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宝剣道中  作者: 紫神川悠
31/55

第九章 鎮魂舞踏 参

 一夜明け、オウメイは龍神の池のほとりにいた。


 龍神の池も周囲の森も穏やかで、時折吹く風に思い出したように小波が立ち枝葉が揺れる程度。いつもどおりといえばいつもどおりの風景。まるで、昨晩の狂気の宴など無かったかのように。


 そんないつもどおりの風景の中で、唯一違っていたのは龍神を祀る祠だった。


 名を鉄冠子仙人と偽り村人達を惑わせたモウエンによって小さな祠は破壊され、祀り上げる龍を奈落へと貶める祭壇を立てたのだ。


 その祭壇も昨夜のうちに破壊された。今あるのは新たに作られた祠。


 オウメイは静かに祠の前に跪く。もはやこの村での日課となっている朝の礼拝。


 目の前の祠は、元々あった祠よりも遥かに簡素な代物。悪い夢から覚めた村人達が昨晩のうちに作ったものだ。


 それでも、オウメイはその祠に満足していた。


 奇跡のような舞を見て、龍神様にもお目通りが叶った。その喜びの心を込めて村長を始めとした村人達が総出で作った祠だ。とても大きな思いが詰まった祠だ。少々見栄えが悪いのはご愛嬌というもの。祈りを捧げる事になんの支障もありはしない。


 オウメイは穏やかな笑みを浮かべ、目を閉じて祠へ一礼する。


(あーあー、ウチの祠が……一晩で随分と粗末なものになってしもたなぁ)


 不意にオウメイの胸の内から、彼女のものではない声が響く。祈りへと集中しかけていたオウメイは、その声に眉根を寄せた。


(そんな事言わないでよ、樂葉。せっかくみんなが一生懸命作った祠なのに)


 内心抗議の声を上げながらオウメイが目を開けて見据えたのは、この池に住まう龍葉鱗后樂葉を祀る祠ではなく自分の首飾り。彼女の視線の先では、薄緑色の玉が朝陽の中で煌めいていた。


 昨晩、我を忘れたトウコウの邪気と、森を覆う瘴気を浄化した鎮魂の舞。滞り無く舞い終えたオウメイの傍らからは樂葉の姿が消え、樂葉布さえも無くなっていた。役目を終えて池の底へと戻ってしまったのかと別れを惜しんでいたオウメイの首に、翌朝目覚めた時にかかっていたのがこの龍玉の首飾りだった。


(それを言うなら、元あった祠かて当時の村のモンが一生懸命作った祠なんやで? ウチが別れを惜しむのもわかるやろ?)


 樂葉にそう言われてオウメイが返答に窮する。そんな彼女の困り顔が心の内から見えたのか、樂葉がカラカラと笑う。


(悪かったね、オウメイ。ちょっとばかり意地の悪い事を言うてしもた。これはこれでウチも気に入った。あったかい思いが、ぎょうさん詰まっとるんやから……)


 からかわれた。何か言い返してやろうと思ったオウメイだが、村人達の祠を褒められて悪い気はしない。気を取り直して祠へと頭を下げる。


(それにしても、昨日はお疲れ様やったね、オウメイ)


 そんなオウメイに、樂葉が再び語りかけてきた。


(そんな。アタシ一人の力じゃ何もできなかったと思う。みんながいたから、アタシも頑張れたんだよ)


 それは謙遜でもなんでもない。オウメイの正直な気持ちだった。


 樂葉がいなければ自分は池の底で死んでいた。目覚めた村人達の手拍子が自分の舞を高めてくれた。リクスウは最後の最後で妖魔を倒して皆を救ってくれた。なにより、タイコウが最後まで諦めずに一緒に戦ってくれた。


 どれか一つ欠けても、今の自分は無い。


(特にタイコウにはお礼を言わなきゃ。あんなにフラフラになりながら、何度も立ち上がってくれて……)


(それかて、オウメイのおかげやで。アンタがいんかったら、あの坊は一度たりとも立ち上がれんかったわ)


(そ、そんなことは無いと思うけど)


(大有りや。魅了のお香が見せる夢から坊を起こしたのはオウメイ。モウエンと戦っている最中に気を失った坊を起こしたのもオウメイ。それと、鎮魂の舞を舞う時に坊を起こしたのもオウメイ。な? 確かにオウメイが一役も二役も買ってるやろ?)


