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15人と集団結婚って正気ですか! ハーレム設定にキレた聖女、夫たちを教育する

掲載日:2025/12/18


「お断りします」

「なぜ……だ?」


私のきっぱりとした物言いに、シリウスが瞠目する。

シリウスの声はかすれていた。

自分が断られるなんて思わなかったんだろうな。


私は今、王太子殿下の求婚を断っていた。

一言で無下にするのは、のちのち根に持たれそうだから、とくとくと説明して差し上げる。


「シリウス様は、恋愛を何だとお考えですか?」

「恋愛だと?」


「失礼ですがシリウス様には、ご婚約者のアウローラ様がいらっしゃるではありませんか。

なのに私へ声をかけるなど、アウローラ様への裏切り。

そう思いはしませんか?」


「……ルーナ、君は何を言っているんだ?」

(はあ……)


私は胸の奥でため息をつく。

これだから乙女ゲームはっ。

これだからハーレムゲームは駄目なんだ。


私は病室のベッドで、寝ていたはずなのに。

260インチのモバイルプロジェクターをこっそり持ち込んで、壁に映してプレイしてただけなのに。

気づいたらその乙女ゲーム、「星降る夜のアルテミス」の中にいた。

その主人公キャラ、庶民の出で聖女見習いのルーナになっていた。


どうしてこんな事にって思ったけれど、何度寝ても、何度起きても、この夢が覚めない。

なので最近、「あ、これ夢じゃないかも」って思ってきてる。


だんだん、こっちの生活に慣れてきたと思ったら、乙女ゲーム内のイベントがどんどん始まった。

もう勘弁して下さい。


ハーレムは、ゲームって割り切ってるから良いんです。

それが実際に起きて、次々に素敵男子に告白されて、それがとってもいい気分!

――て思えたのは、初めの内だけだった。


私は考えてみた。

1人の女性に、15人の男子とかが婚約を求めてくるんですよ。

僕たちは、君が幸せならそれでも構わないって、16人の集団生活OKなんですよ。

これ実際に起きたら、恐怖でしかありません。

ゲームだから良かったのにっ。


16人の集団生活を、平気で受け入れる人が実際にいたら怖いんです。

その人の心に、ぽっかり空洞があるみたいに感じるんです。

これって不気味の谷って言うのかな?

たぶんそれに近い何か。


これだからハーレムはっ(2回目)

――と怒っていますが、そのゲームを夢中になってやっていたのは私なので、その引け目を感じて、私はシリウスにとうとうとご説明する。


「シリウス様。あなたは人を愛するという事を、真剣に考えた事がおありでしょうか?」

「だからルーナ、君に求婚している。のちに聖女となる君を守るために」


「15人で?」


「なにっ、もうそんなに求婚されているのか。

くっ、構わない。

ルーナを守るために、もう一つ集団結婚生活のための城を建てよう」


「あ~~~」


ポンコツか!

