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60 拘置所


 魔力は落ち着いた。


 なぜ魔法が使えたのかと考える。魔力が含まれた涙を媒介にすることで、魔法を使えたようだ。そんな使い方があるのを初めて知ったが、あんな状況にならない限り使えそうにない。


 あの後、大分と待って鑑識が到着し、それから貴族用の留置所へ連れていかれた。


 待つ間はレオンがずっと近くにいて、魔力漏れとは違う管理された魔法で冷えた体を温めてくれた。


 多くは話さなかったけれど、終始気にかけられていたことはわかった。


「リラ様、お加減はよくなられましたか?」


 流石は貴族用だけあって、一人だけメイドの同行が許可されている。クララをつけるかと考えたが、やってきたのはリリアン様につけられていたメイドだった。


 それだけ、暗殺の可能性があると判断されたことと、リリアン様含め、マリウス王太子も見捨てていないということだろう。


「おかげさまで熱は下がったわ。魔力の使い過ぎで熱を出たことないんですけどね」


「体が長時間冷えたからだと思います」


 看病してもらって、今はだるいくらいで済んでいる。


「審問会は明後日とのことです」


「普通は、一方的に魔力暴走への罰があるものですけど、審問会をするのね」


「レオン様とシーモア伯爵が随分と頑張っておられます。普通であれば、あれだけの魔力暴走をする危険人物は、一生こういう部屋で暮らすことになりますから」


 人的被害はほぼなくて、家財などが濡れたり流されたりだったらしい。まあ、蒸発させたのでほぼ大きな被害はない。最大の被害は軽く溺れたクズゴミくらいらしい。残念ながら、クズは目覚めたようで死んでいない。


「まあ、もし監禁することが決まっても、王宮のどこかになるでしょう。リリアン様が今回のことで怒られているので。もし、お友達に酷い扱いをするなら、聖力の供給をボイコットするとおっしゃっていますから、王宮に監禁され、リリアン様と楽しくお茶をするという刑に処されると思います」


 どこまで本気かはわからないが、メイドさんが楽しそうに話す。


「それで、実際は?」


「生家で監禁部屋をつくり、家門で責任をもって管理することになります」


 さっきとは変わって、淡々とした口調だ。こちらが素でさっきのは営業用だろう。


「レオン様と、リラ様のご婚約ですが不備があると言う申し立てがあり、婚約不履行になったそうです」


「……不備?」


「公爵家当主が子息の婚約を認める署名をしていないからだと」


「………だれが申し立てを?」


「カーディナリス公爵家です。問題を起こしたリラ様との婚約を穏便に解消する方法だと言っているそうです」


 まあ、解消するつもりだったから別にいいが、レオンがその家門の令嬢を気持ち悪がっていた。


「なんでも、近くあちらの令嬢が婚約するかもしれないからと、同じ公爵家を参考にするようにと言って、調べた時に不備を見つけたそうです。婚約の申請をしただけの書類のはずですから」


「……それ、私とこのクズ……兄が見せていれば詳細を知っていても不思議がないわね。不備を申請する前にご存じか確認したくてと問い合わせたら見せてくれたって」


「あり得ますが、グルだとお考えですか?」


「お考えです」


 公爵家であるレオンを敵に回すほど馬鹿だとは思っていなかったが、別の公爵家が出てくれば話は別だ。


 それに、水不足は死活問題だ。私の意思だけでなくレオンも同じであるとわかった今。是が非でも奪い返したかったのだろう。そして、事故物件にして婚約破棄。仮にも半分は同じ血の妹を襲って子供を産ませようという考えが純粋にきしょくわるい。


「リラ様も、愉快なご家族をお持ちのようですね」


「まだマシだと思っていたけれど、底抜けのクズであれば見捨てるのも簡単だから今回はいい機会になったわ」


 元々、大して好きではなかったが、家族だと思う部分はわずかだが残っていた。領地についても少しは責任があるので、指定した金が無理でも、努力すれば出せる額を払えば、向かってもいいと考えていた。


「もし、シーモア卿と連絡がとれるようでしたら、あれとはもう兄弟でも何でもないので、容赦はいらないと伝えてください」


「かしこまりました」



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