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妖怪マニアの転生ギルド生活 その3  作者: 音喜多子平
ギルドミッション:ストレンジポックス
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5-6


 とは言えどもカウォンたちの協力も相まって無事にギベル商店街からも無事に寄付を募ることができた。アルルの方も自分の本拠地での仕事だったのでつつがなく担当店を全て周ることができたようだった。


 尤も戻ってきた時にできていた人だかりには「な、何があったの?」と唖然としていたが。


 突如勃発した握手会とやらの開催を夜の19時と仮に決定させた俺達は人ごみを掻き分けながら商店街を抜けだした。それでもやはり何人かは追いかけてきていたので、すぐさま狼と化したアルルの背中にみんなで乗り込んでその場を後にした。


「それでこれからどうするんですの?」


 風で乱れた髪を掻き上げながらコッコロが俺に尋ねてくる。


「とりあえずリーゼ記念公園に行こう。ナグワーが色々な使用許可を申請しててくれたはずだから…けど」

「けど?」

「許可が下りてなかったらどうしよう」


 正直行き当たりばったりばかりで、公園の使用許可が下りなかっただけで全てが瓦解してしまう。しかしそんな心配をする俺をよそ目に『カカラスマ座』の面々があっけらかんとして言う。


「ゲリラでやっちまえばいいじゃん」

「そうじゃな」

「というかちゃんと許可取って偉いね」

「ええ…」


 普段の三人の活動が垣間見えるような発言だった。そういう事をするから規則とか治安を気にしてる『サモン議会』とか『ナゴルデム団』から反感買うんだろうなぁ。


 するとキーキアが突如として立ち上がり、ハーピィ特有の腕翼を広げた。


「公園の許可はさておき、『カカラスマ座』には事の成り行きを説明しないとね。アタシが行ってくるから、また後で会いましょう」

「すみません、キーキア様にそんな役回りを…」

「ふふ、いいって事よ。カウォンが新人に戻って頑張ってんだから、アタシもね」

「うむ。謙虚さはむしろ儂らベテランにこそ必要じゃ」


 キーキアはカウォンの言葉を鼻で笑うとバサっという羽音を立てながら空高く飛んでいった。


 そうして彼女を見送った後、俺達はすぐにリーゼ記念公園に辿り着く。するとナグワーが『ナゴルデム団』の数名を率いて小屋を建てる用の敷地の確保と、それに伴った交通整理をしているのが目に入った。


 すると向こうも狼になったアルルの姿に気が付いたようで、遠巻きに敬礼を飛ばしてきた。


「お待ちしておりました。リーゼ記念公園の一部の使用許可とそれに伴う交通整理の許可を頂き、独断でスペースの保持をしていたであります。確保する面積はこの程度でよろしいでしょうか?」

「十分すぎるくらいだよ。ありがとう」

「ナグワー・ニードーニ…噂通りお堅そうな方ですねぇ」


 聞こえるか聞こえないか微妙な大きさでコッコロの声が聞こえてきた。俺は咳ばらいを一つ入れて彼女を少しだけ牽制した。ケンカのような厄介な事態になっては困ると言う考えもあったが、部外者に『中立の家』に集ってくれたみんなのことを揶揄されるのが何となく面白くなかった。


 俺は十分な敷地とその使用許可が取れたことを確認すると、すぐに次の作戦に移る事にした。つまりは小屋の製作と茄子の購入だ。効率を図るためにも二手に別れたいところだけど…と考えたところで考えるまでもない事に気が付いた。小さいとは言え家を作るのに必要なのは木材だ。運べる人材などは限られている。


「それじゃあアルルとナグワーは俺と一緒に小屋を建てるための木材を買いに行こう。カウォンとコッコロは茄子を買いに行って。二人で持てるくらいの量でいいから」

「は? な、ナス?」

「…やはり冗談の類いではなかったか」


 カウォンは心底呆れた様な顔をした。


「カウォン様。茄子ってどういうことですか?」

「うむ。件のウシウチボーとやらを倒すためには茄子を用意する必要があるらしい。とっと買い出しに行くぞ」

「か、買い出し…? あの『カカラスマ座』のカウォン・ケイスシスに茄子の買い出しを?」

「だって茄子か大量の木材かのどっちかを買いに行かなきゃならないんだもん」

「しかもナチュラルに私までパシリに使おうとしてるよね??」

「いやならここに待機しててもいいよ。その分カウォンの負担が増えるけど」

「なぁ!? 私がカウォン様に買い出しさせておきながら大人しく待っているわけないでしょう? カウォン様の分まで私が持ちます!」

「うん。じゃあよろしく」


 俺がうまい事コッコロを丸め込むとその奥に実に愉快そうに笑うカウォンと少し意外そうな顔をしたアルルとナグワーの姿があった。


 確かに俺としてもコッコロ程のギルド員にこんな態度を取れたのは意外だった。


 やがて初めてのお使いに張り切る妹のようなコッコロとそれを見守る姉のような様相になった二人はどこから取り出したとも知れぬ帽子とサングラスを被って近くのスーパーマーケットへと消えていった。


 それを見届けた後、俺はアルルとナグワーを率いて小屋を建てるための材料を買いに行った。二人の運搬力は『中立の家』の中でも随一だ。それはいつかの事務所移転の時に確認済みの事だった。


読んで頂きありがとうございます。


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