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102 怪しい出店


 宝石店で元婚約者に会った後、数日が経った。やはりすぐの謁見はできないようだ。王との謁見ともなればそれが普通だろう。レオンが王太子ならば話は別だが、あくまでも他国の公爵令息でしかない。


 暇なので、街歩きをすることにした。レオン抜きで。


「メイド服なのに、警護がいるのはどうなのかしら」


「メイド服で出かけなければいいのでは?」


 ザクロに白い目で見られる。


「思ったんですよ。あの宝石店、私が公爵家の婚約者として出向いていなかったら、あそこまで平謝りをしていたのだろうかと……」


 ソレイユ家のレオンとその婚約者が行くと知らせていたから、私が出てきて焦って最大級の謝罪をしたのだろう。普通の客だったら、あそこまでの対応どころか、ここまで追いかけてきたのかと門前払いをされていたかもしれない。


 流石に、今更行ってももう立場がばれているので結果はわからないが、街について知るならば、平民として見る方がいい。


 なのでメイド服を一枚借りて外出をしている。


 ひとりで出かけるほど馬鹿ではないのでレオンには外出する旨を伝えた。ザクロもつれているし、他にも侍従の恰好をした護衛がついている。


 貴族街と平民街の境程度までしか流石に出歩きはしない。それでも観察できることは多い。


 何よりも、礼儀作法を気にせず食べ歩きができる。


「リラ様は、一人の方がのびのびとされていますが、やはりレオン様とのご婚約は不本意なのですか」


 一緒に食べ歩き、もとい毒見をしていたザクロが聞く。警護は万が一のためにと食べ歩きはしないらしい。まあ、最悪私を担いででも逃げなければならないので、可哀そうだが仕方ない。


 一応同じ格好なので、いつもの一歩後ろではなく今日は隣に歩く距離だからか、少し踏み込んだ質問をされた。


「……レオン様といると、ものすごく気を使われているのがわかるので、こちらもやはり気を使うし。気にせずふらふらするほうが楽しいのは否定できないわ」


 串焼きを食べながら、瓶のエールを飲む。正直謝らなければならないだろう、公爵家のメイド服で昼間から酒を飲んですみませんと。


「まあ、わからなくはないです。外でこうして食べるのが、おいしいですから」


 ザクロが納得する。リリアン様ともこんなお出かけをしたいが、流石にできない。彼女の不自由さを考えると申し訳なく思ってしまう。


「今度王宮の庭で、炭火焼きを申請してみましょう」


 リリアン様の名前は出さない方がいいかと口にしないが、ザクロが理解したように頷いた。


「すごく怒られそうですが、いい案だと思います」


 宝石店があった場所はかなりの高級店街だったが、今は中級階層向けの街だ。普通におしゃれな店もあるが一部は露店だ。


 周りを観察する限り、食材なども豊富に売っているし、生活に困るような雰囲気はない。ただ、歩いている人の数は、首都の割に少ないと感じる。


 最後の肉を食べて串を手ごろなゴミ場に捨てる。牛の心臓をそぎ切りにして、ピーナッツを使ったソースで食べるものだったが、香辛料も独特で食べたことのないものだがおいしかった。エールは軽い口当たりのもので、それともよくあっていた。


 食べ終わると、街歩きを再開する。一本通りだが、高級街から離れるごとに店構えが質素になっていた。そろそろこれ以上は行かない方がいいだろうと考えていたころ、一つの露店に不思議と目が行った。他の店と違って、地べたにぼろ布を広げた露店だ。露店と言うか、浮浪者が石を売っていると表現した方が正しい。


 不思議に思ったのは、他の店は露店でもしっかりとした作りをしているのだが、これでは店とも言えない。他にこの形態がないので普通は警備兵に撤去されるのではないだろうか。だが、近くを警備兵が何度か通っていたが、ないものの様に無視していた。


 この辺りに来ると警備兵が目に付くようになり出したなと、ふと思う。宝石店などは店で警備を雇っているのでむしろ国の警備兵をあまり見なかった。


 近くに行くと、ぼろ布をまとった男がいた。顔はよく見えないが、体格はよさそうだ。


「……」


 並べられた石は、どれも土なんかで汚れていた。それでもその隙間からきらりと何かが光っている。鉱山直売かと言いたい。せめて土くらいは洗って売ればいいものを。


「おじょうちゃん、安くしとくよ」


 わざとらしく低くした声で言われる。


「……」


 なんとなく気になって、ひときわ汚れた石に手を伸ばす。汚れているところを指でこすると、澄んだ色に変わった。


「?」


 ジワリと、汚れ以外の部分がほぼ透明の水色に変化していく。


「あ……すみません。これのお代を支払います」


 魔力が多いものが、魔法石に触れてはいけないと言われたのを思い出す。色が変わったことから、私の魔力が影響を与えてしまったようだ。


 商品を使用したことになるので、多少ぽったくられても代金を払わないといけない。後、魔法石なら国外には持ち出せないし申請もしないといけないか……。


 もしかしたら、こういう悪徳商法だったのかもしれない。不用意に触った私が悪いのだが。


「代金だけで、購入は」


 賠償だけして、買い取らない方が後々面倒にならないだろうかと考えていると、腕を掴まれ、その腕をザクロが掴んだ。


「その手を離しなさい」


「……ばあさんが言っていたのは本当だったのか」


 男は気にせず呟いた。足音がしてあたりに視線を向けると、周辺をうろついていた警備兵だけでなく、十人近くの兵が出てきた。


 ぼったくり現場を抑えるためだったのかとも思ったが、視線が私に向いている。なんとなく嫌な感じだ。


 私の警護は二人とザクロの計三人しかいない。


「お前には、ついて来てもらう」


 フードから見えた黒い瞳が獣のように光って見えた。


「……ついていきません」


 ちょっと露店の石を見ていただけでこんな扱いなのかと思いながら、腕の角度を変えて掴まれていた手を離させ、走り出す。


 他の警護達もそれについてくる。無論、追われるので魔法を展開して水の障壁を作った。


 別の街路地からも衛兵か何かが出てきたがそれも塞き止めてひたすらに走る。


 密売のおとり捜査でもしていたのか。別に怪しい薬ならぬ怪しい石を買うために見ていたわけではない。なんとなく、気になって見に行っただけだ。


 ただ、捕まってしまったら色々と面倒になる。こういう時は外交特権のある大使館に逃げ込むべきだ。




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