でもシリウスは、見込みあるポンコツだった。

まずスペックが高い。

高いと言うのは顔とかお金とか、そういう意味じゃない。

シリウスはこのゲームの最終攻略対象、つまりラスボスだった。


それだから各種のパラメータが高い。

その中の「適応力」という数値が、攻略対象の中で一番高い。

さっきの「城を建てよう」も、あさっての方向に能力が行っちゃってるけど、それは適応力の高さゆえだった。


だから私は期待する。

私に適応して欲しい。

私の考え方に適応して欲しいんです、シリウス様。


「シリウス様は、どなたが一番好きなのですか?」

「それは勿論、ルーナとアウローラだ」

「あ~~~」


堂々とよくもまあ。

恥ずかしげもなくっ。


「シリウス様、一番とは一人という意味です。私とアウローラ様のどちらかと言うことです」

「だから国のために一人。民のために一人」


「ちょっと待って下さい。国!? 民!?」

「アウローラとの結婚は、貴族間の繋がりを強固にするために必須だ。

君との結婚は、民に災いが降りかからぬよう、君を守るために必須だ」


「それ、重婚じゃ!?」

「じゅうこん?」


シリウスの恋愛観には、個人のためというものがなかった。

シリウスは、シリウス個人の心に目を向けていない。

私はその心へ目を向けてくれるよう、根気よく「恋愛とは」と説明する。


「シリウス様ご自身の心は、どう思われているのですか?」

「私の……心」


一番適応力のあるシリウスが理解できないなら、ほかのキャラ全部駄目だ。

それを思うと、簡単に説得を諦められない。


私たちはお城の中にある、薔薇の庭園を散策しながら話し込む。

初めはベンチに座っていたのだけれど、私がじっとしていられない。

シリウスは私の言葉に、耳を傾けていてくれたけれど、説明が2時間ほど過ぎた辺りから、顔が険しくなった。

2人とも歩き疲れて、へとへとになったところで、シリウスが声を荒げた。


「ルーナ、君の考えは分かった。

だが、君の言葉には心がこもっていないっ」


「え?」


「真実の愛だとか、赤い糸だとか、運命の人だとか。

そう熱弁するが、君自身はそれを体験しているのか?

君の言葉はどこか芝居の様だ。

ただ借りてきた言葉を、並べ立てているだけなのでは?」


「うっ」


私は心の中で、こむら返りを起こした。

立ち尽くしたまま転がり続け、心の中で庭園を這いずる。


ああああああっ。

ああそうですよ! 借りてきた言葉ですよ!

くううっ、シリウスの適応力が、私の痛いところに適応してるー!


そうなのでした。

わたしはずっと病弱で、病院のベッドに寝てた。

私の恋愛知識はそのベッドの上で、読み漁ったマンガ、小説。

そして乙女ゲームだった。

私自身が体験したものなんて、これっぽちも無い。


実際にがっくりと膝を落とし、両手を地面に付けた。

私の目の前を、アリンコが通り過ぎていった。


「ううう……だって、仕方ないじゃないですか。

知識から入って何が悪いんですか。

私はいつも部屋(病室)で一人切り。

そんな私に、ほかにどんな方法が……」


「そうだね、貴族に生まれた女性は大切に育てられて、なかなか外には出られない。

君は以前、私はただの庶民ですと言っていたが、一般的な家庭でもそうなのだろう」

「ん?」


「だから君の知識が実際に存在するのか、体験してみようじゃないか。

どうやら僕たちには、経験値が足りないようだ。さあ行こう」

「どこへ!?」


一緒に、気兼ねのない普通のデートをしてみよう。

2人で体験してみよう。


「さあこっちだ」

「え!?」


そういう事になった。



    *



私はなぜかシリウスと一緒に、街を歩いていた。

シリウスは仕立ての良い服から、今は庶民の服を着ている。


「シリウス様、お顔を見られて大丈夫なんですか?」

「平気さ。民はシリウスという男がいるのは知っている。

けれどその顔を知るものは、ほとんど居ないからね」

「それなら良いんですけど」


「ルーナ、ここからは僕の名はシリウスではなく、シリだ。

あと(様)と、敬称もつけてはいけないよ。

ヘイ、シリって、気兼ねなく呼んでくれ」


「ちょっと軽くないですか?」

「君の知識では、18歳とはそういうモノなのだろう?

では手を繋ごうか」


「まだ早いです」

「そうなのか」


私がきっぱり断ると、少し悲しそうな声を出したけれど、シリはとても楽しそうだった。


「ふふふ、しかしこうして、ルーナと来て良かった」

「そうですか」


「国や街の主要な通りは、全て頭に叩き込んでいるんだ。

他国が攻めてきた場合、どこでせき止めて防衛するかが重要になってくるからね。

でも実際に見る通りは、ぜんぜん違うなあ。

見てごらんよ、小さな店がいっぱい並んでる。

良い匂いがしているね。

狭い脇道もたくさんあるなあ。

あの先がどうなっているのか、わくわくしないかい?」


「えっと、はい」

「おいで、あの店を見てみよう」

「は、はい」


あれおかしいな。

私が指導していたはずなのに、私の方が引っ張られている気が?

