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そして場面は『グライダー』事件を解決し、『中立の家』に帰ってきたヲルカ達一行の元へと戻る。
門を通り調査隊が戻ってきたことは『中立の家』で待機していた六人にベルで伝わった。各々が部屋がから出て出迎えのためにエントランスに集合する。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
待ち構えていた六人は消耗しきっているヲルカ達を見て、やはり驚きの顔を見せた。長いギルド生活の中でお互いにいけ好かないと思ってはいるものの、同時に厄介さとしてその実力を認めてもいる。
各人がギルドの重鎮として認められる実力者たち。そんな彼女らの満身創痍の姿を見るとウィアードの脅威さに改めて不安が募ってしまう。そして同時にそのウィアードに対抗できる手段を有しているヲルカの価値を再認識した。
とは言えそれを悟らせるように動く彼女たちではなかった。
◇
「こりゃあまた…前回に引き続き凄いな」
「全くもって不甲斐ない。ウィアードが相手では、手も足も出せん…」
「本当に。ヲルカ君がいなかったらどうなっていた事か」
いや、今日ばかりはチームを組んで良かったと俺は思った。機動性が段違いなんだもの。ウィアード対策室もこんな感じでやっていければよかったのになぁ。アレの失敗原因は多分人を集め過ぎた事だろうな…いや、やっぱりギルドの仲が良くないせいだな。
まあ、今はそんな事はどうでもいい。
皆には早くゆっくりもらわないと。
「とりあえず今日、手伝ってくれたみんなは休んでよ。」
「ヲルカは大丈夫なのか?」
「うん。すこし疲れたけど、みんなで色々と調べてくれたんでしょ? そっちの話も聞きたいし」
「…底なしだな」
そうして今日の調査に同行してくれた四人と別れ、会議室に移動用とした矢先。オレは自分の中に芽生えた感覚に驚き、声を上げた。
「うわ!」
俺が一番後ろにいたせいで必然的にみんなの背中に向かって大声を出す形になってしまった。全員がびくっと反応し、何事かという視線を俺に向けてくる。
「あ、ごめん」
「びっくりした~」
「急に年相応のガキっぽい事すんなよ」
「違うよ。今日、捕まえた新しいウィアードがいるんだけど、今変な感覚が出てきて」
「え? 大丈夫なのヲルカ」
「ちょっと待ってて」
そう言って心配のこもった二十の瞳の視線が集中する…くそ、やっぱりみんな顔立ちが良いな。緊張する。
俺は目をつぶって自分の中に芽生えた感覚を更に探る。そしてその正体が分かった途端、オレの身体は空中に浮かび上がった。
「え?」
全員が同じような声を出したのに、何故かサーシャの声だけが一番耳に届いた。
「どういう事だ、ヲルカ殿。それもウィアードの力なのか?」
「そうみたい。ここに戻った途端に変な感覚があってさ。どうやら『屋根のあるところ』でならこうやって浮かべるみたい」
「なんと…」
するとタネモネとハヴァの二人が同じようにフワリと浮かび上がった。エントランスの天井は開けているので三人が浮かび上がったところで狭くはない。
「やはり不可思議であるな。浮遊などは魔法をもってしても実現ができないというにこうもあっさりと」
「ヲルカ様。空中浮遊のご気分は如何ですか?」
「めちゃくちゃ楽しいね、これ。ただもう少し練習が必要かも」
「その時は是非仰ってください。空中浮遊の先輩として手ほどき致しますよ」
「それはいい。我も教授しよう」
「うん。その時はお願いしようかな」
そうか。こうやって条件が揃うと覚醒する能力もあるのか…妖怪って奥が深いな。
ひょっとしたら既に捕まえている妖怪たちも何かの条件が嵌れば新しい能力に目覚めることがあるかもしれない。
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