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The last episode
昔、ここで、この公園で、俺は柏木聡と出会った。
自転車を押しながら、きつい上り坂を上り切る。
「……ハァ。いないか」
桜の蕾ができ始めてきたというのに、あたりには雪が降っていた。
都会に出るのは久しぶりで、今から家に帰るなど到底できなかった。
仕方なく辺りを彷徨っていると、いつの間にか住宅地から畑が広がるところに来てしまっていた。
確かに夕陽が沈み始めている。足もいつの間にか限界だった。
「この辺りの家に泊まるか」
たまたま目についた家に入ると、懐かしい人が顔を出した。
そうだ、この顔——。
「家に入るか」
柏木智はいった。