第27話 秘密を知って、もっと近付いた夜
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
セレナは、胸の前でそっと手をぎゅっと握りしめた。
ベッドの上。
夜の空気はしんと静まり返っていて、蝋燭の灯りがやわらかく揺れている。
その中心に、セレナは一人、膝をついて座っていた。
身にまとっているのは――
先日の街で、リナと一緒に買った、淡い桃色のシュミーズ。
上質な布地に、胸元には綺麗な刺繍があしらわれた、可愛らしいデザイン。
だけど、肩から背中にかけて肌が露わになっていて、どきどきしてしまう。
(……レオン、喜んでくれるかな……)
頬を真っ赤にしながら、扉の方をそっと見つめる。
そして、静かに、扉がノックされた。
コン、コン――。
(来た……!)
セレナは胸の奥で跳ねる鼓動を必死に押さえながら、「どうぞ」と小さく声をかけた。
扉が開かれ、レオンが入ってきた。
「セレナ、遅くなって――」
その瞬間、レオンの動きがぴたりと止まった。
青い瞳が大きく見開かれる。
そして、ゆっくりと、セレナの姿を上から下までなぞるように見つめた。
「……セレナ……?」
「……えっと……その……レオンのために……」
恥ずかしさで今にも泣き出しそうになりながら、セレナは小さな声で言う。
レオンはゆっくりと、セレナに近づいてきた。
吸い寄せられるように、ゆっくり、確かめるように。
ベッドの傍に膝をつき、目の前にいるセレナにそっと手を伸ばす。
指先が、震えながら薄布をそっと摘む。
「……セレナ、どうしたの……急に」
セレナは小さく息を吸い込み、真っ赤な顔でレオンを見上げた。
「……この間の夜……私の名前……呼んでるの、聞いちゃって……」
レオンの顔が、ぱっと赤く染まる。
「――っ!!」
今まで見たことがないくらい動揺した顔だった。
耳まで真っ赤にして、レオンは何か言おうとして――声にならなかった。
「……恥ずかしくて、起きてるって言えなくて……でも……嬉しかったの」
セレナの震える声。
「レオンが……そんなふうに、私を思ってくれてるって、知れて……すごく、すごく、嬉しくて……」
レオンは目を伏せ、ぎゅっと手を握りしめた。 そして、深く、苦しそうに息を吐く。
「……セレナ……俺、本当は――」
震える声で、告白する。
「……本当は、もっと……セレナに触れたくてたまらなかった。でも、君を大事にしたいから、無理はさせたくなくて……」
ほんの一瞬、言葉を飲み込んだあと、耳元でぽつりと。
「……抑えがきかないって、ちょっと情けないけど……それくらい君のこと……」
公爵様の甘い秘密にセレナは目を見開き、そして、胸の奥がぎゅっと熱くなるのを感じた。
セレナはそっと、レオンの首に腕を回した。
「……私だけじゃ……ってちょっと心配したけど、レオンが私をそんなに想ってくれて……すごく、うれしい」
顔を埋めるように抱きつきながら、震える声で告げた。
レオンは、腕の中のセレナをぎゅうっと強く抱きしめた。
そして、ゆっくりと、レースの薄布を持ち上げながら、低く、掠れた声で囁いた。
「そんなわけない……今夜は……離さないよ」
青い瞳に、もう理性の影はなかった。
セレナもまた、身を預けながら、そっと微笑んだ。
「……うん。私も……いっぱい、レオンに触れてほしい」
二人の距離が、そっと近づいていく。
夜の静けさの中――
甘く、熱い空気が満ちていった。
(……好き。こんなにも、こんなにも愛してくれて――)
ふたりきりの世界。
深く深く、心まで一体になっていく気がした。
そして、ようやく――
夜が明けるころ。
微かな光がカーテン越しに差し込むなか、ふたりは互いの腕の中で、ようやく静かな眠りに落ちた。
肌の温もりも、指先の震えも、すべてが確かにそこにあって。
(……大好き。ずっと、こうして……)
セレナは眠りに落ちる直前、胸の中でそっと呟いた。
レオンもまた、セレナを抱きしめたまま、深い安堵の吐息を洩らして――
ゆっくりと、夜が、朝へと変わっていった。
◆
ふたり並んで寝ていたベッドで、レオンが目を覚ます。
体は驚くほど軽い。
呪いのせいでいつも重だるかったはずの手足も、今朝は羽が生えたように軽やかだった。
(……すごい。まるで、呪いが……)
一方で隣にいるセレナは、ふわふわと寝息を立てている。
肩を優しく抱き寄せてもぐっすりと眠っている。
(……セレナ……疲れさせすぎたかな)
昨夜を思い出して、レオンの頬にほんのり赤みが差す。
けれど、ぐっすりと安心しきった寝顔を見て、胸がぎゅっと締め付けられる。
「……セレナ。ありがとう」
小さな声でそう呟き、額にそっと口づける。
けれど今日は仕事が溜まっている。
後ろ髪を引かれながらも、そっと寝台を離れる。
眠る彼女の上に、柔らかな上掛けをふわりとかけ直し、頬を撫でながらささやく。
「ゆっくり休んで……俺は、すぐ戻るから」
そして名残惜しそうに部屋を後にするレオン。
少ししてふわふわと柔らかいシーツの感触に包まれながら、セレナは目を覚ました。
(……ん……昨日は……)
寝ぼけた頭で思い出すのは、昨夜のひとときーー
(……な、何回も……! あんなに……××だったなんて……っ)
”公爵様の秘密”を思い出し、頬がじんわり熱くなる。
(……でも、すごく、嬉しかった……)
掛け布をぎゅっとを抱きしめる。
思わず小さく身体を縮めて、枕に顔を埋めた。
(こんなに大切に想ってくれてるんだって……、ちゃんと、感じられたから……)
だけど、きっと疲れているのはレオンの方だ。
(……私も、何かしてあげたいな)
思い立ったように起き上がる。
「そうだ、リナに相談してみよう……!」
ほわほわとした笑みを浮かべながら、セレナはゆっくりと自室へ戻っていった。
セレナがそっと自室の扉を開けると、待ち構えていたようにリナがぱたぱたと駆け寄ってきた。
「セレナ様っ、お帰りなさいませ! ……あれ、顔が赤いような……っ、大丈夫ですかっ?」
心配そうに覗き込んでくるリナに、セレナは思わず頬を押さえた。
火照りはもう少し引いたかと思っていたのに、リナの一言でまた顔が熱くなってしまう。
「だ、だいじょうぶ……。ちょっと、恥ずかしいだけで……」
もごもごと呟きながら、セレナはそっとリナに耳打ちする。
「……あのお買い物に行った時の”作戦”、成功したよ……」
「――!! おめでとうございますっ、セレナ様っ!」
思わずぴょん、と小さく跳ねるリナ。
満面の笑みで両手をぱたぱたさせながら喜びを爆発させている。
「それでね、今日……レオン疲れてないかなって思って……私に何かできることないかな……?」
「でしたら! お菓子を作るのはいかがでしょうっ」
ぱっと提案するリナに、セレナは目を丸くする。
「……レオン甘いもの好きかな……?聞いたことないけど……」
「セレナ様お手製だったら絶対に喜びますよ~! 私もお手伝いしますから公爵様に”甘いお礼”しちゃいましょう!」
弾んだ声に背中を押され、セレナも自然と笑みを浮かべた。
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