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漫画剣士バキとスクランブルハンター  作者: ゼルダのりょーご
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一章…025 【地震のワケ】


 フレリッドが父親の死を悼み、なおも魔法スキルの研究で在りし日の願いに応えようとした結果が、ジキルという此度の魔物を異界より飛び入れてしまった。

 

 魔物の新個体が一種この地に舞い降りただけで国が壊滅的ダメージを負った。

 その責は紛れもなくフレリッド王子にある。


 その折に世界的遺産である『女神の宝玉(ルーン)』が消失し、大地震を招いた。

 その宝玉は行方知れずに。

 ジキルの日記を読み解けば向こうの世界に飲み込まれたというのが正解だ。


 単なる雑兵だったジキルがその背に翼を開花させたのもルーンの力に触れた恩恵かもしれない。だが別の雑兵たちは光の柱に浄化されるように消え去ったという。

 ならば元よりジキルは目覚めの手前にいた神童種だった可能性もあるが。


 なんにせよ、その手の者が女神のルーンの力の恩恵によりこれからも魔界のどこかで目覚めて行くのなら恐るべし軍勢がいつか向こうから通路(ゲート)を開き、侵攻して来ないかが懸念される。


 フレリッドが嘆くのもこのポイントでもあるだろう。



「王子様……その地震の原因がこのことによるものだと確信されているのはどうしてなのですか?」


 頭を抱えていたバキが疑問符を投げかけた。

 ルクはバキを一瞥して「わしもそれが気になっていました」と。

 その問いはルクも抱いていて、同時にルクには心当たりもあると涼しい目が物語っていたがそれは王子に語ってもらおうと耳を傾けた。


 フレリッドは話を続ける。



「あれは私が城に帰った直後に起こりました。私は怖いぐらいの何かを直感したのです。ことの次第を詳しく調べるためにフェスタークの学者たちの所に向かったのですが──


 しかし──無いのです!


 フェスタークに続く道も、フェスタークという世界そのものさえ見当たらず、目の前は一面に海が広がっているだけでした!」


 

 クロニクル国からフェスターク国へ行くには草原のエクスダッシュ国を越えて森林を抜けた先に見える港まで出る必要があった。


 鳥や飛行系魔族は地上の障害物をものともせずどこへでも行けるがフレリッドにはそれがない。フェスタークへの道がなかったため仕方なくクロニクルへと舞い戻ったがかなりの時間を費やしてしまう。



「その間、ジキルが自国で暴れ回っていることを知らずにいた。ようやくともしびの町サクレノに立ち寄った。長老に話を聞くとこの魔人の塔を随分と気にかけていた……」


「あぁ確かに長老さんは危険な場所であると話していたね」


「長老が気にしていたのは恐らく『女神の宝玉(ルーン)』の心配だったのじゃろう」


「ここには古くから世界の象徴である『ルーン』と呼ばれる神の秘宝がある。


 そなたらの国エクスダッシュと魔族の王が治めるヤーバン共和国を含めた世界がゲートオブクロニクル地方。魔族魔法の研究者が多く輩出されたフェスターク地方。いにしえの謎の多き地ラストサン。


 三つの世界の最果てにそれぞれあるとされる女神の『ルーン』の神秘的な力の加護で全世界の空間のバランスを整え支えてくれていると聞く……」



 空間のバランス?……バキは小難しい話は苦手だとルクの目をじとっと見る。

 ルクが無知なバキのために言葉を添える。



「つまり『ルーン』はいつも均等な位置になければならない。もしもこの『ルーン』に何かあれば世界に大事が生じるということなのじゃ」


「それじゃ、王子様……そのフェスターク地方が消えて海しかなかったって話は…すでに大異変なのですか?」


 

 フレリッドは額から滴り落ちる汗を袖で拭い、頷いた。

 さらにフレリッドが目を細めて言葉を付け加えてきた。



「私はこう考えているのだ。消えたのはフェスターク地方のほうではなく、このゲートオブクロニクル地方なのだと!」


 

 さすがにルクも、フレリッドのいまの発言には意表をつかれた。

 バキはさらに混乱で頭を掻きむしった。



「いいかね? 『ルーン』が消失したのはクロニクルの物だ。『ルーン』が安泰の他の地方に何かあるのは不自然なことなのだ。おそらく、いにしえの地であるラストサンもこの地からは見えなくなっているだろうな……」


「そっちなのか? そう発想には至らなかったのう。……まさか我々の世界が切り取られる形でもとの大陸から消失しておったとはのう」


「俺たちのクロニクル地方が『ルーン』の加護を失くしてどこかに移動させられたから地響きが起こったってことなのかよ……」



 青ざめた表情でフレリッドがふたりに聞かせたことがこの地に起きた真実の出来事のようだ。



「このまま放置すれば、この地上は徐々に崩壊していくしかなくなる……」



 これが彼のいう地震のワケだったのだ。

 国の世継ぎなどと浮かれていて良いはずがないとバキもルクも納得せざるを得なかった。


 いかに彼の失態が招いたせいであり、それを露知らずだったにせよ「英雄」だなどと軽はずみに持ち上げたことがバキの胸をいまさら締め付ける。


 フレリッドの心中を察すれば地獄であり、万死に値すると言い出しかねない。

 王族は元来、責任感が強い。

 だが自決は困る。



「王子様……お気持ちも察せずに俺……酷いことを言ってしまって…」



 フレリッドは国の有事によくぞ駆けつけてくれた若き剣士に礼を尽くした。

 そしてバキを抱き寄せ、抱擁し、「どうか謝らないでくれ」と耳元でつぶやいた。

 フレリッドの泣きたい気持ちがバキにも痛いほど伝わってきた。


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