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君が選ぶのは〜過去と未来の勇者〜  作者: ぬしぽん
第五章

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ep.96

 午前7時30分。楓はグレアの指示通り、家のインターホンを鳴らす。すると、ドアの前で待機していたのか、数秒も待たずミアが姿を現した。


 「おはよー」


 「ああ、おはよう。カエデ」


 「じゃあ、行こうか」


 挨拶もそこそこに二人は傘を開いて歩き始める。

 空は黒い雲に覆われ、小ぶりな雨が降っていた。


 早い時間にも関わらず、どちらも眠たい顔はしていない。楓はカリサとは違い、寝起きは良いほうだ。だからといってミアのように早めに登校することはないので、こんな時間に学校へ向かうのは初の試みだった。


 「健康の為に歩くか。私も君を見習わないとな」


 「そ、そうだな」


 楓は慌てて取り繕う。グレアから詳しい話は聞いていないが、ある程度ミアと話を合わせる必要があるだろう。


 ミアに合わせゆっくりと歩を進める。以前のように一生懸命話題を探したり、会話が途切れるのを恐れることもない。楓にとってミアとの沈黙は心地よいものになっていた。


 水溜りを踏む音、雨がポツポツと傘を鳴らす音、それだけが鳴り響いている。


 「カエデ」


 ミアが目を合わせることもせず、

 先を真っ直ぐ見据えながら楓を呼んだ。


 驚いた楓は咄嗟にミアの方に視線をやるが、傘で遮られ顔全体を見ることは出来ない。だが、口元だけでも普段と変わらない無表情であると予想は出来る。


 「君はこの世界を、平和な今の時代をどう思う?」


 「重たい話だな……急にどうしたんだ?」


 「すまない。忘れてくれ」


 楓は質問に質問で返してしまった事を反省し、ミアからの問いに自分なりの答えを考え始めた。自分はたまたま神器に適応してしまっただけで、本来は普通の高校生だ。世界のことより、まずは自分の将来のこと。


 「世界って言われても……まあ、邪種とかいう化け物達が居なければ言う事無しだな」


 「だが、今の平和はその邪種のお陰とも考えられないだろうか?邪種が現れるまでは人間達の間で戦争が行われていたのだろう?」


 「確かにな。それに邪種が居なくなったら聖隊の人も仕事を失うだろうし……いや、普通の軍隊に入隊し直すのか?」


 「やはり人類の平和維持のためには邪種は必要な存在だと思うか?」


 「わからねえ」


 そうか。そう呟くとミアは口を閉ざした。心なしかその声色はとても暗いように感じた。


 「でもよ、化け物なんて居ないほうが絶対いいだろ。邪種も戦争も無い世界。それが一番」


 「それが出来れば苦労しないと思うが……」


 「理想の話してる時に、現実を持ち込むのは野暮ってもんだ。夢は大きくないとな!」


―あん?人の夢にケチつけてんじゃねぇよ!黙って見てろ、俺様の偉大さを!


 「ふふっ」


 「おいおい、笑うとこじゃないだろ……」


 「すまない、少し思うところがあってな。君を笑ったわけではない」



※※※※

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