(それは……)


 反論しようとして言葉に詰まる。確かに樂葉が言うとおりだ。そして同時に、オウメイはそれだけタイコウに無理強いをしたとも言える。


 言い返すことを諦め、再び祈りを捧げようとしたオウメイ。だが、今度は自らの内に湧いた疑問に祈りを中断した。


(私、そんなにタイコウを助けたかしら……?)


 モウエンが持っていた香炉の罠からタイコウを救ったのはわかる。魯智を彼に託し、神子唄によって傷も癒した。鎮魂の舞の時も、初めて神子舞を完成させタイコウの気を奮い立たせたのもオウメイだ。


 では、先程樂葉が言っていたモウエンとの戦いの最中の事は……?


(そらアンタ。あの坊と口吸いしたやろ。あの時にオウメイの気が坊に注がれたんよ)


(くち……!)


 サラリと答える樂葉に、オウメイは驚いて目を見開く。そして見る見る顔を赤らめる。


 そういえばあの時オウメイはタイコウと口づけを交わした。今思えば、なんでそんな事をしてしまったのか。


 寝顔が可愛かったから、つい……。戯れに。悪戯心で。出来心で。どれも当てはまるようで微妙に噛み合わない。


(それは、その……確かにしたわよ! したけど! でも、ちょっとチュッてしただけで! それでタイコウの気力が戻るなんて、聞いたことないわよ!)


(え? 知らんかったん?)


 しどろもどろで弁明するオウメイに、樂葉はさも意外だと言いたげに返す。


(相性とかあるし確実なわけやないけど、口移しで気を循環させられるんやで。なんの違和感も無くやっとったから、ウチはてっきりオウメイが知ってるものやと……)


(聞いてない! 教わってない! 実家の口伝にそんな技法は無い!)


 力強く否定する。


 ふとした思い付きの行動に、それほどの力があったとは思いもしなかった事である。


(そうなん? いやー、状況が状況とは言え、なかなか大胆な子やなぁと感心してたんやけど、違ったん? それやったら、なんで坊と……)


(あー! あーあー! 樂葉、アタシはお祈りがあるので、その話はまた今度!)


 勢いだけで強引に話を逸らし、今日何度目かの祈りの姿勢をとるオウメイ。その胸中に樂葉の深い溜息が響いた。


(何がお祈りやの、オウメイ……。形ばっかで気ィ散らしまくってるやないの)


「はい! お祈りおしまい!」


(早ッ!)


 祈り始めて数秒。オウメイは立ち上がると、気恥ずかしい記憶から逃れるように、祠に背を向けた。


「さ、行きましょう。待たせちゃ悪いわ」


 心のうちにいる樂葉にそう呼びかけたオウメイは、思い出したように祠へと振り返り深く一礼。そして、オウメイは改めて村に向かって走り出した。


(それで、さっきの坊との口吸いの事やけど……)


「五月蝿い、樂葉! それと、タイコウを坊と呼ばない!」


 樂葉との口論を続けながら……。




「ックシュン!」


 カコ医師の家の一室。旅の荷造りを行っていたタイコウのくしゃみに、リクスウは眉根を寄せた。


「おいおい、今度はお前が病気になったのか?」


「いや、そんな気配は全然無いんだけど」


「勘弁してくれよ。おまえまで寝込んだら、また旅が滞っちまう」


「昨日まで寝込んでいた人に言われたくないなぁ」


 言いながら自分の額に手を当ててみるタイコウ。掌に伝わる自分の体温は、別段高くも低くもなし。


「噂でもされていたのかな……」


 そんな青年の呟きを、リクスウが耳ざとく聞き逃さなかった。


「何! まさかリホウちゃんか、この恋泥棒め!」


「誰が噂しているかなんて、わかるわけがないじゃないか! それと、恋泥棒は誤解だってば!」


 隻眼の青年の冗談なのか本気なのかわからない抗議を、タイコウはむきになりながら否定した。


(リホウより、どちらかと言えば……)


