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第57話 皇帝の異変とセレナの聖女の力。運命が交差する瞬間

※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。

以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。


基本糖分高めで甘やかされます♡

ざわめく会場の空気を切り裂くように、私は人混みの中を駆け抜けた。


――あの人を、助けなきゃ。


倒れた皇帝の周りには、すでに護衛と数人の宮廷医師が集まっていた。

その輪の中には、見慣れた白衣の姿がある。ティオだ。


「これを飲んだ直後に倒れた……毒の可能性がある。グラスの解析を」


鋭い声で指示を飛ばしながら、ティオが私に気づくと、状況を瞬時に理解したように目を見開いた。


「セレナちゃん、来ちゃだめだ。君が力を――」


けれど、私は止まらなかった。

――見捨てるなんて、できない。



皇帝の身体がふらりと揺れる。

騒然とする会場、駆け寄る者たちの声。


――その中で、ただ一人、まっすぐに駆け寄る黒髪の少女。

皇帝の目に彼女が映った瞬間。


「……っ」


皇帝の瞳がわずかに見開かれる。

それは痛みのせいだったのか、それとも――彼女の姿に、何かを重ねたのか。


誰も、その意味を知ることはなかった。


セレナは膝をつき、倒れた皇帝の傍らに身を寄せる。

その手をそっと握った瞬間、指先から温かな光が滲み出した。


光はゆるやかに広がり、皇帝の蒼白だった顔にほんの少しだけ血の気が戻る。

その変化を見た医師たちは息を呑んだ。


周囲のざわめきが、潮のように押し寄せる。


「今のは……治癒の魔法?」


「いや、そんなはずは……魔法はもう使えないんじゃ……」


「まさか、あの娘が……“聖女”……?」


私はただ、目の前の命を救いたくて――

気づけば、ティオがそっと肩に手を置いてくれていた。


「……もう、大丈夫。容体は安定してる」


ふっと息を吐いた瞬間、レオンの姿が視界に入った。

その瞳が、何よりも強く、私の存在を肯定してくれるように揺れていた。


周囲が騒然とする中、皇帝の容体が安定したと知ったセレナは、胸の奥に熱いものがこみ上げてくる。


――命が助かった。初めて、自分の力で。


安心と達成感に包まれ、深く息を吐いた瞬間、張り詰めていた力がぷつりとほどけるように、ふらりと力が抜けてその場に座り込んでしまった。

衣擦れの音とともに、豪奢な裾が床に広がる。


「セレナ……!」


駆け寄ってきたレオンがしゃがみこみ、焦ったように彼女を見つめる。

彼女が無事だと確認すると、彼は何も言わず、そっとその体を抱き上げた。


「あとは頼む、ティオ」


「了解。休ませてあげて」


軽く頷くティオを残し、レオンは人々の視線をものともせず、セレナを腕に抱いたまま静かに会場を後にする――



個室に入ると同時に、レオンは静かに扉を閉めた。

ざわついた会場の音が遠のき、ふたりだけの静寂が訪れる。


セレナはその腕の中で、ようやく小さく息を吐いた。

けれどまだ、肩がわずかに震えている。


「……たぶん、調査が終わるまでは、この会場から出られないと思う」


レオンはそう言いながら、セレナをそっとソファに腰かけさせ、自分も隣に座り、彼女の背を撫でた。


「少し、休もう。……よく頑張ったね、セレナ」


その優しい声に、セレナの胸がじんわりと熱くなる。


「君の力は、きっと希望になる。でも――」


レオンはゆっくりと視線を落とし、真剣な眼差しで彼女を見つめた。


「それを悪用しようとする者も、きっと現れる。……でも君のことは俺が絶対に守るから。安心して」


その言葉に、セレナは思わずうつむいた。


「……ごめんなさい。心配してくれたのに……勝手なこと、して……」


声がかすれたその瞬間、レオンの手が彼女の頬に触れ、そっと顔を上げさせた。


「謝ることなんて、何もないよ」


そう囁いたあと、レオンは優しく、けれど確かな熱を込めてセレナの唇に口づけを落とした。

レオンの唇が離れ、そっと額を重ねられる。


ーーセレナはふと、自分の体質を思い返す。


多すぎる聖力を放出していないと、体に不調をきたす。

日々レオンに聖力を与えることで、ようやく体の重さが取れて楽になり、平穏を保てている――そんな身体。


(陛下が倒れたのを見て、ティオは”毒かも知れない”って言ってた。それを癒す程の力を使ったのに……私の体は軽くならなかった。)


ごくりと喉が鳴る。


(……でも、レオンに触れると、やっぱり楽になる。それはつまり――)


胸の奥に、じんわりとした重さが残っている。

それは疲れでも、力の枯渇でもなく――


(レオンの呪いが……それだけ、強大だということ……毒よりも、ずっと……)


聖力は常にレオンに向かって流れ続けている。

そのことを実感するたび、目の前の彼を救いたいという想いと、自分の力が果たして足りるのかという不安が心を締めつける。


「……セレナ、大丈夫?……顔色がよくない」


その声があまりにも優しくて、大丈夫と答えようとして

――でも、言葉が詰まる。


レオンの腕が、ぎゅっと私の背を包み込む。

鼓動が、近い。

ぴったりとくっついた胸元から、どくん、どくんと、力強い音が伝わってくる。


「……少し、こうしてよう。」


その低く囁くような声に、胸の奥で張り詰めていたものが、少しずつほどけていく。

廊下から、誰かの足音が近づいてくる気配がした。


「……あ、邪魔しちゃった?」


不意に扉が開き、顔を覗かせたのはティオだった。

少し眉を上げて見せた彼の表情は、いつも通りの軽やかなもの。


「会場、今は封鎖中みたい。やっぱり毒みたいで、出どころを調べるために他の貴族たちも個室に移されてる。……ま、僕はちょっと、心配になって顔を見に来ただけだけど」


彼はそう言って小さく手を振ると、すぐに背を向けようとした。


「……あの、ティオ」


セレナが小さな声で呼び止める。

ティオは振り返り、優しい眼差しを向けた。


「落ち着いたら……話したいことがあるの」


「……うん。じゃあ、近いうちに……公爵邸に行くよ。」


何かを察したようにふわりと微笑むと、ティオは静かに扉の向こうへと姿を消していった。

部屋には再び静けさが戻る。


「……ありがとう、レオン」


「ん……今日はもう、無理しなくていい。少し休もう」


そう囁いた彼は、そっと額にキスを落とす。

鼓動が重なり、温もりが満ちていく。


「……せっかく練習したけどダンス出来なかったね」


「……仕方ないね。あの時レオンと踊ってて良かったかも」


二人で他愛ない会話をして、セレナのまぶたが静かに伏せられた。

その胸には、いまだ高鳴りが残っていたけれど――


(どんな嵐が来ても、私は、きっともう大丈夫。……あなたが、いてくれるから)

お読みいただきありがとうございます♡


公式サイトにて先読みとイラストギャラリー公開中♡

☞ https://serenitee-tp.com/


※お手数ですがコピペでお願いします!

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