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98 魔法石外交


 ルビアナ宝国は、資金面は潤沢な国で、産出される魔法石や宝石がその資金源だった。


 魔法石に対して輸出制限をかけるということは諸刃の剣だ


 輸出を絞ることで価格の高騰を誘い、少ない数で高利を得ることはできるだろうが、それでも全体的な外貨の獲得は減るだろう。


「なぜ、魔法石の輸出を制限なんてしたのでしょうね」


「現在は、ほぼ輸出停止で、各国と交渉をしているようです。魔法石自体は、他にも産出国はありますし、ソレイユ家の領地でも小さいものでしたら出ています。ただ、品質はルビアナ国が随一。大きさも純度も他で出るものとは全く違います。だからこそ、外交のカードとして使うために一時輸出を停止しているのでしょう」


「ただの商品ではないというわけですか」


「他国でも魔法を使えるものが減っていますから、魔法石を確保したい国は少なくありません」


「……便利ですけれど、そこまで必要なものですか?」


 いや、魔法が使える貴族ならば魔法石を使えば他属性も利用できるので便利だが、生粋の平民では使えない。少し魔法が使えれば利用できるが、出力も小さくなる。


「有事……最大の備えは戦争に対してでしょう」


 思いがけない答えに首を傾げる。今、大きく戦争をしている国はない。小さな小競り合いはあるものの、大戦の兆しもない。


「武力として魔法は他の武器よりも便利です。ですが、魔力が武力に直結するということは、強力な魔法を使えるものが一人減るだけで損害が大きくなります。それで戦線が覆ることもよくあることです。魔力切れで押しどころにきて手を引かざるを得ない場合も。そういった時に、魔法石の備蓄が効いてきます」


「聖女様のおかげで戦争とは無縁ですから……そのような知識はありませんでした」


 レオンの魔法が戦争向きだと思ったことはあるが、聖女様のお力で敵が攻めることができないと聞いた。秘匿されているので効果や理由はわからない。秘匿しているとして実はない可能性だってある。


「今であれば、他国も交渉に出向いているので、我々が魔法石を求めても不自然ではありません。他の国と違い、多くを求めているわけではありませんから、最低限の魔法石が手に入れば十分ですが、どの国が交渉に来ているかも確認ができればと思っています」


 大量に欲しがるということは、戦争準備の可能か著しく貴族が減っている可能性があるということだ。


「有利な条約などを締結して、魔法石を売りたいのでしょう。新国王になって以来、色々と国難が続いたようですから、立て直しも大変なようです」


「マービュリア国とは国境を接しているのに随分と仲が悪そうですし、大変ですね」


「隣国と仲がいい国は多くありませんよ。妹が嫁いでいなければ、私も今のマービュリア国とはあまり付き合いたくはないですし、海賊に金を渡して交易の邪魔をしたくなる気持ちもわからなくはありません。今回の海賊の件は、あちらから謝罪はないでしょう。むろん、こちらはただ被害に遭い対処しただけと言う立場で表面上は問題ありません」


 犯罪者とつながっていると公にしたい国家はないだろう。


「マービュリア国には妹がいますから、対立しているルビアナ国との仲を取り持つという形ができればいいのですが……今の王体制でどこまで意味があるのか。下手に手を出して火傷をするわけにはいきませんから」


 難しい立ち位置なのはわかった。


 ブルームバレー国は聖女様にも権力があり、王族を伴侶とすることが多い。そのためか優秀な王が多い。何よりも歴代の聖女様は、心も聖女らしい方ばかりだったそうだ。


 あの爛れた雰囲気のする王城を見て、背筋に嫌なものを感じたが、あれに比べれば私が少しの間過ごした王宮はとても健全だった。


「良い方向で収まるといいですね」


 ソレイユ公爵家の……レオンの困りごとが妹のことならば、それが幸運として解決するかもしれない。どういう形かはわからないが、婚約破棄の希望が見えた。




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