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【トロールVSマッチョ】

___【マナリア森林】【トロール洞窟】


トロールに食べられそうになったエローナは間一髪でトラインに助けられた。トロール達も突然の出来事に困惑する

「本当にここに来て正解だった。お前が俺をトロールって言うからな…トロールがどんな〝筋肉〟を持っているんだろうかと、興味本位で来てみたんだ…」



エローナは本当に運が良かった。トラインの興味本位に救われたのである

「あれ?あんた…カリンダちゃんはどこにやったの?」

カリンダの姿が無いことにエローナは心配する


「大丈夫だ。カリンダは安全な場所に待機してる。トロールだけ拝んだらすぐ戻るとは言ってあるが…多分もう少し時間が掛かるだろうな…」

トロール達は一人のマッチョの出現に動揺する。対してエリート・トロールは冷静であった。そんなトロール達をトラインはまじまじと見つめる


「なるほど。これが噂のトロールか…」

トラインは麻痺で動けないエローナに話しかける

「エローナお前…マジか?嘘だろおい…」

「え?…ナニが?」

「なにが……じゃねぇーよ!!!」


トラインが突如、筋肉を膨張させ上半身の服を木っ端微塵にし、巨大なマッチョの肉体が露わにした


「え!?なに!?なんで裸になったの!?てかっ服が破れてるんですけど!!?!?」

「何の話もあるかっ!!この俺の肉体とコイツらトロール達の肉体!!全然似てねぇじゃねーか!!!」

トロールは巨体ではあるが、体の部位に沢山の脂肪を蓄えており、とてもマッチョには見えない外見であった


同時にトラインの予想外の発言にエローナは動揺する

「アンタ…!こんな時に何言ってんのよ!?」

「だーかーらー!何が俺はトロールだ!!全然似ても似つかねーって!!!」

「そうじゃないわよ!!バカっ!!こんな状況で筋肉の話!?あんた本当に馬鹿じゃないの!?」

「筋肉の話をして悪いか!お前が俺を「トロールだトロールだ」て呼ぶから!凄い期待していたのに!!俺の期待を返してくれ!」


この状況で筋肉愛を見せるトラインにエローナは呆れてしまう

「あーあ!男って本当バカね!バカバカ!筋肉バカ!」

「うるせぇ!俺は筋肉を愛しているんだ!俺は脂肪をとにかく燃焼するために努力してるんだ!訂正しろ!俺がトロールってのを訂正しろ!」

「面倒くさ!!何よ!ちょっとカッコイイと思ってたのに台無しよ!この筋肉バカ!!!」


「え?カッコイイ?」

トラインは鼻の下を伸ばす

「ちょっと…照れてんじゃないわよ!?バカ!!」


トロール達を無視して喧嘩をしている二人に、一体のトロールの堪忍袋が切れる。一体のトロールがこちらに走り込んで、強烈な一撃をトラインにぶつけた


「コッチヲ…無視スンジャネェ!!!」


強烈な衝撃音が炸裂する




しかしトラインは無傷だ。いつものように筋肉に力をいれ、鋼の肉体に変えていた


「ナニ!?」


トラインはトロールの溝内目掛け、一発のパンチを繰り出す。トロールは強烈な痛みを受け倒れ込んで気絶する


それを見たエリート・トロールはトラインを感心する

「ほう、生身でトロールを気絶させるとは、中々やるな人間のオスよ」


エローナはトラインの強さに驚く

「あんた凄いじゃない!無駄に筋肉付けてるだけあるわ!」

「無駄は余計だ」


他のトロールがトラインを攻撃しようとするが、エリート・トロールが止める

「お前らは下がっていろ!この人間は俺様が直々に倒す!!」


トロール達を後ろに下がらせ、エリート・トロールがトラインの正面に立つ。その風格は他のトロールとはまるで違う


「あんたがリーダーってわけか」

「いかにも俺様が最強のトロール。〝エリート・トロール〟だ」


「なるほど、ひとつ提案があるんだがいいか?」

「なんだ?人間のオスよ」


「もう村や人を襲わないって約束してくれるか?もし約束するなら、俺達も手を引いてここから大人しく出ていくよ」


予想外の提案をするトラインにエローナは仰天する

「あ あんた!?何言ってんのよ!!本当にバカになっちゃったの!?相手はトロールよ!?」


トラインは冷静な顔で説明する

「俺は無闇に人を殺すつもりは無い。相手がトロールだとしてもな。トロールはその風貌や言動などから、歴史上多くの人間に迫害されてきたと聞いたことがある。彼らも事情があって悪事に染めたなら同情の余地はあるだろう?」