まあいいか。


「ゆうえんち? それは何だい?」

「えっと遊園地というのは――」かくかくしかじか

「へえ、興味深い、サーカスとは違うようだね。

それが異国のてっぱん? というモノなのかい?」

「はい、そうらしいです……ごにょごにょ」


私たちは今、カフェテラスにいた。

軽い食事をしながら異国の事として、遊園地だとか水族館だとかの話をしていた。


「面白いなあ、今度うちの国でも作らせてみよう。

確かに民たちの憩いの場と言うのは、大切だからね」


「シリは、いつも民のことを考えているのですね」

「別に、そういうつもりは無いんだが」


シリウスはゆったりと周りを見る。

その目はとても優しかった。


「貴族というものは勝手だからね。

国の土台を支えているのは、民なんだという事をすぐ忘れてしまうのさ。

だから王太子である僕だけでも、それを忘れないようにしないと」


「シリ、あなたは……」


ああ、この人はそう言う人なんだ。

乙女ゲーム「星降る夜のアルテミス」でのラスボスは、決して悪ではなくて、女子が追い求める高嶺な男子として作られている。

この人はハーレム重婚以外、完璧な人なんだ。


私の手の中には、街歩きの途中でシリウスに買ってもらった、ピアスの入った小箱がある。

遠慮したけれど、これも経験値だよと言われてしまった。


普段使いのもので、それほど高くはない。

初め凄く高い物を買おうとしていたけれど、私が「18歳の普通男子はそんな高いものを買いません」と言ったら、笑って納得してくれた。

この人は本当に適応力が高いなあ。


エメラルドグリーンの瞳、緩くウェーブの掛かった金髪。

うん、顔のスペックがやっぱり高い。


「ん、何だいルーナ」


いけない、私シリウスをじっと見つめてた。

私は取り繕ってお茶を飲む。


「ううん、何でもありません。次はどこへ行きましょうかシリ」

「そうだね、ルーナの言っていた(すいぞくかん)ではないが、明日は海へ行ってみないか?」


「明日も?」

「そうさ、時間はたっぷりある。ゆっくり僕たちの経験値をためて行こう」



    *



サンダルを指にかけて、白い砂浜を素足であるく。

さざ波がゆっくりと浜をさらい、ぷちぷちと小さな泡音を立てた。


足の下の砂が流され、バランスを崩してしまったとき、思わずシリの袖をつかんでしまう。

白いシャツの彼が、笑ってそのままつかまっていなよと言うので、私は口を尖らせて手を引っ込める。


海鳥が風に乗り遊んでいた。

いやあれは、海面の魚を狙っているのさ。

シリがそう真面目に返すものだから、「まあ、何でも知っているのですね」と褒めてあげる。

だけどそれでシリが、あのヒトデはねとか、この海藻はさとか、解説魔になったものだから、青い空を見て辟易した。


また別の日には、ピクニックに行った。

こういう時は女性がお弁当を作って、男の胃袋を虜にするのだろう?

どこで予習してきたのか、シリが当然のようにのたまうものだから、私はこう言い返す。

そうね、私がどうしても振り向いて欲しい人にはね。

でもシリ、振り向いて欲しいのはどっちだったかしら?


彼は困ったようにして、肩をすくめた。

大丈夫、ちゃんと作ってあげる。

でも買い物には付き合ってね。

重いものは全てシリが持ってね。


草原に、黄色と白のチェック柄のシートを敷く。

シリの目の前で、藤で編んだバスケットを開いてあげると、彼の目が輝いた。

手作りかい?

もちろんよ。

きみの? 

ほかに誰がいるの? 


シリが嬉しそうに、ベーコン10枚重ねのサンドウィッチを頬張る。

立て続けに3つ食べて、4つ目で顔をしかめた。

からいっ。

ふふ、それ当たりね。カラシがたっぷりなヤツ。

マーモット(大リス)が後ろからこっそり近づいてきたので、リンゴをひとつ分けてあげた。


短い夏が過ぎて。

私とシルは、一つのブランケットにくるまって星空を眺めていた。


星がひとつ、ふたつ、銀色の尾を引いて流れていく。

ちょうど毎年秋の終わり降る、アルテミス座流星群をふたりで見つめていた。


「嬉しいよルーナ。あの時買った月のピアス、やっとつけてくれたね」

「なんかあったから、付けただけです」

「似合ってる」


もうっ、耳元でささやかないで!

ああ、どうしようっ。

これって、告白してきたキャラを受け入れた時に見る「流星群イベント」なんだけれど……

わたし別に、シリウスを受け入れてないよね?


ただ湖のほとりでキャンプして、焚火の灯りでご飯食べて、夜になったから星空見てたら、ちょうど流星群の季節だった。

それだけなんですけどっ。

それだけだよね?

それだけだよねー!

