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このヒロイン実は驚くほど美人です?

 結城実ゆうき・みのり、16才はとても困っていた。

 自分は異世界に聖女として召喚されたみたいなのだけれど、なかなか話が進まないのだ。


 例えば、今もやりとりしてるこのように……、


「えっと……それで私は何をすれば良いのでしょうか?」


 困ってしまってみのりが笑うと、大きな広間で聖女の召喚陣を囲んでいた人がビクッと震える。


「そう、無関係な者たちの為に何もしたくない気持ちはわかります! そこは聖女様のご慈悲でもって何とぞ!」


 白い髭を生やした賢そうなお爺さんが叫んだ。


「そんな大変な事をしなくてはならないのですか?」


 みのりが驚いて聞き返すと、


「いや、それは人それぞれと申しますか、なんというか。そうだ! とりあえずは聖女様歓迎の宴を開くというのはどうだ?」

「そうだそうだ! 聖女様は我らの為に異世界から来てくださったのだからまずは存分にもてなすべきだ!」

「それでは、聖女様。我らは宴の準備で忙しいため、御前失礼します!」


 などと口々に叫んで、髭の人やら眼鏡の人やら大勢がごっそり居なくなってしまう。


「あっ、ちょ、まっ!」


 みのりが「ちょっと待って」と引き留めても、おじさんやおじいさん達は駆け足でいなくなった。


「行っちゃった……」


 みのりはしょぼんとしてから、気を取り直し近くにいたメイド服を着た女の人たちに話しかける。


「私、聖女として異世界に来たんですよね?」


 話しかけられた女の人達は、ピョーンと床から10センチくらい飛び上がった後、平伏した。


 あ、ジャンピング土下座だ……。

 みのりはそんな土下座を初めてみた。

 というかもちろん普通の女子高生であるので、土下座されるのは初めてだった。


「とてもとても恐れながら申し上げます。聖女様の尊いご質問にはこの低い身分の私どもは、荷が重い事でございます。何とぞお許しを!」

「私共、聖女様のお泊まりになるお部屋を誠に勝手ながら整えて参ります」


 メイド服を着た女の人たちは口々にそういいながら居なくなった。

 土下座しながら後退りするという高度なテクニックを披露して。


「あの!」


 人が次々居なくなる事態に耐えかねたみのりが、更に鎧を着た男の人に声をかけると、


「聖女様を警備する計画を今一度確認してまいります!」

「私などは今一度、身体を鍛えて参ります!」

「聖女様と同じ空気を吸うのが恐れ多いため扉の外で警備します!」


 など叫んで、やはり散っていった。


 しかし、最後に一人だけみのりと同じかやや年下くらいの少年が残っていた。

 何故か紙袋に手を突っ込んでクッキーを食べている。


 みのりはダメ元で少年に声をかける。


「ねぇ、私、聖女として召喚されたんだよね?」

「ん、そだよ……バリバリモグモグ……」


 すごい勢いでクッキーを食べている少年は、予想に反してみのりに返事をした。

 みのりは返事が返ってきた事に勇気づけられる。


「私は何をすればいいの?」

「モグモグ……御輿に乗って各地を回るんじゃなかったかな。聖女がいる所が浄化されるから」

「そっ、そうなんだ!」


 ようやく自分が異世界から召喚された目的が分かった。

 みのりはホッと息をつく。


「あなたはなんでクッキー食べてるの?」

「俺は超側室の子だけど、一応王族だから居ろって言われた。クッキーやるから立ってろって」

「わぁ……」


 みのりは、自分を召喚した異世界のアバウトさにドン引きした。


「モグモグ……、今までいた人達に王様とか大臣とか居たよ」

「そうなんだ……、それはそうと私は聖女の仕事やったら帰れるのかな?」


 みのりは日頃ライトノベルをよく読むので、聖女召喚は受け入れていた。問題は帰れるかどうかだ。


「モグモグ……それはもちろん。宝を持たされて同じ時間に帰れるよ」

「良かった……」

「当たり前でしょ」


 みのりの心に安心が広がる。


 それにしても、少年の持ってる紙袋のクッキーは量が多すぎないだろうか。

 クッキー少年はよく見ると美少年でもあるのに。

 みのりはなんだかおかしくなって笑った。


「助かったわ、クッキー少年。イケメンなのに、不思議な人ね」

「聖女様もね。異世界から召喚した聖女様がこんなに威圧感がすごい美人だと思わなかった。怒られて、神の怒りで大変な事になるかと実は俺、ちょっとちびってる」

「え、ちょっ、ちょっと。着替えたら」

「俺は割とこの国どうでもいいから、ここに居る」

「そ、そうなんだ」

「すごい美人で迫力ありすぎの聖女様。この国どうでもいいけど、礼儀として言うね。来てくれてありがとう。召喚してごめんなさい」


 クッキー少年はみのりに頭を下げた。


 美人とかお世辞がすごいのは気になるが、みのりは不思議とクッキー少年との会話で落ち着いてきた。


「……うん」


 まあ、召喚っていわゆる誘拐だものね。


「信じてないみたいだけど、この仮面とかつけて皆と話してみなよ。スムーズにいくと思うよ」

「え、マジ?」

「うん、マジ」


 実際、みのりがクッキー少年に渡された顔半分の仮面(クローゼットに入っていたらしい)を付けると、あら不思議。みのりは異世界の人とコミュニケーションがスムーズにいくようになったのだった。

 何故だ、日本で平々凡々の平たい顔なのに。


 ーーー


 ークッキー少年視点ー


 異世界からきた聖女は、驚くほど神々しく美人過ぎて人間離れしていた。

 口を開くと言葉の一つ一つに威圧感があり、自分以外の人が広間から消えた。

 本人は分かってないようで、元の世界では普通の平たい顔だと言われた。それが普通の顔なんて元の世界は神の国なのかもしれない。


 俺はパニックになり過ぎて、クッキーを口に運びつつチビっていた。何を自分が喋っているかもよく分からなかった。


 そんな俺にも聖女様は慈悲深く接してくれたのだ。

 あまりにも気さくで俺に微笑んでくれさえした。


 俺は聖女様に一生ついて行こうと思う。

※日本からきた人は特別に美形に見えている。異世界人は皆、彫りが深い顔。

あらすじを聞いてもらった人にジャンルを聞いたらコメディと言われたからコメディにしました。


読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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↓代表作です。良かったら読んでくださると嬉しいです。

「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」

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