 そんなタイコウの頭に一瞬誰かの笑顔が浮かんだ瞬間、彼の思考はリクスウによって止められる。


「とりあえず病じゃねぇってんならいいさ。早いところ旅路に戻ろう」


 リクスウの口から出た言葉に、今度はタイコウが表情を曇らせる。


「リクスウ。まだ、昨日の事を気にしているの?」


 タイコウは自分の脳裏に誰がよぎったのかを忘れ、目の前の仲間の様子へと思いを巡らせた。


 今は無き部族コウハ族の末裔である彼に取り憑いたトウコウの霊。部族を滅ぼされた恨みを纏い、虎の相を持つコウハの族長。


 妖魔の力を糧に復讐を成さんと暴走するトウコウ。一時的にとは言え、リクスウは彼に意識を乗っ取られた事を悔やんでいた。


「気にすんなってほうが無理だろ、ありゃあ」


 苦笑いを浮かべながら言い返すリクスウの横顔は、いつもの覇気にかけている。


 意識を失っていたとは言っても、リクスウは夢うつつにトウコウのしでかした事を覚えていた。今回はタイコウとオウメイによってトウコウの霊は落ち着きを取り戻したが、いつまた祖先の恨みに火が点くかわかったものではない。そうなれば、今度こそ傷つける事になるかもしれない。


 例えば、今もリクスウを心配そうに見ている仲間タイコウを……。


「……なぁ、タイコウ」


 リクスウは何度か躊躇った後、意を決するとタイコウに声をかけた。


「何? どうしたの?」


「俺達、ここで別れるか」


「はぁ?」


 唐突なリクスウの提案に、タイコウは思わず聞き返してしまう。


「昨日の一件でわかったろ? 俺に憑いているトウコウは凶暴なんだよ。これから先も、いつ何時コイツが暴れ出すかわからねぇ。暴れりゃ、敵も見方も見境無しに傷付ける。下手すりゃ、おまえを殺しちまうかもしれねぇんだぞ。俺は……そんなの嫌だ」