私が身じろぎすると、シリウスがぎゅっと抱きしめてくれる。


「寒いかいルーナ?」

「いいえ、あのやっぱり私、自分のブランケットにくるまりますから」


私はするりとシリウスの腕から離れて、自分のブランケットにくるまる。

くるまったブランケットは冷えていて、ぶるりときた。


「ふたりでくるまった方が暖かいのに」

「いえ、良いんですこれで」


シリウスは別段、がっかりした様子もなく微笑んでいた。

冷えたブランケットにくるまった私の方が、寒くて後悔したかもしれない。

だから私は、シリウスの肩にピタリと身を寄せた。

これぐらいは良いよね。


私が肩から伝わるシリウスの温もりに、こそばゆくなっていると、彼が静かに語り始める。


「ルーナ。ここ10日ほど君と色々な経験をして、ようやく分かったような気がするよ」

「何ですかいきなり」


「僕自身の心というものがさ、こう……ふわりと胸の奥に湧き上がってくるんだ。

国や民も大事だけれど、ルーナの言う通り、僕自身はどうかと問うことも大事なことだと」


「シリウス様」


「こうした時間が本当に楽しかった。

とても小さな気づきを、いっぱいしてきた。

そしてそのどれもが、ルーナと一緒じゃないと、見つけられないものだった」


夜空から、流星がひとつふたつ降り落ちる。


「かけがえのないもの、ばかりだった。

本当にきらきらした一瞬一瞬だったよ」


「シリウス……」


私の胸がどくんと波打つ。

シリウスの言葉が私に染み込んで、得も言われない幸福が沸き上がった。

草陰で、秋の虫が静かに鳴いていた。

シリウスが星空を見上げる。


「だが……だからこそ、より一層国が大事だと思い至った。

僕自身と同様、民たちそれぞれの自分自身を、大切にし守らなければならない。

そのためにも国と言う枠組みを、しっかり保たなければ駄目だ」


「シリウス?」


「ルーナ、君への思いがより一層強くなった。

誰にも渡したくない。

自分だけのものにしたい。

けれど……

ふ……これが僕の心だったんだね。

僕はこの思いを、しっかり胸に刻みこんでいく」


「んん!?」


あれ? なんだかシリウスの言葉を聞くのが怖くなってきた。え!?


「国内の派閥の繋がりを強固にするため、公爵令嬢アウローラとの婚姻は欠かせない。

それが軍事力に直結するからさ。

そこに個人の感情は関係ないんだ。それが貴族同士の結婚というもの。

だから僕は、ルーナに心ひとつで飛び込み、良人となることはできないんだ。

ルーナが求める、2人だけで寄り添うことはできないんだよ。

ああ……ルーナ。

僕が君に、申し入れた言葉は忘れて欲しい。

僕はルーナとの日々を胸に抱き、遠くから君を見守っているよ」


「えええええっ!?」


私は心の中で、こむら返りを起こした。

そのまま心の中で、階段を転げ落ちた。

心臓から、ドンガラガッシャンと音がする。

私は言い知れぬショックを受けていた。

そのショックを、受けたこと自体にびっくりする。


いや、これで良いのでは?

初めにお断りしたのだから、シリウスが諦めてくれて良かったのでは?

