48 ロベリア・カーディナリス公爵令嬢
ソレイユ公爵家から流れてくる情報はどれも役に立たないものばかりになってしまいました。
三大大公と呼ばれる公爵家の中で、カーディナリス公爵家と肩を並べられるのはソレイユ家だけでした。残念ながら、格上である王族の、王太子は年下で最近発見された聖女が婚約者と定められてしまったので、望みは薄いです。
不幸中の幸いで、ソレイユ公爵家には歳の近い跡取りの令息がおります。
夏にはわたくしと婚約のはずでした。
「ロベリア、どうだ、侯爵家の跡取りで、顔もいいし、背も高い」
お父様とお母様がお見合いのお写真や絵画をずらりと並べます。
当たり前ですが、どれも公爵家には劣ります。
どうして女は公爵家を継げないのでしょう。そうでなければ弟ではなくわたくしが公爵家を継げました。もし弟がいなくても、叔父様の息子が継ぐことになるだけです。
どうすれば公爵家を継げるのかと昔聞いたら、国への貢献が認められた場合は可能性があると返されました。
わたくしの美しさはそれだけで国に貢献していると思うのです。
「わたくし、レオン様以外は考えられませんわ。もしくはミモザ様のように他国の王族に嫁ぐのでも我慢いたしますわ」
「ソレイユ家からは正式な断りがあった。婚約者が決まったことは知っているだろう」
もちろん存じております。
レオン様がどこかの男爵夫人を支援して披露目会をするというので伺いました。とても斬新な服でしたし、物によってはわたくしも購入は吝かではありませんでした。二回目の下級貴族向けの披露目で、下品に足を見せた衣装の女性を婚約者だと公表したとお茶会で伺いました。
「準男爵の女性なのですから、第二夫人にしていただいて、わたくしが第一夫人になればよろしいではありませんか」
準男爵は正式な貴族でもありません。そんな方が公爵家の者と呼ばれるなど、同じ公爵家の娘として恥ずかしくて仕方ありません。
現に、上級貴族に対しての場ではそれについて公言をしなかったくらいですから、レオン様もおわかりなのでしょう。
「ロエム伯爵家が逮捕されたのは聞いているだろう。なんでも婚約者の準男爵を害したからという理由らしい。アスフォディア伯爵令嬢は精神を病んで病院に収容されたという。お前に何かあってほしくないのだ。だからソレイユ家のことは諦めてくれ」
「アスフォディアさんは、少し前から頭がおかしくなっておりましたわ。レオン様とは運命の方だとか、婚約すると茶会で嘘ばかり言って、皆さま呆れていましたもの」
その時点では、私が婚約する可能性が一番高かったというのに図々しい。
「もし、結婚しても、夫人の座はきっとすぐに空きますわ。そうした時、わたくしが既に別の殿方と結婚していたとなれば、レオン様は困ってしまいますでしょう」
「ロベリアちゃん、でも、あなただってもう二十歳でしょう? そろそろ本当に婚約先を見つけないと、いい条件の相手がいなくなってしまうわ」
私が十五になる前から、ずっと、ソレイユ家には婚約の打診をしてきました。余程恥ずかしがりなのだと思っていましたが、五年も待たされるとは思ってもおりませんでした。
「わたくし、知っているのです」
確かに、二十を超えての婚約は不名誉ですが、公爵家以外に降りるよりはましです。
「その婚約者と言う方、跡継ぎが産めない体ですわ」
ソレイユ公爵家で働いていたメイドを内密に雇い情報を得ていました。彼の趣味や好きなものを少し伺っていただけです。
レオン様が婚約者を連れてきたと報告が来て、すぐに薬を渡させました。
卵巣を腐らせる薬です。もし、結婚した相手に愛人や第二夫人が迎えられたら、それを与えなさいと、おばあ様から渡されていた秘伝のものです。
そのメイドとは連絡が途絶えたと連絡がありました。
捕まったとしても依頼主が私だとは知りません。連絡が途絶えたとわかった時点で、連絡係も処理してもらっています。別のソレイユ家の侍従から、メイドが無作法をして罰を受けていると聞きました。ばれたということは、その準男爵の体に異常が出て状況もわかっているでしょう。
「お父様は常々仰られていたではないですか。跡継ぎを産めぬ時点で妻失格だと」
なら、私が新しい婚約者になれるはずでしょう。
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