第69話 涙と笑顔で迎える再会。呪いが解けたその先に
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
それから少しして――
扉の外から足音が聞こえたかと思うと、勢いよく飛び込んできたのは、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたリナだった。
「セレナ様ぁぁっ!!」
ばふっと抱きつかれた瞬間、胸元がびしょ濡れになる。
「よかった……ほんとうによかったですぅ……!もう……生きていてくださって……っ!」
「泣きすぎですよ、リナ嬢」
と言いながら、アレクの目も赤くなっていた。
それに続いて、ユノがベルを抱いて入室する。
「セレナ様……!」
目に涙を浮かべたまま、ユノは私の手をぎゅっと握った。
「……ごめんね、心配かけて」
そう呟いたとたん、みんなの瞳が一斉に潤んだ気がした。
◆
そのあと、皆と入れ替わるようにしてティオがゆっくりと扉を開けて姿を見せた。
「……やあ、セレナちゃん」
視線が合った瞬間、彼はにこっと微笑んだ。
言葉は交わさなかったけれど――「やったね」
そんな気持ちが、互いに通じ合った気がした。
私のもとへと歩み寄ると、ティオは手際よく診察を始める。
「うん、大丈夫そうだね。しばらくは無理せず、ゆっくり回復しよう。三日間も眠っていたから、急に動いたらだめだよ」
「三日間……!?そんなに寝てたの!?」
三日も意識がなかったなんて――。
レオンを救いたい、その一心で、どれだけ体力を消耗していたか気づかなかった。
(……でも、生きててよかった。こうして、みんなとまた会えて)
ティオの口調はいつもの調子だったけれど、その目元には安堵と疲労が滲んでいた。
それが、あの夜――私の命が危うかった瞬間を、誰よりも近くで見届けていた証なのだろう。
「……セレナちゃんを連れて帰ったあと、大変だったんだよ。レオンが取り乱してね。“意識がないだけで命は無事だ”って、何度説明したことか」
そう言いながら、ふっと笑みを浮かべて冗談っぽく続けた。
「ほんっとに大変だったんだから。膝をついて崩れ落ちて、“どうしよう”って泣きそうな顔してさ」
「……それは内緒って言ったはずだが」
そっと扉が開き、戻ってきたレオンが低い声で突っ込んできた。
しかしティオは全く動じず、にやにやしながら言葉を継ぐ。
「だって事実だし?レオンに休めって言って、僕は戻って少しだけ休んだんだけどさ。……次にここに来た時もレオンは“セレナが目を覚ますまで寝れない”とか言って、ずっとセレナちゃんの傍を離れなかったんだから」
ティオが楽しげに語ると、レオンは咳払いをひとつしてそっぽを向いた。
「……だから、秘密にしろって言ったのに」
その頬はほんのりと赤く染まっていた。
「ほんとに、セレナちゃんが無事でよかったよ」
ティオが優しく笑うと、その声が胸の奥にじんわり染み込んでいく。
(……私のことを、こんなにも思ってくれていたんだ)
ふと、温かな涙が目尻に浮かんだ。
「セレナちゃん……無理はしてほしくないけど、君の覚悟と勇気には、本当に救われた。ありがとう」
一瞬だけ揺れたティオの瞳。
その言葉の奥にある本物の想いが、痛いほど伝わってきた。
「……私も、ティオがいてくれてよかったよ」
そう返すと、ティオは目を細めて微笑んだ。
そして少し姿勢を変えて、テーブルに肘をつくと真面目な口調に切り替える。
「セレナちゃんが眠っていた三日間に、いろんなことが起きたんだ。まず、明け方にレオンの呪いが完全に解けた。そして朝には――新しい皇帝が誕生した」
「……本当に退位、したんだな」
レオンが静かに応じる。
「俺のいとこ、元皇太子のカイエル殿下が、正式に皇帝として即位されたよ」
まるで遠い世界の話を聞くように、けれど確かに、セレナの胸の奥が静かに波立った。
世界が、確かに変わった――そう感じた。
ティオは、懐から透明な石をひょいと取り出す。
「ちなみにレオンの体も調べたよ。セレナちゃんから借りた“聖力の石”を使って検査してみたんだけど……」
にこっと笑いながら、ティオが続ける。
「完全に健康体だったよ。呪いの痕跡もゼロ。君の力で、完全に解けたってことだ」
そっとレオンが、セレナの手を握った。
「ありがとう、セレナ……君がいなければ、俺はもうここにはいなかった」
レオンの真っ直ぐな視線が、優しくセレナを捉えたかと思うと――
ぎゅっと力強く、彼の腕の中に抱き寄せられる。
「……本当にありがとう、セレナ」
その声は、優しさに震えていた。
そんな空気を割るように、ティオがぽつりと呟いた。
「……ああ、ずるいなぁ」
「……は?」
とレオンが振り返るより先に、ティオはにこにこ顔で近づいてきて、
「えーい、僕も混ぜて!」
そのまま二人の肩をくるりと腕で抱き――
「ぎゅっ」
三人で、ぎゅうっとひとつにまとまった。
セレナは思わず吹き出す。
「ふふっ……ティオ……」
少しむくれた顔のレオンがぽつりとつぶやいた。
「……今日は、許してやる」
「あははっ、友情の証ってやつだねっ」
そんな他愛のないやり取りが、胸の奥をじんわりあたたかく満たしていく。
この瞬間のぬくもりを、絶対に忘れたくないと、セレナは強く思った。
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