私のランドセル
バギボギバキグチャグチャグチャグチャゴクン!
私のランドセルがイジメっ子のタケシ君を食べ終えた。
「美味しかった?」
ランドセルに聞いても返事なんて返って来ない、でも、赤いランドセルの赤みが増したように思う。
此のランドセルは小学校に入学する数日前、弟が生まれたあと弟だけを可愛がる両親に放っておかれ、ランドセルも買って貰えずにいた私を見兼ねた近所の小母さんからの頂きもの。
「何時から仕舞われていたのか分からないけど、蔵を整理してたら出てきたランドセル、捨てるのも勿体ないからあんたにやるよ」
って言いながら近所の小母さんに渡された。
頂いたランドセルが化け物だと知ったのは、小学校の通学路で帰宅途中、野良犬に襲われそうになった時。
飛び掛かって来た野良犬をパクンと頬張り飲み込んだ。
最初は私を助けてくれたのかって思ったけど、違った。
ランドセルはランドセル自身を害する相手を食べてしまう。
野良犬はランドセルに噛みつこうとして食べられ、イジメっ子のタケシ君は私を棒で殴ろうとして目測を誤り、ランドセルを殴って食べられた。
その他にも、ランドセルに落書きしようとしたミドリコちゃんや、ゴミを放り込もうとしたヒナタちゃんも食べられる。
だから私は弟から両親を取り返す事を計画し実行した。
弟は私が両親から疎まれているのを知ってから色々意地悪して来る。
それを逆手に、弟の目につく所に私のランドセルを置いておく。
当然弟はランドセルを蹴り飛ばす。
そしてランドセルに食われた。
これで両親は、弟が生まれる前のように私を可愛がってくれる筈だわ。
アハハハハハハハ…………
パクン!
え? 私もランドセルに飲み込まれた。
バギボキバキグチャグチャグチャグチャ
えええー?
ランドセルに咀嚼されながら私は考える。
何故、私もランドセルに食われなくちゃならないの?
飲み込まれる寸前、理解した。
態と弟に蹴られるようなところにランドセル置いた私も、ランドセルに害を成す敵と見做されたのだと。
ゴクン!