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11話。竜の王

小鳥のさえずりが聞こえる。


ハルコは、日が昇る前に目が覚めた。


窓を開け、草原の空気を肺いっぱいに吸い込む。


「今日、竜の巣に行く。」



身支度を済ませ、1階に降りる。



「おはよう、ハルコ。」


「おはようございます、リリィさん。今日も行ってきますね。」


「気を付けて行ってらっしゃい。命を大切にね。」



リリィの言葉を背に、ハルコは、宿屋を出た。


サンダリアの町を出て、北の平原を駆け抜け、岩山の麓につく。


赤竜との戦闘後、焦土となった大地が広がっている。


日が顔を出し、岩山を明るく照らしている。


ハルコは、岩山を自慢の脚力で登り、頂上から、その先を眺める。


視線の先には、岩と竜の骨で作られた山脈のような大きさの鳥の巣の形をした竜の巣がある。


まるで、山が幾層にも重なったような、荒々しい岩の壁と深い盆地が印象的だ。



山肌には、色とりどりの竜がまばらにいる。

彼らの鱗が太陽の光を受けて輝き、まるで宝石のようだ。



ハルコは、岩山の頂上から高く飛び跳ね、竜の巣の淵に飛び乗る。


茶色の鱗を持つ茶竜や昨日戦った赤竜が近くへ飛んでくる。


まるで、これより先の侵入を拒むようだ。


茶竜が口から毒霧のブレスを噴出してくる。


ハルコは飛び跳ねると、立っていた場所がドロドロと溶けていった。


空中から一閃。

茶竜の首を手刀で落とす。


竜の骨に着地し、また、飛び跳ねる。


空飛ぶ茶竜が落ちていく中、赤竜がハルコに火炎放射をする。


ハルコは、炎を切り裂き、赤竜に近付き、赤竜の首を落とす。



次々と、竜が襲いかかってくる。


緑竜の大軍を引き連れた、数匹の黄竜。

1匹で行動する習性の茶竜や赤竜が複数匹で飛んでくる。


竜の巣の中心へ、何がなんでも行かせないような気迫を感じる。



ハルコは、竜を手刀で切りながら、先へ進んでいく。竜の亡骸が山のように積み上がっていく。


雷が落ち続け、爆発音が何度も轟く。



竜の軍団を倒し、さらに奥へ進むと、噂に聞いた縞模様の竜が待ち構えていた。


縞模様を持ち、これまで戦った竜の持つ能力を複合して使うことができる。



口から毒ガスを噴出して、そこに、電撃を流し、爆発させたり、巨大な火球を吐いたりしてくる。



ハルコは、どんな攻撃も防ぎ、傷1つ負わないまま、縞模様の竜の首を落とした。



次第にハルコを見ただけで、逃げ出す竜や戦意喪失する竜が増えていき、ハルコは、命を奪うのを辞めた。




そして、竜の巣の盆地の中央にたどり着く。


広く、まるで闘技場のような形状になっている。


その中央に、これまでの竜達とは比べ物にならない程の強者のオーラを纏う、黒い鱗で全身が守られている竜がいる。


竜の王だ。


「お前は強い。」


ハルコは驚き戸惑う、黒竜が言葉を話した。


「お前の強さを認めよう。頼む。これ以上、同胞を無闇に狩るのを辞めてもらいたい。」


「竜達が、近隣の町を襲い、人々を食い、町を破壊してきた。」



「その件については、謝罪したい。一部の竜は、この巣を離れ、人里を襲っていると聞いた。しかし、縞竜や茶竜、赤竜が人里を襲うことはほとんど無かっただろう。知性の高い竜は、攻撃されない限り、襲わない。」


「そうか。ならば、なぜ、アラルティアとサンダリアを繋ぐ道の上に竜の巣を置き、そこに住んでいるのだ。」



「我々が住んでいた竜の国を魔人に乗っ取られたからだ。我が黒竜の力を持ってしても叶わず、一族を滅ぼされないためにも、逃げてきたのだ。ここは人が少なく、他と比べて住みやすい場所だからだ。」


