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13話。斧使いと弓使いと盗賊

温かい日差しがサンダリアの町を照らしている。

酒場を出たハルコとガーランドは、ミストベインに向かおうとしていた。


2人の歩く後ろから、追いかけるような足音が聞こえてきた。


「待ってくれ!」

太い声が聞こえる。

2人が振り向くと後ろには2人の冒険者がいた。



「酒場でのやり取りを聞かせてもらった!俺も仲間に入れてくれないか?ミストベインに行くんだろ?俺は、ミストベイン出身の冒険者だ!案内できるぞ!」

背中に戦斧を背負った太い男がいた。背はハルコと同じ170センチくらいで、立派な髭と筋肉。山賊と見間違えるような野性味を感じる。


ハルコは、この際、強そうな冒険者なら仲間に入れてもいいと考え、快く受け入れることにした。


「分かった、私はハルコ。こいつは、ガーランド。名前を聞かせて欲しい。」


「ルガルだ。よろしく頼む。」


「隣にいる女性は?」

ハルコは、ルガルの隣にいる白く背の高い女性を見る


「こいつは・・・」

ルガルが言いかけると


「私は、エリス。ルガルとは、さっき会ったばかりよ。エルデンフォルス出身で、森で鍛えた弓術を使う冒険者をしてる。」


背は180cmで、ハルコよりも高い。

白く透き通る肌に、金色の長い髪。背中に弓と矢筒を背負っている。


「私は、援助魔法を使えて、援護射撃で役に立つことが出来ると思う。仲間に入れて欲しい。」



「ありがとう。ちょうど筋肉ばかりだったから、助かるよ。」


ハルコは笑顔でエリスを迎えた。


4人は、サンダリアを抜け、北東の道を歩いていく。


「草原を抜け、山道を超えた先にミストベインがある。ミストベインは、鉱山と鍛治の町。煙が登って霧みたいに立ち込めているのも名前の由来だ。」


ルガルが話すのを、ハルコは興味深く聞いている。


「多くの鉱山や谷が周りにあり、鉱山労働者や冒険者の武器や防具を作る鍛治職人が多く働いている。ミスリルやオリハルコンと言った、魔法鉱石はもちろん、鉄鉱石を使った武器や防具も作っている。」


エリスが質問した

「弓を作る事もできるの?」


「もちろん、鉄の弓やミスリルを使った弓、魔法使いの杖も作る職人もいる。」

ルガルが自慢げに話している。



ガーランドが質問する。

「全ての金属の頂点に立つ黒鉄鋼の話を聞いた事がある。俺の武器も黒鉄鋼の両手剣にしたい。」


ルガルの表情が暗くなる。


「それなんだが、黒鉄鋼を作るためには、黒鉄鉱石を採取する必要がある。高純度の黒鉄鉱石が唯一取れる鉱山が、長い間、魔物の巣になっていて、冒険者でさえ、敵わない状況だ。何せ、高純度の黒鉄鉱石を吸収して強くなったアイアンゴーレムが暮らしているからだ。」


