84 規格外
海賊の襲撃により、予定を変更せざるを得なくなったそうだ。
「風魔法を使えるものが疲弊しているので、このまま国境近くの妹の領までは少し厳しい状況です」
レオンが言う。
「損傷個所がないかの確認も行いたいので、岸の近くにある飛行船場に着陸を予定しています。問題がなければ明日には出発できるかと思います」
「わかりました」
また陸地の上を飛ぶのかと思うと正直うんざりだが、仕方ない。
「魔法を使ったのがリラ様だとご存じの方はおられますか?」
ザクロが問いかける。それに対してレオンは微妙な表情を返した。
「ここで働いている者は馴染みの者が多い状況だ。仕事柄何の属性の魔法が使えるかも知っている。あれだけの魔法を使えるものが自分たちの中にはいないことはわかるだろう」
「どうしても答える必要があれば、私が使用したとお答えください」
ザクロがそんなことを言い出す。
「沈没させた咎であれば、私が負うわ」
誰かに罪をかぶってもらう気はない。
「いいえ、リラ様、咎められるかどうかではないのです」
淡々とした顔で、ワインレッドの髪を一本のおさげにしたザクロが続ける。
「私はリラ様をお守りするようにと王妃様より命じられ、リリアン様からもお願いされています。それが私の職務であり、矜持です」
怖がる私を見てどこか楽しんでいたのとは違う真剣な顔で言われる。
「……君は水魔法が使えるのか?」
「属性は違いますが、各魔法石を携帯しています。そう偽ることは可能です」
「炎魔法の魔法石は持っているか?」
「ございます」
「では、リラ殿に渡しておいてくれ。もし、魔法を見せるように強要されたら、リラ殿はそれを使ってください。マービュリアでは炎魔法が一番価値の低い魔法とされていますから」
「万一のためにお渡しはしますが、他の属性の魔法石の扱いは訓練をしていないと難しいかと。特にリラ様の魔力量でうっかりすると、大火事となるかもしれません。それに、以前の事故でリラ様の属性は知られています。大きな話題になったので、既に知られている可能性も……」
二人してかなり深刻そうな顔をしている。いや、海賊船とはいえ二隻も沈没させたのだから問題なのはわかっている。
「まさか、あのような事態が起きるとは想定していませんでした。もっと早くにリラ様に忠告すべきでした」
「いや……どちらにせよ、リラ殿の助けがなければ船に重大な損傷が出ていた可能性があった」
「やはり、何か法律に引っかかってしまいますか?」
おじいさま……シーモア卿から国内の法律は少し教えてもらっている。けれど国際法となれば別だ。出発前にいくつか調べたが、今回は王からの依頼で行くため外交特権が与えられている。逮捕などとなれば外交問題になるはずだ。それに相手はならず者。一般客船を沈没させたわけではない。
二人して困ったような顔でこちらを見ている。
「リラ殿、こちらをつけておいていただけますか?」
レオンが懐から小さな箱を取り出した。開けると黄色い宝石がついた指輪がある。
「婚約者と言う立場では少し弱いですが、既に婚姻の指輪を渡しているとなれば関係性の保証にはなるでしょう。まあ、多少ですが……」
手を取られ、右の人差し指にそっとはめた。
指輪の位置によって色々な意味がある。右の人差し指は結婚の証か、結婚を約束しているときにしか付けない。
「……もう少し、雰囲気のいい場所でお渡ししたかったのですが、お守りだと考えてください」
指輪はいらないと言える雰囲気ではないのは確かだ。
なんというか……この指だけは飾られることがないのだろうと思っていた。なのにキラキラと輝く銀の輪にレオンの髪色に近い黄色の宝石が輝いていている。
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