78 呼び出し
リラとの婚前旅行だと思えば嬉しいが、実際は無理難題を与えられて頭が痛い。
「公爵家は個人用の飛行船まで所有しているのですね」
両親たちがわざわざ見送りにきてくれたが、その結果少し予定が遅れた。
馬車の中で、リラが少し感心したような顔をしている。
「リラ殿を男爵家から我が家へお連れした時も乗っていただきましたが、あの時は魔力切れで意識がありませんでしたからね」
限界を知るために、魔力切れまで魔力を使う訓練をしたことはある。最悪死ぬ可能性もあると言われている。そんな行為を強要してきた環境にリラがいたと考えただけで今でも胸が痛む。
仕事の関係で飛行船を飛ばす金額よりも時間をとったが、あれは結果としてよかった。あの状態のリラを何日もかけて馬車で運ぶことにならずに済んだのだ。
「最近あそこまで魔力消費をすることがなかったので、この前の魔力暴走もどきは結果としてありがたかったですね」
「……リラ殿ほどとなると、定期的に発散はした方がいいかもしれませんね」
リラは半年に一度は里帰りをさせられ、貯水池に水を溜めさせられていた。自分は訓練時に魔法を使うが、令嬢であるリラは生活魔法を使う必要もない。魔力を使う機会が少なかった結果、リラの中に余力な魔力が溜まりすぎて暴走に近い結果となったのかもしれない。
「飛行船について少し伺ってもいいですか」
どこかわくわくとした目で問われる。そんな目をされては仕方ない。
女性が聞いても楽しくないのではと思ったが、システムや機構を簡単に説明する。その間に公爵家が所有する飛行船の発着所に着いた。とても興味深そうに聞いてくれていたので、すぐに着いてしまったのが残念だ。
「所有する飛行船のほとんどは商業用ですが、これは父たちがよく使うものです。こちらを借り受けるためにも、戻ってきてもらったのも理由のひとつです」
エスコートして馬車を下りる。
大型の船のような作りに、巨大な風船がつく形になっている。リラの領地に使ったのはこれより更に小型のものだ。そちらは領地に戻る父たちが今回使う。
「お待ちしておりました」
「どうした?」
飛行船の担当者が少し困り顔をしている。
ちらりとリラを見た後、声を潜めて答える。
「起動部を担当するものが、少々体調を崩しておりまして、レオン様に助力を頂けないかと」
「……わかった」
この後はリラに船内を案内しながら説明したりと、楽しい時間を予定していた。それが動力源として呼び出しに変わった。
「リラ殿……すみませんが、機関部に行ってきます。飛行が安定したころにそちらに伺いますので」
「わかりました」
特に残念そうでもなく返される。
「リラ様はこちらでご案内させていただきます」
そう言ったのは王妃様が貸し出してくれたメイドだ。




