第52話 深まる呪いの謎と、公爵様の嫉妬
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
翌朝、私はティオの研究室を訪れた。
新婚旅行から戻って初めての外出。
レオンは「一緒に行こう」と言い張ったが、アレクに「仕事が山積みです」と断られてしまい、今日は護衛付きではあるけれど、ひとりで出かけることになった。
「やあ、セレナちゃん!いらっしゃい!」
扉を開けると、ティオはいつものようににっこりと笑って迎えてくれた。
でも、その瞳の奥には鋭い光が宿っている。
――私が何かを伝えに来たと、すぐに気づかれたようだった。
「……レオンの痣が広がってきてるみたいなの」
椅子に座り、私は小さく息を吐いて告げた。
「本人は『大丈夫』って言ってるけど……でも、悪化してるんじゃないかと思って」
ティオの表情がわずかに曇る。
「やっぱり、か……呪いの進行がやけに早いと、前々から思っていたんだ」
「……そうなんだ」
「先日の“聖域”での反応を見た限り――呪いの核心には“魔法陣”が関わっているのは間違いないと思う。あれを正しく起動できれば、何かが変わるはずだ」
その真剣な言葉に、私は黙って頷く。
「ただ、魔法陣に関する記録はほとんど残っていないし……魔法はずいぶん前に滅びたとされている。“忘れられた力”は簡単に蘇るものじゃない」
「うん……」
「でも、皇帝陛下なら、何か知っているかもしれないと思っている。聖女の力を隠そうとしたのも、皇族だったからね」
その言葉に、胸の奥がざわつく。
「まぁ、断言はできないけどね。元皇女だったレオンの母上も知らなかったようだし……さすがに甥っ子相手に何かを隠しているとは考えたくないけど」
ティオは肩をすくめ、少し皮肉めいた笑みを浮かべた。
「でも、もし“知ってて黙っている”としたら――それはそれで、かなり不気味だよね」
その言葉に、私の背筋が冷たくなった。
ひやりとした感覚が、喉元から胸の奥へと広がる。
(そんな……まさか)
レオンの穏やかな笑顔がふいに浮かぶ。
けれどその一瞬と同時に、何か大きなものに近づいてしまったような予感がした。
私は思わず息を呑む。
重い沈黙が流れそうになったその時、ティオがぱちんと指を鳴らした。
「……そういえば! ミアちゃんに会ったって聞いたよ」
「えっ……?」
急にあの熱烈なアドバイスが脳裏に浮かび、頬が熱くなる。
「セレナちゃんとレオンに役立つと思ってたんだよね~。どうだった?」
「もう、ティオ……!」
「あはは、ごめんごめん。まぁ、まだまだわからないことだらけだからさ。こっちも引き続き調べておくよ。……いつも通り、よろしくね」
ティオが笑うと、思わず私も微笑み返す。
きっと私が重く考えすぎないように、明るく振舞ってくれているのだろう。
「――あ、そうだ。さっき、ここで変な女の子がうろついてたんだよ。挙動不審でさぁ……気をつけて帰ってね、セレナちゃん」
「……え? う、うん」
ティオが気軽そうな声で続けた。
「ふわふわっとした感じの子でさ、きょろきょろしてると思ったらその辺を行ったり来たりしてて……」
「へぇ……なんだか面白い子がいたのね」
「でしょ? そしたら急にくるっと向きを変えて逃げていったんだよね。なんだったんだろうなぁ、あれ」
「……もしかして、ティオのファンだったりして」
「えっ」
私の言葉に、ティオは目を丸くして驚いた。
「ふふふ……ティオは、好きな人いないの?」
「え、僕?」
「うん。ティオは素敵だし、誰かに想われてそうなのに、そういう話聞かないから……」
からかうように言うと、ティオは「ん」と小さく唸って考え込んだ。
その様子が少し意外で、思わずじっと見つめてしまう。
「……恋とか、そういうのはね、あんまり、わかんないや」
曖昧に笑いながら、首をかしげるティオ。
「でも、経験は……うん、まぁ、その、あるっちゃ、ある……し……」
途端に視線が泳ぎ始めた。
「……ふふっ」
「な、なに、今の笑い!?」
「別にっ。……なんでもないよ」
ティオの慌てた様子に、思わず笑いをこらえきれなくなった。
「……あははっ……また、聞かせてね」
「……もう、セレナちゃんっ」
◆
――その夜。
眠る前、寝室で私はベッドにうつ伏せになっていた。
枕をぽふぽふとつついていると、昼間のティオとの会話が脳裏に浮かぶ。
「……ふふっ」
思わずこぼれた笑い声に、隣から声がかかる。
「……何がそんなに楽しかったの?」
レオンの声は静かだけれど、どこか探るように響いていた。
「えっとね……ティオと、ちょっと面白いやり取りがあって」
レオンは何も言わず、こちらを見つめている。
「気になる人はいるのか……とかそういう話をしてて……」
「セレナ」
不意に名前を呼ばれた。
顔を向けると、レオンの瞳がすぐ目の前にあった。
その視線があまりにも真っ直ぐで、ドキリとする。
「……?」
次の瞬間、何かを遮るように、唇が塞がれた。
ちゅ、ちゅっ……
軽く触れるだけのキス。
それが何度も繰り返される。
「……レ、オン……?」
唇を離したレオンが耳元で囁く。
「……他の男の話ばっかりしてるから。ちょっと黙らせようと思って」
その声が甘くて、少し拗ねたようで――
私の胸の奥に、きゅんとした痛みが残った。
「……ちょ、ちょっと待って、レオン。……ティオだよ?」
そう問いかけると、レオンは眉ひとつ動かさず、静かに答えた。
「……誰でも嫌だ」
――ヤキモチをやいた公爵様は、そのまま私を、もう二度と離さないとでも言うように抱きしめてきた。
強くて、でも優しくて。
逃がす気なんて、最初からなかったみたいに。
(……レオン……)
気づけば、何も言えなくなっていた。
そしてその夜、私たちの間に流れた時間は――とても静かで、甘かった。
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