69 もっときれいになったお嬢様
リラお嬢様がとっても、とても美しくなられています。
リラお嬢様がたまにお屋敷に帰られても、とてもお疲れになっていたり、悲しそうなときもありました。どこかで、リラお嬢様がご婚約者のお家が好きではないのではないかと思っていました。
レオン様は以前とは別のご婚約者様で、リラお嬢様がとてもとってもお好きなのがよくわかります。
レオン様のお母様から頂いた小説にも書いていました。愛される女性はとても可愛く美しくなると。字を読むのがとても遅いので、勉強のために渡していただいたご本です。少し難しかったですが、とても面白かったです。女騎士とお姫様のお話で、最後は田舎町で幸せに二人で暮らすことになって、読んだ後とても幸せな気持ちになりました。
お話と自分に少し重なるところがあったのです。
お仕事を覚えるのは大変ですが、ご婚約者様のお屋敷に連れてきていただいて、私までとても良くして頂いています。前の生活と比べられないくらい、とても幸せになってしまいました。
「リラ殿、お約束の昼食なのですが……」
リラお嬢様を迎えに来られたレオン様が少しだけ困った顔をされます。
「ご用事があるのであれば、ご無理をされる必要はありませんよ」
丁寧ですがどこかそっけなくリラお嬢様が言います。
けれど、朝食を終えてから、リサお嬢様は時間をかけて準備をしておりましたし、私も気合を入れて御髪を整えさせていただきました。
本当はご一緒したいのだと私はわかっています。
「いえ、その……父が同席することになってしまいました」
「……そうですか。時間がないと思うので、何か注意点はございますか?」
「その件ですが……クララをリラ殿のメイドとして連れていき、給仕を任せたいと思います。父のことは全く気にせず、いつものようにクララと接していただければ大丈夫かと」
指名を受けてぴっと背筋を伸ばします。
「なるほど……格下の者にどう接するかで、私の人間性を確認するのですね」
「まあ……えっと、そうです。クララ、君はいつものようにリラ殿に話しかけてくれればいい。新しいメイドが粗相をした程度で腹を立てる人ではないから」
「はっ、はい! リラお嬢様のために頑張りますっ」
気合を入れると、どもってしまいました。リラお嬢様が小さくため息をつかれ、化粧台に向かい宝石箱を開けられました。
リラお嬢様はご実家でも宝石の類は身に着けておられませんでした。元々美しい方なので気になりませんでしたが、今はレオン様のお母様方に贈られたものがたくさんあります。多くはメイド長に管理してもらっていますが、数セットはお部屋に置かれています。
レオン様だけでなくレオン様のお父様である公爵様が同席されるので、宝石をつけられるのだと慌ててお手伝いに向かいます。
出されたのはエメラルドのネックレスです。今日の御召し物にもあっています。
後ろから留め金を止めていると、リラ様が別の髪止めを手に取りました。小ぶりのエメラルドがついたもので、一本ではなく他と合わせるためのもと教えていただきました。
「クララ、こちらに。せっかくなら、私の専属だとわかるようにと前から考えていのよ」
渡されたものを見て、口をぎゅっと引き結びます。
自分でも、まだまだリラお嬢様に見合っていないとわかっているのです。泣きそうになっているのを察して、リラお嬢様が代わりに髪にそのピンをつけてくださいました。
「ああ、もし、なくしても気にしないで。メイドがこういうものを持つと、誰かが盗むことがあるから、それはあなたの責任ではなく卑しい心持ちの者の責任だから。でも、なくなってしまった時は隠さず申告するように」
「はいっ」
私がドジなのを見越して先に対処法までくださいました。涙を拭い、公爵様との昼食に向かいます!
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