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3話。スケルトン狩り

「ハルコ、おかえり!砂だらけじゃないかい!シャワー浴びておいで!」

宿屋の女将リリィは笑顔で迎える。


日は落ち、月の光がサンダリアの町を照らす。


「リリィさん、ありがとうございます。シャワー使いますね。」


「シャワー浴びておいで、さっき炎の魔石をセットしてきたから温かいよ!あと、私のお下がりだけど、服をあげるからね」


脱衣所で服を脱ぎ、シャワールームに入るハルコ。


鏡に映る自分の姿。

白い肌。茶色の短髪。栗色の目。引き締まった身体。

運命の女神の加護のせいか、冒険を続けてもその均整が保たれている。


「巨大な岩を砕ける力がこの細い体のどこにあるのだろう」

思わず呟いた。


蛇口を捻るとお湯がシャワーヘッドから出てくる。

炎の魔石が赤く光り、水が温められて、シャワーから出てくるのだ。


身体の砂を洗い流し、石鹸で身体と髪を洗う。


綺麗になった身体を脱衣所のタオルで拭き、おさがりの服を着る。

少し大きめだが、それでいい。


「おかえり、ハルコ。あなたの服、洗って干しておいたよ。明日には乾くからね。」


干された服の下で、炎の魔石と風の魔石が温かい風を送り、ハルコの服が静かに揺れている。


「リリィさん、何から何までありがとうございます!」


「いいのいいの!最近、売上もいいからね!」

温かい笑顔で話すリリィ。


「お客さんが多いのですか。」


「ハルコの泊まってるのは2階の空き部屋で、1階にも結構、冒険者が泊まっているのよ。最近、近郊の緑竜の討伐に成功したみたいで、近くの酒場で宴会が続いているのよ。」

ウインクするリリィ。


「これからみんな帰ってくるから、賑やかになるわよ〜、今夜はうるさいかもしれないからごめんね」


「いえいえ、大丈夫ですよ。それでは、おやすみなさい。」


ハルコは、階段を上り、部屋に入る。


テーブルと椅子とベッドとクローゼットがあるだけの小さな部屋だが、綺麗に清掃されている。リリィさんの真心がこもっているのだ。


部屋に入った時には、下から、賑やかな冒険者達の声が聞こえてきた。

宴の後の楽しい声だ。


こういう楽しげな人達の声を聞きながら寝るのも悪くないなと、ベッドに潜る。



(竜の王を倒すために、もっと強さが欲しい。一撃で倒せるくらいの。下手に刺激をして暴れられたらたまらない。被害を最小限に抑えつつ、町の人に被害が出ないように。。。)


しばらくすると眠りについてしまった。



鳥のさえずりが聞こえる。

まだ日は登っていない。


ハルコは、起きると身支度をする。

1階に行き、洗面台で顔を洗う。

蛇口をひねると溜めてある水が出るのだ。


顔を洗い、タオルで顔を拭く。


畳んで置いてあるハルコの服を着る


「脱いだ服は、置いといていいよ、また、帰ってきたら着ていいからね」

リリィが後ろに立っていた


「おはようございます、リリィさん。ありがとうございます。」


「今日も気を付けて行ってらっしゃい。」


「はい!」


笑顔で見送るリリィに手を振り、走っていくハルコ。


今日も砂漠で特訓だ!さらに奥へ行こう!


サンダリアの南側から出て


草原の道を走るハルコ。

昨日よりも早く。さっきよりも早く。


どんどんと加速していく。風よりも早く走りたい。



日の出と共に、岩砂漠地帯についた。


今回はさらに奥へ!


真っ直ぐ伸びた道を行く。


道の側にオアシスがあるのを見つけた。

そこに、逃げるように走る少女がいる。


必死に逃げる少女の後ろには、人間の皮膚がツギハギのようについている人型の機械がいる。

皮膚の隙間から、鈍い鉛色の骨組み。動力が何か分からないが、人間に襲う理由は、その身体を見れば分かる。


ハルコは、少女を救うべく、人型機械にタックルをした。人型機械は、バラバラになり、吹き飛んだ。



「怪我は無い?」

ハルコは、涙をうかべる少女に話しかける


「お姉ちゃん、ありがとう!あれ、スケルトンって言うの。人間の皮を自分の身体に貼って人間になろうとしてる機械なの。」


「恐ろしいね、ここら辺にいるの?」


「いつもここのオアシスに水を汲みにくるんだけど、いつもはいないの!」


「それは怖かったね。スケルトンがいつもどこにいるか分かる?」


「私の住む町の南側の離れたところにスケルトンの集落があるの。」


「分かった。ありがとう、町まで送るね。」


ハルコは、少女の水のタンクを持ってあげた。


(このオアシスの南側の町のさらに南側にあるスケルトンの集落にスケルトン達はいるのに、なぜ、ここまで来たのだろうか。町は大丈夫だろうか。)