そう正論を突きつける心の声に、私はへそを曲げる。

思わず不満が漏れた。


「ずるいです」

「ルーナ?」

「だって……だってそれ、ずるいじゃないですかっ」

「何をいって」

「とにかくそれは、ずるいんですっ」


だって私もこの10日間で、いっぱいキラキラした瞬間を経験したのだもの。

シリウスと一緒に、経験値をためてしまったんだもの。


シリウスの求婚辞退ショックで、私は分からされた。

私の気持ちは、とっくにシリウスへ傾いていた。


転生前にゲームとしてプレイしている時だって、実はシリウスが推しだった。

だからっ。

だから諦める何て言わないで。

私のことを諦めるなんてずるいっ。


「ずるいわっ、ずるいです、ずるいずるいっ」


身勝手にむずがる私を、シリウスが困ったように見つめた。

そしてまた自分のブランケットに、私を包み込む。


「ルーナ、聞いてほしい。

僕以外の求婚した14人も、君のことを本気で守りたいと思っているはずだ。

聖女となる君には、君を守るべき者が必要なんだよ。

彼らの真心にも、僕と同じように向き合ってくれたら嬉しい」


そんなの今言わないで。

そんなの女子が、ただハーレムゲームがしたいだけの、ご都合設定なんだからっ。


「何で今、そんな事を言うんですかっ。

何で私を他の方に託すようなことを!」


自分の感情がよく分からない。

私はこの10日間、勝手に舞い上がって、勝手に喪失感を覚えて、勝手に取り乱していた。


許さないっ。

ゲームのご都合設定なんかに、私の気持ちが負けるわけないっ。

私はシリウスの腕の中で、くるりと回転し、彼の胸に顔をうずめる。


とにかくグイグイ押す。

推しを押す。

ビクともしないから、足を引っかけた。

転生前、病弱だった私は、柔道マンガ「やわらはん」の愛読者だった。

シリウスが、私を抱きながら背中側へ転ぶ。


「何をしてルーナ!?」

「ずるいんですっ」

「なにがっ」

「あなたがシリウスっ」

「意味が分からない?」

「とにかくずるいっ」


私はシリウスの胸に、デコをこすり付ける。

摩擦でひりひりしたところで、肩を掴まれぐっと引き離された。

シリウスが真剣な目で、私を見つめている。


「ずるいのは、君じゃないかルーナっ」

「どうしてっ」

「分からないのか、僕の心をかき乱してっ」

「分からないわっ」


「僕を跳ね退けておいて、今更なんでこんな事をっ。」

「こんな事って何ですかっ」

「こんな事だよっ」


シリウスが再び私を引き寄せ、強引にキスをする。

私は無理やり唇を奪われたまま、シリウスのお腹にパンチを連打した。

5秒? 6秒? 長いながいながいっ。


やっと開放してくれたシリウス。

その顔がすぐそばにあって、怒ってた。


「僕はずっと我慢していたと言うのにっ、ルーナ、君ってやつはっ」

「はあ、はあ、はあ、死ぬかと思ったっ」

「ああ……ルーナっ、本当に本当に君ってやつはっ」


「私のこと諦めないでシリウスっ」

「ああなんてことだ、もう僕は、君を手放せない」


後で知ったんだけれど、その夜、一度にたくさんの流星群が落ちて、街で話題になったみたい。

けれど私は、その瞬間をぜんぜん見ていなかった。

星空に背中を向けて、シリウスの胸に顔を埋めていたから。


カカカカカカカカカッ。


湖畔のキャンプ場に、霧が立ち込めて朝ぼらけ。

どこかでキツツキが、ムキになって木を突っついている。

その音で目覚めた私は、シリウスの腕の中にいた。

シリウスは眠っている。


そっと起き出して、手ぐしで髪をといていると、どんどん冷静になってきた。

うわうわうわっ。

自分の大胆さに呆れる。

あれほどゲームシステムを気持ち悪がってたのに、自分から求めてイベントクリアしてしまった。

そして私は、アウローラ様を思い浮かべて顔が青くなる。


「うううっ」


でも青くなってる場合じゃない。

結ばれたからには、シリウスを困らせたくない。

ちゃんと支えていきたい。

だから私は、シリウスの寝顔を見つめ決意する。


「こうなったら、行くとこまで行くしかないっ」



    *



そして半年後。


私はシリウスが新たに建てたお城で、集団結婚生活を始めていた。

流石は、ラスボスのシリウス。

建てると言ったら、本気で数ヶ月で城を建ててしまった(魔法的なご都合設定で)。


朝の7時。

私はフライパンを、お玉でカンカン叩く。

カンカンカンカンカーンッ。


「ほらあ、朝ごはんよー!」


これが私の選んだ「真実の愛」の形だった。

ハーレムゲームだけど、現実は私が支配する。


食卓にはシリウスを筆頭に、碧眼の騎士団長、銀髪の魔法使い、その他個性豊かな総勢15人の「良人」が、行儀よく席に着いていた。


お手伝いさんに頼らず、自分の力で、男たちの胃袋をわしづかみで支配する。

それがせめてもの、私のゲームシステムへの抵抗だった。


ちなみにアウローラ様とは、シリウスをシェアしながら、お互い「ハーレム維持大変あるある」で意気投合してお友達になっていた。

(私以外の女子も、ガンガンハーレムを作ってた)

こうして聖女ルーナによる、15人の旦那を尻に敷く、逆ハーレム生活が始まる。


これが私の適応力!

私はフライパンを、もう一度カーンッと鳴らす。




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― 新着の感想 ―
ヒロイン逆ハーエンド!..逆ハーなんですかねこれw
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