「なるほど。では、竜の国を取り返せば、いいのだな。」


「お前が強いのは分かるが、無謀だ。」


「約束する。必ず取り返そう。」


「分かった。しかし、我にもプライドがある。お前に狩られた同胞達の仇を取らせてもらう。」


「そうか、戦うのか。」

ハルコはうつむく。



「ただ、我との戦いの後、妻と子、他の同胞に攻撃をしないでくれ。」


黒竜の後ろには、卵を守る黒竜がいた。


「黒竜は、1匹じゃなかったのか!」

ハルコは目を丸くした。



「分かった、お前と戦った後、竜の巣に住む竜を狩らないと約束しよう。ただし、人に危害を与える竜は別だがな。」



「そいつらは、ここの竜じゃない。構わずやってくれ。」



「それから、竜の国を取り戻したら、この竜の巣をそこに運ぶ。」



「分かった。お前の力なら、この巨大な竜の巣を運べるはずだ。」



「これで、話は終わりでいいか。」


「ああ、最後に言わせてくれ。ありがとう。」



黒竜は、深く息を吸い込み、地獄の業火を思わせる強烈な炎をハルコに吹きかけた。


永遠のように長く続く業火。


炎を吐き終わり、再び息を吸うと火球をハルコに当てる。


その場から、ハルコは1歩も動かず、攻撃を正面から食らい続ける。


黒竜が鋭い翼をハルコに叩きつけ、連続して、尻尾を叩き付ける。


ハルコは、黙って防御もせず、ただ攻撃を受け続ける。


黒竜は、何度も火球を放ち、業火を吹き続けた。


黒竜は、空を飛び、天高く登ると垂直に落下するように飛び込んできた。


黒竜の音速を超える頭突きをハルコは、受け止めた。


黒竜は、攻撃するのを辞めた。


「ありがとう。トドメを指してくれ。」


ハルコは、黙ったまま頷くと黒竜の首を手刀で落とした。


様々な竜が戦いの様子を黙って見ていた。


ハルコは、歩いてメスの黒竜に近付き、話しかける。


「無闇に竜達の命を奪ったことを謝罪したい。亡骸を埋葬する手伝いをさせてくれ。」



「あなたは、自分や町を守るために戦ったのです。それは私たちにとっても同じことであり、戦いは必然のことでした。」


「約束通り、ここの竜達をこれ以上、攻撃しない。竜の国があった場所を教えて欲しい。」



「分かりました。ここから遥か東にあります。ミストベインを越えた、さらに東です。ミストベインの鉱山をいくつも超えた先に、竜の国のあった場所があります。山脈を超えた先にあり、魔人達は竜の国で暮らしています。」



「分かった。今すぐには、無理そうだが、いつか必ず取り返し、この竜の巣をそこへ運ぼう。」



「ありがとうございます。あなたなら、きっと叶えられると信じています。」


「ほかの冒険者達にも、この事を伝えてくる。竜と話すことが出来て良かった。そして、ありがとう。さらに強くなれた。」



ハルコは、竜の亡骸を巣の中心に集めた。その様子を見ていた竜達も、竜の亡骸を巣の中心に集めている。



「戦いで命を全うすることを選んだ竜達です。あなたは罪を感じる必要はありません。あなたが信じた戦いをこれからも続けていきなさい。」


黒竜の女王は、手を合わせ祈るハルコに声をかける。


「黒竜の亡骸から角を1本、持ち帰ってもいいか?新たな目標と決意のために欲しい。」


「持っていきなさい。夫も本望でしょう。」


ハルコは、手刀で慎重に黒竜の立派な角を切り取る。


竜達はその様子を静かに見守っていた。


「必ず勝つ。その日まで、待っていて欲しい。」


ハルコは、そう言うと、高く飛び上がり、竜の巣の淵に着地する。


数百の竜が一斉に飛び上がり、ハルコを見送る。


ハルコは、黒竜と竜達の想いを胸に、サンダリアに帰還した。

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