少女の町に付いた。砂漠の町。トルヴァという名前らしい。オアシスの近くにあるため、潤いもある。


町の人たちは、砂漠の暑さに負けないくらい元気いっぱいだ。



「ここ、私の家!お姉ちゃん、ありがとう!」


「娘をありがとうございます。」


「お母さん、あのお姉ちゃん、スケルトンから私を助けてくれたの!」


「え!スケルトンが?!」

空気が変わった。

町の人たちが一斉にこちらを向いた。


その後、何事もないように賑わいが戻る。


「うちの娘を助けて頂き、ありがとうございます。スケルトンが町の近くのオアシスに出たということですか?」


「たしかに、あのオアシスで遭遇して、1体倒しました。」


ハルコはこっそり手に持っていた、スケルトンのパーツを見せる


少女の母親の顔が青くなる


「もう、あのオアシスもダメかもしれない・・・」


「私に任せてください、冒険者です。スケルトンの集落に行って、倒してきます。」


「そんな、1体でも衛兵が2人がかりで倒すのに、30体以上いるのよ・・・」


「この町もバリケートや衛兵が頑張ってるからなんとか守れているけど・・・」


「お母さん大丈夫だよ!お姉ちゃん、一撃で倒してたもん!」


「それでは、行ってきます」


町の人たちの不安げな視線を受けながら、町の南側に行く。

衛兵が止めるが、衛兵達と10メートルはあるバリケートを垂直跳びで飛び越えて行く。


ハルコは走った。

人々を恐怖に陥れるスケルトンを狩ると心に決めた。


遠くに見えるのは、石や木で作られた前哨基地のような集落。


木でできた柵を突き破り、集落の中に躍り出る。


爆発音と飛び散る木片に、スケルトン達は視線を向ける。


鉄が軋むような音を鳴らしながらスケルトン達が襲いかかってくる。


鉄の槍を持ったスケルトンがハルコに突き刺そうと突撃してくるも、ハルコはひらりとかわし、相手の懐に入り、アッパーを当てる。


ガシャーンと音を立てながら、スケルトンの1体の首と身体がオサラバする。


首のない身体を蹴り飛ばし、その後ろのスケルトンにぶつける。


スケルトンの落とした槍を左へ投げ、左からくるスケルトン3体が串刺しになり吹っ飛ぶ。


右から来るスケルトンは剣を持っている。これも人間から奪ったものであろうか。

剣を振るより早くハルコの手刀がスケルトンの身体を3つにする。


「武器よりも自分の鍛え抜かれた身体の方が強いや」


手にした剣をポイとすてると、後ろのスケルトンの首がオサラバする。



様々な武器を持って襲い来る鉄の機械人形達。

ハルコの身体はとっくに鉄よりも硬く、放つ拳の一撃でスケルトンを玉砕できる。



スケルトンを狩る様子を高みの見物しているのは、王冠を被ったふた周り大きなスケルトン。大きな身体から機械部分がよく見える。


32体のスケルトンを粉砕し

最後の1体を倒したところで、キングスケルトンが降りてきた。


機械のクセに笑っているようにも見える。



「これで終わりだ!」


飛び上がるハルコ

6メートルあるキングスケルトンにかかと落としを決め、キングスケルトンは団子の形になる。


「カラン」と、王冠が地面に落ちる音が響く。


集落の奥に、スケルトン製造工場があった。

歪んだ機械のむき出しになった構造がおぞましい。無機質に動く機械。これ以上見たくないものだから、さっさと破壊しようと全力のパンチで工場を丸ごと粉砕した。



ハルコは、王冠を拾い、トルヴァへ戻った。


衛兵達が目を丸くしている。


王冠を見せてハルコは言った


「スケルトンの集落と工場を壊してきた」


町は拍手喝采と喜びの声に包まれた。


「まだ、スケルトンの残党が居るかもしれないから、皆さん、気を付けてください。私は、1度帰ります。」


ハルコは、サンダリアへ走り出す。

夕日が沈みかけている。

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