第34話 体調を気遣う優しい夜。公爵様の我慢が切なくて甘い
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
ある夜。
寝室のカーテン越しに、淡い月明かりが差し込んでいた。
ふたりきりのベッド。
ぴたりと寄り添いながら、静かに並んで眠っている。
セレナは、そっとレオンの手を握った。
指先を絡めるだけで、心までじんわりとあたたかくなる気がする。
レオンも何も言わず、ただ静かにその手を握り返してくれた。
――私は、レオンに救われた。
そう思ったのは、何度目だろう。
孤独だった日々、誰にも必要とされなかった私。
でも今は、こうして優しく手を握ってくれる、あたたかな人がいる。
"セレナ"というひとりの人間として、私を愛してくれるレオンがいる。
(……私も、レオンの力になりたい)
心から、そう思った。
ここ数日、体調を崩していた私に気を遣って、 レオンはずっと、そばにいてくれた。
ふたりきりの夜も、手を繋ぐだけ。
キスや、抱きしめることはあっても、それ以上を求めることはなかった。
(……きっと、本当は我慢してる。……体調は大丈夫かな?)
それでも、彼は私を気遣って、優しさを向けてくれている。
レオンは後ろからそっとセレナを抱きしめると、髪にキスを落とし、「おやすみ」と囁いた。
セレナが眠るまで、静かにそのぬくもりを伝えるように。
セレナはもぞもぞと身じろぎして、よりレオンに身体を寄せた。
脚を重ね、背中を預けるようにぴたりと寄り添って、そっと彼の名前を呼ぶ。
「……レオン」
「……ふふ、甘えてるの?」
そう言って、髪に優しくキスをしながら、頭を撫でてくれる。
「……レオン体調大丈夫?もっと触れなくても平気……?」
その言葉に、レオンは静かに力をこめてセレナを抱きしめた。
「本当は、ずっと……君に触れたいって思ってた。でも、今は……」
かすかに震える声。
「君の体調が、何より大事だから。無理はさせたくない」
その優しさが、嬉しくて、少しだけ切なくて――
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
レオンは何も言わず、ただその華奢な身体を、包み込むように抱きしめた。
「今夜は、このまま……眠ろう」
ぬくもりだけを確かめ合いながら、ふたりは静かに、寄り添い合う――。
◆
セレナが小さな寝息を立て始めた頃、 レオンはそっと彼女の髪に顔を埋めた。
かすかに香る甘い匂いに、胸の奥がじんと熱くなる。
(……我慢すると言ったくせに)
無防備に眠るセレナ。
その温もりに触れているだけで、どうしようもないくらい、愛おしかった。
それでも、ふわりと伝わる寝息に、 レオンは自分の奥に滾る想いを、ぐっと堪える。
(触れたい。けど……今はだめだ)
無理をさせたくない。
なにより、大切にしたい。
そっと腕に力をこめて、セレナをぎゅっと抱き寄せる。
(……次の休みには、たっぷり甘やかしてあげたい)
心の中で、静かにそう誓いながら。
レオンは、眠るセレナの額に、そっとキスを落とした。
それは、優しく、穏やかで――
とてもあたたかな、静かな夜だった。
◆
数日後、執務室から戻ったレオンが、手にした封筒をそっと私の前に差し出した。
「ティオからだ。“大発見があった”らしい。できれば癒術理院で直接会って話したいって」
「……大発見……?」
緊張が走る。
ティオと初めて会ったあの日、私のことを“聖女”だと言い、引き続きレオンの呪いを解くために調査をしてみると言っていた。
今回の手紙は、あの時の約束の“答え”なのだろうか。
「ちょうど明日と明後日、ふたりで過ごす予定だっただろう?」
レオンが、ふと口元を緩めた。
「癒術理院に行く道に町もあるし……明日、少し寄り道してみる?公爵領の町ともちょっと違って面白いかも。」
「……うん!行ってみたい」
喜んだセレナが微笑んだだけで、レオンの心はあっという間にとけていった。
「ねえ、レオン。リナたちに、お土産買いたい」
レオンは、少しだけ目を丸くして、すぐに優しく笑った。
「いいな。それ、すごくいい」
「アレクとリナとベル、それにティオにも」
「もちろん」
頷くと、レオンは私の手をぎゅっと握ってくれた。
その温もりに、胸がじんわりと満たされていく。
(レオンと一緒に……みんなに、喜んでもらえるものを選びたいな)
そんなことを思いながら、私はそっと彼の胸に顔を寄せた。
レオンはセレナを抱き寄せたまま、少し不服そうに呟いた。
「本当は、二日ともセレナとゆっくりしたかったんだけどな……。明後日は、いっぱいセレナを甘やかす日にしたいんだけど。……いい?」
「……うん」
一瞬で顔を赤く染めうつむくと、レオンは満足そうに微笑んだ。
彼の鼓動に身を重ねるようにして、セレナはそのまま目を閉じる。
安らぎの中で、ふと心に浮かんだのは、これからの日々のことだった。
きっと、これからは少しずつ――幸せを、積み重ねていける。
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