 早口でまくし立てるように言葉を並べたリクスウは、そこまで言うとタイコウから視線を逸らして押し黙った。


 黙ったままのリクスウは、タイコウの答えを待つ。


 沈黙が部屋を包む。なかなか返ってこないタイコウの言葉に、焦れたリクスウが彼を見る。タイコウもまた、リクスウを黙って見ていた。


 その表情はトウコウを恐れるものではなく、虎霊に悩まされる仲間を励ますものでもない。ただただ呆れたと言わんばかりの顔が、リクスウの前にあった。


「何を言い出すかと思えば。リクスウは大事な事を忘れているよ」


 目が合ってからもしばらく黙っていたタイコウは、そう言って溜息を吐く。


「リクスウは師匠の雪割りが認めた使用者だ。そして、僕は雪割りを都に運ぶように言われている。一緒に行くのは当然だろう?」


「いや、だからって……」


 反論しようとするリクスウを、タイコウが手を上げて制する。


「トウコウが暴れた時は驚いたけど、僕とオウメイはそれを止められた。これからも、何度だって止めて見せるさ」


「しかし……」


 なおも食い下がるリクスウだったが、タイコウは話はそれまでだとばかりに視線を荷物へと戻した。


「それに、暴走というなら、僕はリクスウので慣れちゃったよ……」


 荷造りを再開しながらタイコウがボソリと呟く。


 そんな戯言にリクスウは呆気に取られ、やがて笑い出した。


「アハハハハ、暴れ癖はコウハ族の血筋だってか! 全く、まーったく、言ってくれるじゃねぇか、タイコウ!」


「たまには言い返さないと、リクスウとはやっていけないからね」


 タイコウは邪気の無い笑顔に笑い返して見せる。


 二人して笑いあう部屋の戸が遠慮がちに叩かれた。入室を請う音にタイコウとリクスウ双方が返事をすると、医師見習いのハクタ少年がひょっこりと顔を出す。


「いらっしゃいましたよ。お二人とも準備はお済みですか?」


 ハクタの言葉にタイコウは魯智を掴んで頷き、リクスウは雪割りを携えて荷袋を担ぎ上げた。


「ヨッシャ、行くかタイコウ」


「そうだね、リクスウ」


 二人してカコ医師の家を出る。玄関を抜けた二人を待っていたのも同じく二人。


「すっかり良くなったな」


 旅支度を終えたリクスウの姿にカコ医師が告げると、リクスウはニカッと笑って見せる。


「おう、世話になったな」


 その血色の良い表情にカコ医師は満足げな笑みを浮かべた。


(カコ先生の笑った顔、初めて見た……)


 カコ医師の世話になってからというもの終始彼の仏頂面を見ていたタイコウは、意外そうな顔で笑い会う二人を見比べる。だが、いつまでもそうしてはいられないと思い出し、待っていたもう一人へと顔を向けた。


「ゴメン。お待たせ、オウメイ」


 タイコウに声をかけられ、オウメイは慌てて青年へと向き直った。向き直る前の視線はタイコウと同じカコ医師。それも、タイコウと同じような顔で。よほどカコ医師が笑う姿は珍しいらしい。


「大丈夫、待ってないよ。今来たところなんだから」


 そう言ってタイコウに笑い返すオウメイ。タイコウは彼女の笑顔とは対照的に、その表情を曇らせた。


「オウメイ。本当にいいの?」


 言葉少なの問いかけ。だが、タイコウの質問はオウメイには充分に理解できるものだった。昨晩から幾度と無く彼から問われてきた事だ。オウメイは表情こそ膨れっ面に変わったが、この問いに対する彼女の答えは決して変わりはしない。


「もう、しつこいよ、タイコウ。これからはアタシも二人に付いていく。タイコウだって昨日許してくれたじゃないの」


「それは、まあ……」


 オウメイに言い返され、タイコウは頭をかいた。


 昨晩、龍神の池での騒動が終わってからのこと。オウメイはタイコウとリクスウに同道を願い出てきた。


 最初は二人共渋面を作ったものの、何度も頼み込む彼女にまずリクスウが折れ、ついにはタイコウも彼女の熱意に負けたのである。


「うん、そうだった」


 そして、オウメイの真剣な顔に見つめられたタイコウは改めて負けた。


「これからもよろしくね、オウメイ」


 一度認めた事であり、旅の友が増えるのは嬉しい。それが、決して安全ではない旅になるとしても……。いや、危険だからこそ仲間の存在が心強い。


「うん!」


 差し出されたタイコウの手を、オウメイは満面の笑みを浮かべて握り返した。


 そして、握手を交わす二人の手の上に、第三者の手がポンと置かれる。驚いて手の主へと目を向けたタイコウとオウメイ。その二人の視線を受けて、リクスウはニヤリと笑みを浮かべてみせた。


