第32話 「君を守れることが、嬉しいんだ」──静かな夜、約束された愛
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
柔らかな朝の光が、薄手のカーテン越しにやさしく差し込んでいた。
セレナはふわりと瞼を開ける。
(……あれ?)
ぼんやりとした感覚が頭を包む。
最近は軽く感じていた身体も、今日は少し重たい。
頬に触れた自分の手が、妙に熱い。
「……あれ?」
ふわふわとした感覚のまま、寝台で体を起こそうとした――そのとき。
「……セレナ?」
すぐ傍から、優しく低い声が聞こえてきた。
振り向くと、レオンが椅子に座ってこちらを心配そうに見つめていた。
彼はすでに朝の支度を済ませたらしく、整った黒の服に身を包んでいる。
「ごめん……なんだか、ちょっと体がだるくて……でも平気……っ」
セレナは慌てて笑みを作り、起き上がろうとする。
だが、レオンがすぐに腕を伸ばして、そっと彼女の肩を押し戻した。
「――無理しないで。……顔が、赤いよ」
そう言って、自分の額とセレナの額をそっと重ねる。
ひんやりとした感触が、互いの体温を伝え合う。
「熱があるな……。ピクニックで少し冷えたのかもしれない」
レオンは優しいが、有無を言わせない口調で続けた。
「今日はここで休んでいて。いいね、セレナ」
「……うん……ごめんね」
「謝ることなんてないよ。今日はここで仕事をするから、ゆっくり横になって」
そう言って、レオンは優しく彼女の髪を撫でる。
その一言に、セレナの胸がじんと熱くなった。
目尻が潤んだまま、静かに頷いた。
レオンは立ち上がり、テーブルから濡らしたタオルを取り出すと、丁寧にセレナの額に当てた。
「……こうして君を守っていられることが、俺には……すごく嬉しいんだ」
その小さな呟きは、あまりに優しくて。
セレナは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「レオン……」
弱々しく伸ばした手を、レオンはすぐに包み込む。
大きな掌に、セレナの細い指先がすっぽりと収まる。
「無理して頑張りすぎないで」
「……うん」
「今日だけじゃない。これからもずっと、俺のことを頼って」
セレナは微かに涙を浮かべながらも、優しく微笑んだ。
心から想ってくれていると、まっすぐに伝わってくる。
――こんなにも大切にしてくれるなんて。
私がそう思ってるだけじゃなくて、レオンにとっても、私はかけがえのない存在なんだ。
そっと握られた手の温もりが、不安も痛みもやさしく溶かしてくれる。
セレナは再びそっと瞼を閉じた。
◆
夕暮れの光が窓から差し込み、寝室を金色に染めていた。
紙をなぞる羽根ペンの音だけが、部屋に静かに響いている。
「……セレナ……?」
ふと顔を上げると、セレナが体を起こそうとしていた。
筆を置き、急いでベッドに駆け寄る。
「無理しなくていいよ。まだ寝てて」
そっと椅子に腰を下ろし、手を伸ばしかけたその瞬間。
「……ごめんなさい」
セレナが小さく呟く。
「私が……はしゃぎすぎたせいで……こんなことに……」
その一言が、レオンの胸をきゅうと締めつけた。
「そんなこと……」
否定しようとした途端、セレナの肩が細かく震え始めた。
「私……悪い子だから……」
震える声と、こぼれる涙。
まるで子どものように、すがるように泣き出してしまった。
(……ああ)
きっとずっと、心に抱えてきたのだ。
許されず、受け入れられず、傷ついては「自分が悪い」と思い込んで。
レオンは何も言わず、そっと彼女を抱きしめた。
彼女を向かい合わせにして膝の上に乗せ、ぎゅっと胸元に引き寄せる。
「……っ……ぅ、……ひっく……」
セレナはレオンの胸に顔をうずめて、嗚咽を漏らしながら泣き続けた。
レオンは、静かに背中を撫でる。
やさしく、温かく――過去の傷さえも包み込むように。
ときおり、指先で髪を梳くように撫でる。
そのたびに、セレナの震えは少しずつ小さくなっていった。
(……もう、泣かなくていい)
声に出さず、胸の奥で何度も何度も祈った。
セレナは、まだ熱の残る体をレオンに預けながら―― ようやく落ち着いた呼吸を取り戻していった。
レオンは、胸にすがる彼女の背中を撫で続ける。
額を預けるように寄り添うセレナの頬に、そっと指先で触れながら、低く囁いた。
「……ありがとう」
セレナがゆっくり顔を上げる。
「……?」
「そばにいてくれて、こうして甘えてくれて……本当に嬉しいんだ」
その言葉に、セレナの目が潤みながら、ふわっと笑みを浮かべた。
「……レオン、ありがとう。レオンが、傍にいてくれて、よかった」
互いの温もりを、静かに、しっかりと感じ合う。 確かな絆がそこにある。
やがて――
セレナの呼吸がさらに深く、穏やかになっていく。
「……セレナ?」
そっと名前を呼ぶと、小さな寝息が返ってきた。
(……寝ちゃったか)
あまりにも愛おしくて、レオンは思わず微笑む。
だが、膝の上で眠ってしまったセレナを起こすわけにはいかない。
――動かせるはずもない。
こんなにも安心して身を預けている彼女を。
レオンは片手を伸ばし、静かに部屋のベルを鳴らした。
やがて小さなノックとともに、リナが控えめに顔を覗かせる。
「失礼しま――あっ」
セレナを膝に乗せたまま、そっと抱きしめているレオンの姿に、リナは目を見張った。
レオンは静かに言葉を発する。
「リナ、すまない。今日は俺がセレナのそばにいる。君はもう休んでくれ」
「えっ……で、でもっ」
「必要なものだけ置いていってくれ。あとは、任せてほしい」
その言葉に、リナは何かを悟り、深く頷く。
「かしこまりました……!」
そっと湯冷ましや冷たいタオル、体温計などをベッド脇に置き、音も立てずに部屋を後にする。
再びふたりきりの空間。
レオンは、膝の上のセレナをそっと抱き直し、寝台に寝かせた。
起こさないように気を配りながら上掛けをかけ、自分も彼女の傍らに腰を下ろす。
「……セレナ」
頬はまだ微かに赤いが、その寝顔は安堵に包まれていた。
レオンは彼女の髪を梳きながら、心の中で静かに誓う。
(もう二度と、辛い思いはさせない)
熱も不安も、すべて―― 自分が背負う。
大切な、この存在を守るために。
夜は、静かに更けていった。
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