「なるほどな。」

ガーランドが納得をした表情で話す。



会話する4人が進む道の先に商人の馬車が歩いているのが見える。


しかし、商人の馬車が黒装束の男たちに囲まれてしまった。


15人ほどの盗賊団が商人の馬車を囲い、全員の手には、短剣が握られている。


馬が足を止め動けない。

じりじりと迫っている。


今にも襲われそうだ。


「止めに行くぞ!」

ガーランドが声を上げ、走り出そうとする。


「待て!私に任せろ!」

ハルコが全員を止めると、一瞬で走り抜け、盗賊たちの前に現れた。


ハルコが盗賊達を睨み付ける

「やめるんだ。」


一瞬にして目の前に現れたハルコ。

その鬼気迫る圧倒的強者の存在感。

ハルコの気迫に、盗賊たちは圧倒され、恐れおののき、恐怖のあまり手に握る短剣を落としてしまう。


盗賊たち全員が、膝を着き、謝罪と命乞いを始める。


「人から奪う仕事よりも人を助ける仕事をする事だ。」


盗賊の頭領らしき人物がハルコの前に出てきた。


「この盗賊団の頭領をしているカダンだ。こいつら全員、身寄りもなく、家族の居ない流れ者だ。こいつらの仕事をどうすればいい。」


「サンダリアに行って、町長のガラッドに聞いてくれ。仕事を手配してくれるかもしれない。私、ハルコの名前を出せばいい。」



「ありがとう。ハルコを前にした時、人の命や物を奪わずとも、生きていける気がした。仲間たちとサンダリアに向かおう。」


ハルコの圧倒的強さを前に、自分の悪事を悔い改め、正しい道へと戻ると盗賊達は心から誓った。


カダンは、盗賊たちを束ねて、サンダリアに向かっていく。



盗賊の集団とすれ違う、ガーランド達が呆気に取られていた。


そして、ハルコに追い付く。


「ハルコ、やはりお前の強さは規格外だな!俺に勝っただけあるぞ!」


ガーランドが笑いながら、近付いてきた。


エリスが商人に声をかける


「お怪我は無いですか?」


「ああ、ありがとう。助かったよ。サンダリアに向かう途中だったんだ。恩に着るよ。」



商人と別れを告げ、4人はミストベインに向けて山道を歩いていく。



山道の外れ、茂みの中に何者かの気配がする。

ハルコは、その気配に気付いているが、襲ってくる者ではないと読んだ。



エリスはその気配に気付くと声を上げた。


「何者だ!さっきから付いてきて、何が狙いだ!」



茂みの中から黒装束の男、先程の盗賊団の頭領カダンが現れた。


「ハルコの仲間にして欲しい。」

カダンは地面に膝を着いた。


ハルコは聞いた。

「仲間はどうなった?」


「サンダリアで、全員働くことになった。ハルコの名前を出したら、ガラッドが快く受け入れてくれた。」


「それで、お前は?」

ハルコはさらに聞く。


「俺は、アイツらが飯を食って生きていければそれでいい。俺の役目は終わり、次は、俺の夢を叶えたくなった。」


「俺は、世界を見て回りたい。流れ者達と狭い世界しか見てこなかった。ハルコと一緒なら、世界の果てまで見て回れると思った。俺を一緒に連れて行って欲しい。」


カダンは純粋な目をしながら、ハルコを見つめた。


「分かった。カダン。仲間になってくれ。これからは人々のために働いていこう。」


「ありがとう。真っ当に生きていこう。そして、アイツらにも真っ当な生き方を示してくれてありがとう。」



ハルコのパーティメンバーが5人になった。


山道を登りながら、ルガルが話す。


「俺は、鍛治屋の親父の一人息子だ。だが、ずっと冒険者に憧れていた。鍛治をするよりも、薪割りの方が好きだ。山を冒険し、木を切りに行き、薪割りをずっとしていた。そんなある日、家業を継がせようとする親父と喧嘩した。そして、家を飛び出し、冒険者となった。男手一つで俺を育ててくれた親父だ。不器用でガサツな親父だった。」


「でも、今からミストベインに行くから、ルガルの親父さんに会うかもしれないよ」


エリスが言った。


「親父は死んだ。親父はずっと黒鉄鋼の武器を鍛え上げるのが夢だった。使えば使うほど強くなり、鍛えれば鍛えるほど強くなる。夢のような武器を作りたがっていた。俺が冒険者をしていたある日、親父が死んだという知らせを聞いた。」


エリスは気まずそうに謝る


「ごめんなさい、ルガル。」


「いいんだ。エリス。親父は、夢のために黒鉄鉱石を求めて、鉱山に潜り、黒鉄鉱石を取り込んでいたアイアンゴーレムにやられてしまった。アイアンゴーレムもただの鉄のゴーレムじゃない。黒鉄鉱石を取り込み、戦うほどに強くなっていた。冒険者達が太刀打ちできないのも納得の強さだ。」



「黒アイアンゴーレムを倒せば、黒鉄鉱石の取れる鉱山は、また使えるようになるのか?」


ハルコはルガルに聞いた。


「そうだが、それが叶えばいいのだが…。」

ルガルは一瞬考え、ハルコを見た瞬間、ハッとした。


「ハルコ!お前がいれば勝てるかもしれない!」



「その時は、手を貸すよ。みんなで取り戻そう。」


「俺の力も舐めてもらっちゃ、困るぜ、赤竜の首を切る剛腕の剣士だ。」

ガーランドが自慢げに言う。


「離れたところからの攻撃なら任せて。動きを止めることができる。」


「俺は奇襲攻撃が得意だ。魔物相手に戦ってきた。仲間を守るためにな。」


エリスもカダンも協力的に話す。


「みんな、ありがとう。黒鉄鉱石の取れる鉱山を取り戻すことができれば、ミストベインは、さらに発展する。死んだ親父の夢も叶うかもしれない。」

ルガルの目が涙目になっていた。



そして、山道が下り坂になると、町が見えてきた。

盆地に町がある。


「あれが、ミストベインだ。」

ルガルが指を指す。

煙が立ち上り、鍛治屋の炎が町のあちこちで見える。


「さあ、ミストベインに向かおう!」


ハルコ一行は、ミストベインへ足を進めた。

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