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10 公爵家


 目が覚めたら、心配そうな女の子がこちらを覗いていた。ああ、クララと名乗った女の子だ。


「体調は大丈夫ですか?」


 聞こえたのは男の声だ。視線を向けると派手な金髪が見えた。


「……えーっと」


 名前、なんだったっけ……。


「ああ、レオン・ソレイユ様?」


 名前を思い出したが、どういう状況かわからずに首を傾げた。


「覚えていませんか? ライラック男爵から、死にかけるような魔法の強要をされていたことを」


 私の中のレオン・ソレイユという男は、どこか情けない雰囲気の残念な男だったが、何やら機嫌が悪い。


 彼が公爵家だとわかったのはエールをぶっかけた後で、それはもう酔いが醒めたが、無礼だと怒られることも嫌味を言われることもなかった。


 その態度に多少留飲が下りたものだ。


 シーモア卿に泣きついた時も、終始丁寧で協力的だったが、本性は違ったのか。


「死ぬようなって……いつものことです。水を満たせば解放される可能性が高かったので今回までは協力したまでです。それに、水がないと困るのは領民ですし」


 私が水を満たすようになってから、明らかに収穫量が増え、安定している。今後男爵家への手助けはしたくないが、領民が飢えてもいいとは言えない。少ない食事だったとはいえ、領民たちの収めた税金で食べてきたのだ。


「魔法で出した水など、所詮は数日に消えてしまうものでしょう」


 まるで子供に教えるように言われてしまうが首を傾げた。


「何をおっしゃっているのですか。再度蒸発させれば消えますが、作った水が消えるわけないでしょう」


 むしろ、魔法で作った水は、農地に入り、田畑を潤すときになってようやく土に染み込む。日照りが続いても、蒸発せずに水量が保たれるものだ。


「……いつもあのような事を強要されていたのですか」


 魔法理論について言い合うのはあきらめたらしい。まあ、他の属性については知らないことが普通だ。別に言い負かしたいわけではない。


「強要というか。実家での仕事、貴族の娘に産まれたお役目の一つです」


 領地が富めば金を得て、貧しくなれば身銭を切って領民を助けなければならない。恩恵が少ないからと、義務が免除されるわけではない。だから、領地がない準男爵位を与えてもらったのだ。


「……あなたが、準男爵を得た理由はわかりました。ここまで、虐げられているとは考えておりませんでした」


 何やらまだ機嫌が悪いようだ。クララを探したが、少し離れた位置でうるうるしているだけで役に立ちそうにない。


「アルフレッド男爵とは、公的書記官立ち合いの元、婚約書の変更を行いました」


「婚約破棄ができたということですね。お手数をかけますが、帰りの馬車に乗せてもらうことはできますか? 御者席で十分ですから」


 ここから首都は遠い。馬車を借りるにしても金がかかるし、安全に旅することを考えると女の一人旅は色々と大変だ。財布も持ってきていないので、実家から逃げてもお金がないので慌てて逃走を計画しなかったのだ。


「いいえ、婚約破棄はしていません」


「へ?」


 間抜けな声が出てしまった。


「リラ殿には、正式な婚約者として公爵家に来ていただきました」


「はい?」


 それでようやく、ここが実家ではないと気づいた。


 自室ではないと思っていたが、本館のどこかの部屋だと思ったのだ。何せ新館には入ることがほとんどなかったからどんな部屋があるのかも知らない。


「でも、クララがいるじゃないですか」


 ここが実家ではないと判断したのに、否定したくてそんなことを言った。


「あなたの居場所を教えてくれましたが、その所為でクビになったので一先ず連れてきました。別の仕事先を斡旋してもいいですし、このままあなたの専属メイドにしてもかまいません」


「………それは、気が利いた判断をしていただいたようで」


 経緯はわからないが、メイドの今後にすら気にかけてくれたのはありがたい。無論、性根の悪い相手はどうでもいいが、心が優しい相手が無碍にされるのは見ていて気持ちのいいものではない。


「目覚めたばかりです。詳しい話は後にしましょう」


 そういうと、男は出て行ってしまった。残された私は呆然とするしかない。




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