エピローグ もう一度、桜が咲く。
4月号の雑誌を、車内で読み耽っていた。
僕は晴れて今月就職が決まった。
いわゆるベンチャー企業だったが、伸び代があると僕は思っている。
それに企業側も、もうそろそろ出版の方面に手を伸ばしたいらしかった。
僕は、仕事がうまくゆけば、会社初の専属詩人になる。
あの詩——。『桜が散ったら』は、また雑誌に掲載されていた。
僕を落とした出版社が刊行している雑誌だった。
アパートからマンションに引っ越すことになった。
理由は、定職につけたからである。
広さはアパートとさほど変わらないが、一人暮らしにはちょうど良いし、何より壁がアパートより厚くなって、天井が脆くなって崩れてこないか、という杞憂ではない心配も無くなったし、防音になるからセキュリティーやプライバシーの対策もある。
そうそう。引っ越しに向けて荷物の整理をしていた時、原稿用紙の束がどさっと崩れ落ちてきた。
僕はその大半を捨てたが、少しだけ取っておいた。
僕は『桜が散ったら』をこんな詩で返していた。題名は『桜が咲くならば』だ。
桜が咲くならば
桜は散るだろう
散ってもまた会える
桜には毎年咲いてほしい
そのために僕らは巡り会える
まるで春の七夕だ
美しい桜
美しい春の七夕……
皆さんこんにちは。
作者の沼津平成です。
この小説はどうでしたか。
沼津平成は、書いていてどうなるのかハラハラしました。
でも、ハッピーエンドに落ち着いてよかったな、ととりあえず思っています。
作者は、どんなことが起きるのかを細かに想像する必要は、どうやらないのだなーと思いました。
書き始める前に、たとえば柏木が、どんな人物なのかは大まかにわかってしまうのです。
私はこの小説を、救われない人々に贈ります。
まだ希望はあるよ。
謝辞
登場人物になってくれた二人・
ここまでお付き合いくださったあなた、そしてあなた方。
感謝いたします。