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56 魔法封じと高身長

R18ではないですが、無理強い表現などがあります。苦手な方はご注意ください。


 誰かに体を触られている感覚がした。


 目が覚めると、見たことのない天井が見えた。酷い酔い方をしたような気持ち悪さを感じながら身じろぎをしたときに、腕が動かないことに気づいた。足は少し曲げることができたが大きくは動かない。


「ああ、ようやく起きたか。先に始めていたところだ」


 視線を下げると、アルフレッド兄様が私の足に……太ももに手を置いていた。服越しではなく、素肌に。


「………これは」


 喋ろうとして、喉を圧迫されるような感じがした。見えないが、首に何かつけられている。


 以前、公爵邸に連れ戻された時も、なぜか起きることなく牢馬車に入れられていた。今回は馬車の中で急な眠気が襲った。思い出せば、実家にいたはずなのに婚約者の家で目が覚めたこともあった。


 魔法を使われた違和感はなかった。ならば、何か薬でも使われたか。毒の検知は食事でしかしたことがない。他の対策も必要だったようだ。


「公爵家から……婚約者を、誘拐ですか」


 大きな声はとても出せそうにはないが、話くらいはできる。首枷とは、犬ではあるまいし、いや、犬以下の扱いか。


「公爵令息の婚約者か。残念だが男爵令嬢が夢を見るにはあまりにも尊大だ。いい加減夢でしかなかったと気づくんだな」


 それについては同意見だ。公爵夫人から認めないと破棄される可能性が高いと思っていた。だが、公爵夫人二人からは破棄されなかった。公爵様とはまだ目通りができていないが、なんとなく嫁二人の方が意見力は強そうだと思っている。


「……その夢が叶った場合、男爵家に何の利益もないとお気づきになられたようですね」


 声を潜めると、少し話しやすくなった。


 今回、婚約破棄になっても私が支払う額は少なく、もらう額は多い。だが、それは男爵家の臨時収入にはならない。そして、貯水池の水をただで作ってくれる私も回収できない。


「ああ、今回で懲りた。どうやらお前に自由を与え過ぎたとな。だから、今後は婚約などさせずに大事に飼ってやることにした」


 足に乗っていた手が、上に行く。下腹部をへその辺りを撫でられ寒気がした。


「世間知らずの令息を誑かしたように、兄まで誘惑し、その上子を孕んでしまっては……、婚約破棄をするしか道はないだろうなぁ」


「っ!」


 下卑た笑みに、魔法を使おうとした時、体が跳ねた。


 足がしびれたような感覚を更に強くしたものが全身に内臓にまで届くような感覚がして、息ができない。


「ふっ、ははは。兄に対して魔法を使おうとしたのか? これは、相当に教育が必要だな」


 そう言うと、容赦のない平手で頬を殴られた。その痛みで息の仕方を思い出す。


 今回の誘拐は、貯水池に水を貯めさせるためだけではない。


 兄に対しては親愛も尊敬も家族愛もなく、ただ借金を背負わされるような感覚だった。だが、腹違いでも兄妹だと全てを断ち切ることはできないと思っていた。


 だが、もういい。


 自分の魔力が全身を走り回った所為か、はっきりと、そう思った。


 これはもう、ただのゴミでしかないのだ。


「私生児の分際で、これまでどれだけ手間をかけて育ててやったと思っている。それを仇で返した上に、自分だけが幸せになれると思っていたのか」


 男が何かを喚いているが、聞いて価値があることはなさそうなので無視することにした。


 魔法が使えない。


 これは、とても困る。


 ずっと気分が悪かったが、眠らせるための薬か何かの副作用かと思ったが、魔法封じの近くにいると感じたあれに似ている。あれよりもさらに気持ちが悪い。


 ベッドかどこかに仕込まれているかの。可能性として高いのは首枷か。


 魔法は反動があった。次はゆっくりと体内に魔力を作る。


 吐き気が増したがさっきのような反発はない。


「お前が産んだ餓鬼ならば、魔力くらいは持っているだろう」


 そういうと、無抵抗になった私の体を無遠慮な手が這いだした。


 ナメクジを体に乗せられたとて、ここまで気持ち悪くはならなかっただろう。


 罵ってやりたいが、今は自分の反抗心を満たすよりもすべきことがある。


「娘が産まれたら、どこかの貴族の愛妾用として高く売れるだろう。男なら、異国へ奴隷として売るか」


 全身の感覚を確かめる。


「……」


 魔法封じはそれを中心に円を描くように作用する。効果はほぼ同じだが、その効果範囲を超えると、途端に効果は薄くなる。


 魔法の発現に対して効果があるものだ。魔力を消すものではない。


「諦めたのか? 初めから大人しく言うことを聞いていればいいものを。まあ……今更だ。ちゃんと孕めるよう、時間はたっぷりと用意してある」


 手が、脚に戻ってくる。


 なるべく、足先を伸ばす。顔を背けて怯えるように震えておく。寒くて体が震えるだけだが、違いなど分かるまい。


 あとは、機会がいつ来るか。相手の口上ではなく、肌に触れる感覚を研ぎ澄ます。失敗すれば、二度目のチャンスはない。


 今の姿勢から変えられてしまえば、勝ち目はなくなる。


「子を何人か産んだ後は、娼婦として客を取らせてやろう。若くないからな。値段は二束三文だろうが、物好きもいるだろう。お前の元婚約者たちを客に取らせてやろう。向こうも懐かしいだろうから……あがっ」


 ばちっと言う音と共に小さく奇妙な悲鳴を上げ、男が黙った。


 軽く反発しただけならば、私の人生はこのゲスが言うような末路かもしれない。恐る恐る確認すると、男は足に乗りかかるように倒れていた。


 成功した。


 足先に手が行った時に、魔力を流したのだ。


 素肌が触れ合う場から、電流が流れるように、相手へ一気に魔力を押し流した。


 最初は他の場所で魔力が流せないかと試そうかと思った。それができれば、威力が少なくとも私に障ることはできなくできる。だが、一番威力が出せるのは効果範囲外の足先だと確信はあった。だから、じっと耐えたのだ。


「はぁ……」


 足は少しだけ動かせる範囲があるので、重いそれを押しのける。そのついでに、もう一度魔力を流しておく。


 もっと反発が来るかと思ったが、少し気持ち悪さが増すだけで済んだ。いつ目が覚めるか未知数なので、起きた時にもう一発食らわせる位置に置いておこうとしたが、ベッドに全身の一部しか乗っていなかったからか、邪魔だと押しのけたのが悪かったのか、それはずるりとベッドの下に落ちた。


「……」


 それを見て、時間制限が不明になったと目を瞑る。


 元婚約者が、私を御するために、魔法を使えるものを雇ってきたことがある。折檻として私に魔力を流そうとしたら、反対に負けて相手が失神した。あの時は開かない瓶のふたを開けようとする時くらいに力を込めたが、今回はゆるゆるの蓋だった。あまりにも抵抗が低くて、思った以上に威力が出た。


 最悪、死んでいるかもしれない。死んでくれていたら、制限時間は多少伸びるのでありがたい。





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