第68話 「もう二度と離れない」――呪いを乗り越えたふたりの再会と誓い
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
――次に意識が戻ったとき、視界に映ったのは見慣れた天井だった。
そこは、私とレオンの静かな寝室。
喉はひどく乾き、体は石のように重たかった。
指一本を動かすだけでも辛い。
それでも、かすかに感じたぬくもりに気づいて、私は目だけを動かして隣を見た。
そこには、私の手を握りしめ、やつれた顔でこちらを見つめるレオンがいた。
目の下には濃い影ができ、髪も乱れている。
名前を呼ぶ声には掠れが混じっていた。
「……セレナ?」
私が答える前に、彼は我慢できずに私を抱きしめてきた。
その腕は細かく震え、胸の奥からあふれた感情が、私をぎゅっと包み込んだ。
「……っレオン……体は、大丈夫?」
かろうじて絞り出した声でそう尋ねると、彼は私の耳元で言葉を崩した。
「……君って……本当にいつも、自分のことより他人ばかりで……」
その声も震えていた。
「なんで……なんで自分を犠牲にしてまで、誰かを助けようとするんだよ……!俺だけが助かっても……君がいなきゃ、そんなの、意味なんてないだろ……!」
ぽろぽろと、涙が私の肩を濡らしていく。
「セレナがいない未来なんて……そんなの、生き地獄だ……!」
――胸がきゅうっと締めつけられた。
「……ごめん、ね……」
言葉にすると、胸の奥にしまっていた思いがじわりとにじみ出す。
それしか、言えなかった。
レオンはしばらくのあいだ、私の肩に顔を埋めて、肩を震わせていた。
「俺……すぐに目が覚めたんだ。最初に見たのは、血まみれで倒れてるセレナの姿で……心臓が止まるかと思った。……俺のせいで君がって……」
その詰まった言葉のひとつひとつが、彼がどれだけ私を案じてくれていたかを物語っていた。
「……ごめん、私も……レオンがいない未来なんて、考えられなかった」
気づくと、私たちはふたりとも涙をこぼしていた。
そしてそのまま、互いを抱きしめ続けた。
「でも……ティオが言ってくれたんだ。『セレナちゃんの気持ちもちゃんと考えて』って。
それでようやく冷静になれた……手当して、君をここへ運んできたんだ」
彼の手が、そっと私の髪に触れた。
「……本当は、抱きしめることすら怖かった。壊れちゃうんじゃないかと思って」
私も静かに、レオンの腕をそっと抱き返す。
「……もう、危ないことは二度としないで」
レオンが耳元で、そっと囁いた。
「ずっとそばにいてくれ、セレナ。お願いだから」
その繰り返される言葉に、私は静かに瞬きをした。
「約束して。……俺の前から、いなくならないって」
「レオン……」
(……何度も同じことを繰り返して。……それだけ、レオンは怖かったんだね)
私は、彼の必死な思いを、そっと受け止めた。
「……うん、わかった。ずっと一緒にいるよ」
穏やかに、けれど力強くそう返すと、レオンの腕の力がゆるんだ。
それでも、背中を包むその手は、離れることなく私を抱きしめ続けていた。
「本当に……ありがとう、セレナ。……俺の為に黙っていたってことくらい、ほんとはわかってる……」
その落ち着いた低い声に、私はふと違和感を覚える。
泣き疲れているはずなのに、どこか無理やり感情を抑えているようで――
(……もしかしたら、レオンだって本当は怒りたかったのかもしれない)
でも彼は、私を信じてくれた。
責めることより、私の無事を大切にしてくれた。
――その優しさが、胸にしみた。
「……うん。反対されるってわかってたから……ごめんね、黙ってて」
少し沈黙のあと、私は少しだけ迷いながら、問いかけた。
「ねえ、レオン……本当に、体は平気なの?」
「うん。……あの痣も、跡形もなく綺麗に消えた。……体調も、すごくいい」
微笑みながらそう言った彼は、ほんの少しだけ苦笑して続けた。
「君への心配事さえなければ、もっと完璧だったんだけどな」
「……っ!」
思わず、私はレオンの胸元に顔をうずめる。
「本当に……ごめん。怖い思い、させちゃって」
「うん……すごく怖かった。君が、もう戻らないかもしれないって……」
「私も怖かった。……レオンを失うのが、何より一番、怖かったから」
私は小さな声でそう囁くと、ぎゅっと彼を抱きしめ返す。
重なり合う体温が、やっとふたりの安心を取り戻しはじめていた。
「……水、飲めそう?」
そう言って、レオンは私の背中をやさしく支えながら、水差しを唇に寄せてくれた。
ひと口、ふた口――喉に沁みわたる冷たさに、体の奥が少しずつ生き返っていく。
身支度を手早く整えたレオンは、立ち上がって言った。
「少し落ち着いたみたいだね……じゃあ、みんなにも知らせてくる。ティオも呼んでくるから。すぐ戻るよ」
そう言って私の額にそっとキスを落とすと、足早に部屋をあとにした。
人気がなくなった寝室では、ただカーテンが静かに揺れているだけ。
しんとした静けさのなか、私は胸にそっと手を当てた。
(……本当に、終わったんだ)
あの呪いに苦しんでいたレオンの姿。
自分には何もできないと思った日々。
泣きたい夜も、恐怖に震えたこともあった。
それでも――
「……私が、レオンを救ったんだ」
ぽつりと呟いたその瞬間、胸の奥にじんわりと熱が広がる。
それは安堵とも、誇らしさともつかない――初めて感じる、不思議な感情だった。
誰かのために、こんなにも全力になれた自分を、今は少しだけ……誇らしく思えた。
私はそっと目を閉じ、静かに深く、息を吐いた。
(ありがとう、レオン。……生きていてくれて)
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