【番外編】レオンとセレナの新婚旅行中のある日
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
「もうレオンったら……せっかくの旅行なのに、ずっと部屋にこもって……」
ベッドの縁に腰を下ろしながら、セレナがふと漏らしたその言葉に、俺は手を止めた。
窓の外はすでに明るく、穏やかな陽射しがレースのカーテン越しに差し込んでいる。
この別荘に着いてから、数日。
――セレナが可愛すぎて、あんまり部屋から出られなかったのだ。
「……ごめん。セレナの行きたいところ行こう」
「ううん、責めてるわけじゃなくて……。私もレオンと一緒に居れるの嬉しいし……。でも、せっかく来たんだから、ちょっとくらい外の空気を吸ってもいいかなって」
そう言って、セレナが小さく笑う。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥に、静かに後悔が芽生えた。
「……そうだな。今日は、外に行こうか」
「えっ、本当に!?裏の小さな山に行ってみたいの……!」
ぱっと顔を輝かせたセレナが、嬉しそうにベッドから立ち上がる。
「じゃあすぐ着替えるね!動きやすい服がいいよね、えっと……」
俺の返事を待たずに、セレナは脱衣所で支度を始めた。
その背を見送りながら、ふと口元が緩む。
――外の空気か。
彼女となら、きっとどんな時間も悪くない。
それからしばらくして。
「レオン、お待たせっ」
振り返った瞬間、言葉が喉の奥に引っかかった。
そこに立っていたセレナは、いつものドレス姿とは違い、軽やかなチュニックとパンツスタイルだった。
動きやすさを重視した装い――のはずなのに、逆に目が離せなかった。
可愛い。……それ以上に、綺麗だった。
「動きやすいのがいいかなって思って。外で遊ぶとき用にリナが用意してくれたの」
「……っ」
気づけば、喉の奥で音が漏れていた。
「レオン?」
「……いや。可愛すぎて見とれてた。早く行こうか」
◆
森へ続く山道は、思ったよりも緩やかで、新緑の香りが風に混ざって心地よかった。
俺たちは手籠を下げて歩いていく。
辺り一面の木に果物がなっているのを見たセレナは目を輝かせていた。
「わあ……これ、採ってもいいの?」
「うん。ここも公爵家の山だから大丈夫。」
別荘にはしばらく来ていなかったが、手入れが行き届いていた。
セレナは目を輝かせながら、枝にぶら下がる赤い果実にそっと手を伸ばしていく。
彼女の指先が、果実に触れた瞬間。
軽く背伸びをしたその拍子に、シャツの裾がふわりと持ち上がった。
細く引き締まった腰が視界の端に映る。
(……だめだ、邪念が……集中しよう)
しばらくして駆け寄ってきたセレナは籠いっぱいに入った果物を見せながら、笑顔を覗かせた。
「レオン、見て!すごく甘そうな実があったよ。」
「……帰ったら食べてみよう。もうこんなに採れたの?」
「ふふ、楽しくていっぱい採っちゃった」
彼女は無邪気に笑う。
セレナにとって初めての経験。
これから何でも一緒にやりたい、と、そう思った。
「……ねぇレオン。一回帰って少し休憩したらまたどこか行きたい。」
「うん。一旦戻ろうか。」
◆
別荘に戻り汗ばんだシャツを着替えようと、何も考えずに脱衣所の扉を開けた。
その瞬間だった。
「――っ!」
彼女はパンツスタイルの服を脱いでいる最中で、思わず視界に入ってしまった。
その瞬間、少し驚いて、すぐに視線をそらした。
「ちがっ……! ちがうの、レオンっ!」
慌てて服を掴み、下着を隠すセレナ。
「こ、これはっ……!リナが買ってくれて……!その……っ」
「……リナ?」
「ちがっ、違うの!パンツスタイルだったから、ほら、いつものだと裾が長くて響いちゃって……!だから、だからこれしか……!」
「……?」
咄嗟に顔を逸らしたから見えていないというのに、何故か必死に言い訳するセレナ。
しばらく黙ったまま、セレナの焦った様子を見つめていた。
「…………レオンが喜ぶかなと思って、選んだの」
セレナの顔が真っ赤になり、恥ずかしそうに目を逸らす。
その無防備な姿に、心臓が少しだけ早く打ち始めた。
「……セレナ」
「……なに……?」
「――ごめん、外出はまた明日しよう」
夕陽はやがて沈み、部屋は静かに、夜の空気に染まっていく。
けれどふたりの夜は、まだ、優しく続いていた。
そしてこの日もまた、ふたりは――部屋から一歩も、出られなかった。
本日からティオが登場する物語新連載しますのでよければ覗いてみてください♥
『男主人公のことが好きなはずの推し様がなんで私に甘いんですか!?-TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!-』
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