第73話 午後のお茶会で“秘密の作戦会議”
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
ある昼下がりの日が差し込む講義室ーー
リュシアンは変わらず家庭教師を続けてくれていた。
「今日もありがとうございました、リュシアンさん」
「とんでもないです。理解も早いですし、教え甲斐があります。」
穏やかなやりとりの最中――
コンコン、と控えめなノック音。
続いて、ふわりと甘い香りとともに、いつもの白衣の男が顔をのぞかせた。
「よっ。……あれ、授業まだだった? なんか、いいタイミングだった?」
「ティオ?……ちょうど終わったところだよ」
セレナが微笑みながら振り向く。
ティオは手にした包みをひらりと持ち上げる。
「レオンに用事があって来たんだけど、ついでに……寄ってみた。で、これ。城下でちょっと評判のお菓子」
「わぁ!ありがとうっ」
セレナが嬉しそうに瞳を輝かせる。
「よければ、三人でいただきませんか?」
ティオが何か言う前に、セレナがぱっと提案した。
リュシアンも笑って頷く。
香ばしい焼き菓子の香りと、紅茶のやさしい匂いがふわりと広がる。
三人の間には、どこまでも和やかな空気が流れていた。
ティオは嬉しそうに焼き菓子に手を伸ばしながら、セレナに問いかける。
「最近は、どんな勉強してるの?」
「えっと、外交文書の読み解きと、対話の基本……あとは、数字の整理とかかな」
少し照れたように答えるセレナ。
「ほんとに真面目だよね、セレナちゃん。……兄さん、変なこと言ってない?」
「ふふ、ティオじゃあるまいし」
セレナが冗談めかして返すと、ティオは口を尖らせ、リュシアンはそれを見て苦笑いする。三人でこうしてお喋りするのは初めてだけれど、自然と笑顔がこぼれる心地よさがあった。
そんな和やかな時間の中――
紅茶のカップがひと巡りした頃、リュシアンがにやっと意味ありげな笑みを浮かべてティオに尋ねた。
「――そういえば。あの子、どうなったんだ?」
「……は?」
ティオの手が、カップの取っ手からつるりと滑りかける。
「この前言ってただろ。“ちょっと気になる子がいる”って。……セレナ様にも話したって言ってたよな?」
「えっ、それ……リュシアンさんにも話してたの?」
セレナは驚いて目を丸くする。
(ティオって、お兄様にもそんな話するんだ……本当に仲良し兄弟だな……)
内心そう思いつつ、にこにことティオへ視線を向ける。
「で? どうなの、その……気になる子とは」
ティオは視線を落とし、包み紙をいじりながら小さく吐息をついた。
「……それなりにアピールしてるつもりなんだけど……気づいてないのかなって。全然うまくいかない」
「へえ~」
セレナがいたずらっぽく笑い、リュシアンも芝居がかった調子で頷く。
「で、何をしたんだ? アピールって」
「……なんでそんなに食いつくんだよ。……まあ、ちょっと距離詰めたり声かけたり?……あとは、秘密」
「……それってさ、“気づいてない”んじゃなくて……ティオって誰にでも距離近いから、“自分だけ特別”って思われてないだけじゃ?」
「……んぐっ、それは……否定できない……」
ティオが言葉に詰まると、リュシアンが楽しげに頷く。
「この間も、セレナ様の手、勝手に握ってたもんな?」
「ちょ、兄さん!? あれは、その……タイミングがっ……!」
セレナは小さく呟くように、ぽつりと口にする。
「……あ、そういえば」
「ん?」
「……あのあと、レオン……ちょっとヤキモチ妬いてた」
「…………」
その瞬間、三人の間に静かな沈黙が訪れる。
そして次の瞬間には、顔を見合わせてくすくすと笑いあった。
「……あ、でも」
ティオは手元の紅茶のカップをそっと置き、目線を落としたまま、ぽつりと呟いた。
「ん?」
セレナとリュシアンが顔を向けると、ティオは小さく肩をすくめて言う。
「……ミアちゃんには絶対言わないで。あの子に知られたら、きっとすごいアドバイスしてくるから……」
リュシアンが吹き出しそうになるのをこらえながら、ちらりとティオを見る。
「……あー、ミアなら”攻めるしかない”って言いそうだな」
「でしょ!? だから、今はまだ黙ってて!」
(……ミアさん、ほんとに言いそう……!)
セレナが内心そう思って笑いをこらえていると、
ティオの視線がふと、まっすぐこちらに向いた。
「……でも、君が応援してくれるから。……なんか、少し勇気が出る気がする」
驚いたようにセレナは一瞬まばたきをして――
すぐにぱっと笑顔になり、力強く頷いた。
「全力で応援するよっ!」
その笑顔を見て、ティオはふっとやさしい表情になり、柔らかく微笑む。
「……ありがとう。じゃあ、報告は……なにか進展があった時にね」
「うん、楽しみにしてる!」
セレナが笑うと、リュシアンもつられるようにくすっと笑い、
ティオもまた穏やかな表情でそれに応える。
どこかあたたかくて、じんわりと心にしみるような、そんな空気がそこに流れていた。
その優しい雰囲気に背中を押されるようにして、ティオがふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、結婚式するんだって? ……すごく楽しみにしてる」
「うん、公爵家で家族だけでやる予定だから、気楽に来てね。リュシアンさんも、ぜひよろしくお願いします」
「はい。ミアと一緒に出席させていただきます。彼女、もう今からすっごく楽しみにしているんですよ」
未来の話に花が咲き、会話の余韻を残しながら、小さなお茶会はゆるやかに終わりを迎えた。
ふと、セレナは思い返す。
初対面の頃、“友達”って言ってくれたあの言葉。
次第に打ち解けていって、今ではこうして、気軽に笑い合える存在になった。
レオンの呪いを解くためにたくさんの時間を一緒に過ごして――
気付けば、かけがえのない友達になっていたのだと、改めて実感する。
(……そう、初めての“友達”。昔の私だったら、頼ることも、心を許すこともきっとできなかった。……でも、今は)
そっと願う。
どうか、ティオにも幸せが訪れますように――と。
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