「さてさて、御両人。和んでいるところ悪いが、出発しようじゃねぇか」


 それが、新たな旅の始まりの合図。


 カコ医師とハクタ少年に礼を言うと、三人は村の出口へと歩き出す。


「そういやぁ、タイコウ。俺に稽古をつけてくれって言ってたが、どうする? なんなら今からでもやるか?」


 村の出口が見え始めた頃、リクスウが腰に下げた雪割りに手を添えて言い出した。


「今すぐってのは、ちょっと……」


 隣を歩くタイコウが困ったような顔を見せると、リクスウはそれもそうかと思い直して歩みを進める。


「しっかしわからねぇな、タイコウ。喧嘩沙汰は嫌がってたくせに、今になって俺に師事を請うとはよ」


「喧嘩はやっぱり嫌だよ。でも、今回の事で思ったんだ。いつまでも魯智にばかり頼っていちゃダメだって。魯智が無くても自分の身を守れるようにならなくちゃ」


 リクスウの問いに答えるタイコウ。その手に握られていた錫杖魯智が鳴らした金輪の音はタイコウに同意するものか、はたまた否定するものか。


「へぇ、そいつは殊勝な心がけだ。全く、まーったく、感心すらぁ」


「僕は僕として、リクスウも稽古は他人事じゃないでしょ。ちゃんとオウメイに教えてもらわなきゃダメだよ」


 からかうように言うリクスウにタイコウが返すと、リクスウはハクタ少年の薬草茶を飲んだような複雑な顔になる。


「うへぇ。俺、稽古だの修行だのって、そういうの苦手なんだよなぁ」


 心底嫌そうにぼやくリクスウ。オウメイは彼のその様子にクスクスと笑みをこぼした。


 タイコウがリクスウに戦い方を習う。それは昨夜、オウメイが同道するかどうか話し合った際に出てきた話だった。


 そして、同時にリクスウに与えられた課題が、オウメイから気の扱いを学ぶというもの。無論、トウコウの暴走を少しでも抑えられるようにする為である。


「大丈夫よ。慣れてしまえば難しい事じゃない……と、思うから」


 最後の言葉に、リクスウの表情に不安の色が増す。


「お手柔らかにたのむぜ、オウメイ先生」


 強気なリクスウにしては珍しい気弱な声が洩れ、それを遮るかのようにタイコウがオウメイの前へと進み出た。


「オウメイ、みっちり教えてやって」


「任せて、タイコウ」


「だー! 二対一とは卑怯だぞ、おまえら!」


 悪戯っぽい笑みを浮かべるタイコウとオウメイに、抗議の声を上げるリクスウ。


(やれやれ、賑やかな奴らやなぁ……)


 そんな呆れた様子の声がオウメイの意識に響く。オウメイはその声に誘われるように、自分の胸元で揺れている龍玉の首飾りを見つめた。


(樂葉、こういう賑やかなのは嫌い?)


(そんなわけあるかいな。陽気はウチの好物や。オウメイの故郷の桃園を見るまでは、この坊達との旅を楽しませてもらおうかね)


 樂葉のカカと笑う声がオウメイの内に響き渡る。


 これもまた昨晩のうちの事だが、故郷の桃園を見せるという約束で樂葉の力を借りたオウメイは、樂葉に故郷への帰還の先延ばしを頼んだのである。


 断られるかもしれない。そんなオウメイの心配を樂葉は軽く笑い飛ばした。


(ウチはオウメイが気に入ったし、世情も少しは理解した。オウメイ、心配せんでも桃源の約束を守ってくれる限り、ウチはアンタと一緒やよ。道草も一興やないか)


 そう言って龍の貴人はオウメイの頼みを快諾してくれた。そして、オウメイは改めて盟友に誓った。いつか必ず故郷の桃園を見せると。


「おーい、オウメイ? ぼさっとしてると置いてくぞー!」


「どうしたのー? 忘れ物ー?」


 山間の道にリクスウとタイコウの呼び声が木霊し、オウメイはハッとして首飾りから視線を上げる。


 樂葉と話すうちに歩みが止まっていたようで、彼等は随分と先に進んでしまっていた。


「ごめーん! 今行くよー!」


 新たにそんな木霊を響かせ、オウメイは慌てて二人に追いつくように駆け出す。


 旅は道連れ。新たな仲間を加えたタイコウの旅はまだ半ばである。


~次回予告、リクスウ語り~


龍の樂葉を盟友にしたオウメイを仲間に加え、俺達の旅はまだまだ続く。

とは言っても、旅ってのも金がかかるもの。

立ち寄った村ゼンギョウでオウメイは野良仕事、タイコウは本職の鍛冶仕事。

そして、俺は……平和な村にゃ用心棒はいらねぇのよ。

オウメイに課せられた鍛錬に勤しむ俺の前に、身の丈もある剣を背負った男が現れ……誰コイツ?



勤勉上等、労働万歳。働かざるは食う無かれ。

暇持て余すはエセ道士、その隻眼が見た者は。

三大道士の一人現る。


次回『第十章 大剣道士』に乞うご期待!


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