第65話 “戻す力”に光が差す――セレナとティオ、呪いの突破口を見つける
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
ある日、私はティオとの約束を果たすべく、癒術理院を訪れていた。
彼の研究室に足を踏み入れると、ティオはいつものように書類の山に埋もれていた。
けれど私の姿を見つけると、ぱっと笑顔になり、手を振って出迎えてくれる。
「やっほー、セレナちゃん。待ってたよ~。お茶、淹れるね」
「ありがとう、いただくね」
私が椅子に腰を下ろすと、彼は手慣れた様子で紅茶を差し出してくれた。
ふわりと立ちのぼる湯気に、心が少しほぐれていく。
「最近どう?レオンとはラブラブ順調~?」
「う、うん……順調、かな」
頬の熱さをごまかすように答えると、ティオがにやにやと笑みを浮かべた。
「ふふ、いいね。幸せってことだね。あ〜あ、僕もそろそろ誰かと落ち着こうかな〜」
「えっ、ティオにも“気になる人”とかいるの?」
思わず口をついて出た問いかけに、ティオはカップを手にしたままわずかに間を置いた。
「……まぁ、最近ちょっと“気になる子”はできた……かも?」
「ほんとに!?どんな子? 気になる!」
「……ふふ、雑談はこの辺にしておこうか。本題いこっか」
そう言って肩をすくめたティオの笑顔は、どこか照れ隠しのようにも見えた。
(……顔、赤くなってる。ティオ、ごまかしてる……?)
「……じゃあ、この図面見てくれる?」
ティオは机に積まれた書類をすっと広げ、魔法陣の図面を並べていく。
そして表情を引き締め、指先で図面をなぞりながら語り出した。
「あとほんの少しで解明できそうなんだ。ここ、それからここと……この辺りがわかれば……」
指差された円の中には、かすれた文字や破損した図形が並んでいた。
「君の力は“自然治癒の促進”に特化している。つまり、対象の体が本来持つ回復力を引き出していることになる」
そう話しながら、ティオは図面の一部にさらさらと文字を書き加える。
「魔法陣っていうのは、いわば“コード”みたいなものなんだ。君の力が発動する“パターン”はもう大体わかった。だから、それを基盤にすれば術式は構築できるはず。……その術式を組み込めば、魔法陣が起動すると思う」
ティオはそばにあった、しおれた小さな花を魔法陣の中央へと置いた。
「ちょっと手をかざしてもらえる?」
私は黙ってうなずき、そっと手のひらを魔法陣の上にかざした。
次の瞬間――
ふわっ……
魔法陣の縁が淡い金色に輝き、中央の花の色がゆっくりと戻っていった。
「……光った」
「やっぱりね。これは君が普段使っている力と同じ働き方だよ」
ティオは魔法陣をじっと見つめながら、円を指でなぞる。
「でもね、普段の使い方だとレオンの呪いは解除できない。でも、“術式として”組み込めば作動はする。これは収穫だよ」
「そっか……これは普段の力だから、血はいらないんだね。……でも、どうして呪いを解くには血が必要になるんだろう?」
「――”対価”なのかもね。もっと強い力を使うときに、必要になるんだと思う」
ティオは静かに口を開いた。
「今、君が使ってるのは“本人の治癒力を活性化する力”だよね。切り傷を治すとか。でも、もしそれがもっと拡張されたら……壊れた臓器を再生したり、失った手足を戻すとか、そういうことも可能になるかもしれない」
「……元に戻す……?」
「うん。そういう“応用”を使うには、膨大なエネルギーが必要になる。だから媒介として、君の血……つまり君の命の一部が必要なんだと思う」
私は息を呑んだ。
そんな力が、自分の中に本当にあるのだとしたら――
(強い、力……)
レオンの体に浮かぶ、あの痣。
あれももとはなかったもの。
もし、痣ができる“前”の状態に戻せたなら――
「ねぇ、ティオ」
私はそっと顔を上げて問いかけた。
「……レオンの痣が現れる前の状態に、体を戻すことができたら……どうかな?」
ティオは少しの間ぽかんとした後、突然目を輝かせて勢いよく立ち上がった。
「――それだ!!」
思わず手からペンが転げ落ちるほど、強い声。
「君の力が“元に戻す”方向に作用するなら、あの痣も、呪いごと消せる可能性がある!」
「……ほんとに……?」
「まだ仮説だけど、かなり核心に近い気がする。君の“血”が必要だって言われてきた理由が、ようやく繋がった気がするよ」
ティオはしばらく黙り込んだあと、図面をじっと見つめていた。
「“元に戻す”ってなると、術式の構造から変わる。これは完全に新しい領域だ。……検証用に、セレナちゃんがこの前作った“聖力の石”、借りてもいい?」
「うん、もちろん。……お願い」
私は石を手渡しながら、彼が引いた線を見つめる。
「……ティオ、いつもありがとう。私、ひとりじゃ絶対にここまで来れなかった」
手を止めたティオは、ふっと笑って答える。
「何言ってるの。僕だってレオンを助けたいだけだよ」
その瞳には、優しさと強い意志が宿っていた。
「レオンの呪い、必ず解ける。……一緒に頑張ろう、セレナちゃん」
「……うん!」
私は大きく頷いた。
「……実はさ、呪いが解けたら、僕、髪切ろうって思ってるんだ。もうすぐその時が来るって気がする。楽しみだなぁ」
その顔は、まるで子どものように嬉しそうだった。
私の胸の奥にも、ふわりと小さな希望の灯りがともる。
そして、しばらくの沈黙のあと――
ティオはカップを見つめながら、少し声を落として呟いた。
「……それまでに、レオンの体調が悪化しないといいけど」
そのひと言が、妙に胸の奥に静かに突き刺さった。
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