので好奇心からくる質問をした。


 「あのさ、お前の体力って筋トレとかでどうにかなるものだとは思えないんだけど。やっぱり神器が関係してんの?」


 森での戦闘を思い出す。あの時は明らかに自分の限界を超える力を出せていた。それがあの神器特有の能力なのか全てがそうなのかはわからない。


 「一般人はそんな事も知らないの?適応率…要は持ち主との結びつきが強い程神器の力を引き出せるし、単純な身体能力としても還元されるわ」

 「結びつき…って事は純正も複製も関係無く?」

 「そうね。適応率によっては複製神器でも純正を上回る力を出すし、実際私の組織にも…あ!これは言っちゃ駄目か!」


 得意気な顔で語っていたところから、黙り込んでしまった。流石に組織の情報を出すのはやり過ぎたと反省しているのだろう。楓もそこまでは聞こうと思っていなかったので触れずに質問を続ける


 「その結びつきって言うのは、やっぱり生まれ持っての資質が関係してんの?」

 「偉く興味津々ね。違うわ。」


 神器に適応出来るかは生まれ持っての資質だが、その能力をどこまで出せるかは後天的な物らしい。


 「神器って言われてるくらいだから、やっぱり信仰心とか?」

 「外れ。この国の人達なんか特にそうだけど、信仰心なんてカケラも無いでしょ」

 「確かに…じゃあ何が」

 「欲望よ」

 

 全く予想してなかった答えに言葉に詰まる。疑問が疑問を呼び興味が尽きない。


 「欲望ってなん」

 「ついたわ」


 続けざまに質問をぶつけようとしたが、目的地にたどり着いたらしい。もう日が暮れる頃だというのすら会話に夢中で気がついていなかった。


 「本当は一番最初に調査するべきだったけど、街で色々あったから後回しにしてたのよ」

 「あれ?ここって…」


 楓が視線を前にやり、辺りを見渡すと見覚えのある景色が広がっていた。そんな筈は無いと自分の目を疑うがやはり同じ。


 「ミアの家だったよな。なんで廃虚に戻ってるんだ?」


 そこには数ヶ月前、意識を失う前に見た廃虚があった。

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