第21話 黒髪黒目は不吉じゃない?癒しの真実と聖女の正体
※こちらは全年齢向けに甘さ多めで改稿した作品です。
以前の作品を読まれている方は、内容が重複する部分がありますのでご注意ください。
基本糖分高めで甘やかされます♡
レオンが部屋を去った後、少しの間沈黙が流れた。 その沈黙を破るように、私は口を開いた。
「あの、ティオ様……」
「ティオでいいよ。もうセレナちゃんとも友達だし。口調も楽にしてくれたら嬉しいな~」
「と、友達……? ……ありがとう、ティオ」
初対面で二人きりとは思えないほど、空気は和やかだった。
きっと、ティオの人柄がそうさせているのだろう。
(友達、なんて――初めて言ってもらえた)
「他に、気になってることはない? 身体のことでも、昔のことでも」
セレナは一瞬ためらい、視線を伏せる。けれど、意を決したように口を開いた。
「……公爵家は代々、呪いのせいで短命だって……レオンが言ってたんですけど……」
「うん、それは事実だね。レオンも例外じゃない。だからこそ僕も、できる限り調べてるんだ」
セレナは胸元をきゅっと握りしめた。
「……実は、私も伯爵家にいた頃、“黒髪黒目で生まれた者は短命”だって……ずっと言われて育って……これも関係あるのかなって……」
ティオの緑の瞳が一瞬、大きく見開かれ、きらりと光を帯びる。
「……それは……興味深い話だね。少し調べてみよう」
ティオはノートを取り出してメモをとりながら、小さく頷いた。
セレナは不安そうに視線を落とす。
「……あの、私は……聖女なんでしょうか……。ずっと不吉な存在だって言われてきたから……」
ティオは微笑みながら、セレナをまっすぐに見つめた。
「さっきの古代語の文献に、こうあったよ。“黒き髪と黒き瞳を持つ者、癒しの器なり”ってね。つまり、“黒髪黒目”は“聖女の証”ってこと。今じゃ不吉とされてるけど、本当は最も神聖な存在だったんだ」
ティオはそこで、意味ありげにセレナをじっと見つめた。
「この国で“黒髪黒目”がどうして“不吉”と呼ばれるようになったのかは、まだわからないけどね」
セレナの瞳に戸惑いの色が浮かぶ。 信じがたいけれど、ティオの言葉には不思議な説得力があった。
「……教えてくれてありがとう」
「すぐには信じられないかもしれないけど、君はもっと自信を持っていい。魔法が消えたこの時代、君のように“力を持つ”存在は本当に希少なんだ」
「……魔法って、もう全部なくなってしまったの?」
「うん、“名残”だけ少しね。正確には、もう誰も魔法を使えないけど、“魔法石”っていう動力源としては残ってる。たとえば――」
ふいに、ティオがにこっと笑う。
「公爵家には魔法石がたくさんあるはず。お風呂とか、使ってるでしょ?」
「……あっ!」
セレナの脳裏に、邸宅に来たばかりの頃、リナに案内された“自動で湯が沸く湯殿”が浮かんだ。
「……あれも、魔法の名残なんだ」
「そう。便利なところだけ残った感じ。でも魔法を“発動できる人”は何百年も現れてない。魔法書も、読むことはできても再現できないんだ」
ティオの目がキラキラと輝きながら、セレナをじっと見つめる。
「とにかく色々聞きたいことがあるから、今後も定期的に会ってくれる? いやー、伝承しか知らなかった僕としては、生きた聖女に会えるなんて感動ものでさ!」
「う、うん。私でよければ……」
そう答えると、ティオは満足げに頷き、再び問いかけた。
「他にも何か気になることある? 今後の研究にも役立つかもしれないし、なんでも話してね」
(……気になること……)
セレナは指先をそわそわと握りながら、ティオに視線を送った。
「あの、レオンが一緒のときは恥ずかしくて言えなかったけど……彼に触れると、胸の奥が熱くなって、“もっと”って思ってしまうんです。……頭では抑えようと思っても、身体が勝手に動いてしまって……ちょっと怖くて」
「なるほどね。好意もあるだろうけど、聖力を放出しようとして、本能的に求めてるのかもしれないな。君の聖力、相当多いみたいだし」
ティオは口元に笑みを浮かべて、セレナにぐっと身を乗り出す。
「やっぱり、君たちの場合は“触れ合うこと”がとても大事な治療法になるね。だからさ……できるだけ、いろんな意味で……よろしくね」
セレナの頬が一気に赤く染まった。
そこへタイミングよく扉がノックされ、レオンが入ってきた。 ティオは席を立ち、レオンの肩をポンと叩き、にこやかに言った。
「じゃ、面白い話も聞けたし、研究室に戻るよ。……しっかり触れ合ってね」
レオンは眉をひそめてティオを睨んだが、ティオは悪びれずウィンクして部屋を出ていった。
扉が閉まったあと、室内は静まり返る。
レオンはセレナの隣に腰を下ろし、そっと手を取って尋ねた。
「ティオめ……変なことされなかった?」
「ふふ、大丈夫。……面白い方だったよ。お友達になったの」
レオンはしばらく扉を見つめていたが、ため息をついてセレナに視線を戻す。
その目には、少しの照れと……何かをこらえるような色があった。
「全く、あいつは……」
「仲良しなんだね。良い人だって伝わってきたよ。……ちょっと恥ずかしかったけど、ティオって不思議な人だね」
セレナがそう口にすると、ふとティオに言われた言葉を思い出し、頬がほんのりと赤く染まった。 静かな沈黙が流れ――
レオンは何か言いかけて口を閉じる。 一度、視線が揺れたあと、まるで何かを決意するように言葉を選び、ゆっくりと口を開いた。
「……セレナ。今夜、君の部屋に行ってもいい?」
その優しく静かな声に、セレナの胸の鼓動が跳ね上がる。
「……うん……」
そっとレオンの指を握り返しながら、セレナはうつむき加減に、囁くように答えた。
ふたりは静かに見つめ合い、言葉にしなくても、想いが通じ合っていた。
レオンの手のひらから伝わるぬくもりに、セレナの胸の奥が、じんわりと熱を帯びていった。
お読みいただきありがとうございます♡
公式サイトにて先読みとイラストギャラリー公開中♡
☞ https://serenitee-tp.com/
※お手数ですがコピペでお願いします!