「そ それは…」

「今まで犯した悪事は許されないが、もう二度とやらないって言うなら、俺はアンタらに何もしない。どうだ?」

「あんた…本当にお人好しなのね…」


エリート・トロールは考える素振りも無く、トラインの申し出を断った

「それは無理だな」

「なぜだ?」

「なぜかって?それは俺たちが〝人間を殺す〟のが楽しいからだ!!」


「楽しい…だとッ!?」


エリート・トロールはトラインを嘲笑うかのように答える


「人間達は俺たちを舐めている。そんな奴らを絶望に落として殺す快感が楽しいのだ!俺様は最強のトロール!エリート・トロールだ!人間を楽しんで殺し、人間の宝を奪うのは【絶対強者】に許された特権!!貴様の余裕の態度も!この俺様がひねり潰してやる!」



トラインは落胆しため息を吐く

「はぁ…、じゃあこれからも人を襲うって言うのか?」

「そうだ!人をもっと殺して、奴らの宝も根こそぎ奪う!なぜなら俺様はエリートだからだ!!」


トラインは険しい顔をしトロールを睨みつける

「なるほどじゃあもうお互い後には引けねぇな」

「望むところだ人間ッ!ひねり潰してやるッ!!」





___ここにトロールとマッチョのタイマンが実現した。エリート・トロールの大きさはトラインの2倍ほどある。他のトロールとエローナは傍で見守っている


エリート・トロールは巨大な棍棒を手に取りトラインに前に対する。一方トラインは相も変わらず素手で挑もうとしていた

「クックック、人間のオスよ。お前は弱そうだ!他のトロールよりは強いかもしれんが、俺はお前よりも【100倍】は強い!」

「ほう…なぜそう言い切れる?」


「俺たちトロール族は脂肪を付ければ付けるほど強い証になる。お前のような体は、痩せていて弱そうだ!簡単に殺せる!」

「なるほどな…それがお前たちの価値観か…」

「そうだ!お前はもっと脂肪を付けた方が良かったな!まぁ今日でお前は死ぬから関係ない話だ!」

「俺は最初こそ、あんな事を言ったが別に他人の体に対して文句は言わねぇ。太ろうが痩せようが、それは本人の自由だし自由は尊重されるべきだ………だが」


トラインは息を大きく吸い込み【フロントラットスプレッド】を決める

「だがな!ここでは俺の【筋肉】とお前の【脂肪】!どちらが上か!白黒つかねぇと終われねぇようだ!!」

「舐めるな!この俺様こそ最強だ!!」


エリート・トロールは棍棒で強烈な一撃を繰り出す。トラインはすかさず避ける。トラインはエリート・トロールの動きが鈍いことに気がついた


「(脂肪のおかげで動きが鈍い!これはチャンスだ)」

トラインは全身の筋肉を使って強烈なパンチを繰り出す。見事にエリート・トロールの腹に炸裂した

「…やったか?」


だがエリート・トロールは顔色を変えない。それどころか余裕であった


「なんだと!?」

エリート・トロールが腹に力を入れると、脂肪がバネとなりトラインを吹っ飛ばす


「グッ!!」

なんとか受身を取るが、自分の攻撃が通用しないことを悟る


「攻撃を吸収して…さらに跳ね返すだと!?」

「そうだ!俺様の脂肪は強力な鎧だ!そしてどんな攻撃も跳ね返す!」


「(なるほど…このトロールは他のトロールとは違って脂肪の量も分厚い。今の俺の全力のパンチの衝撃ですら脂肪の弾力で中和してしまうんだ。俺も筋肉を硬くさせ一時的に防御力を上げているが、奴は常に完璧な鎧を身に纏ってるわけか)」


エリート・トロールはさらに棍棒を振りトラインに襲いかかる。トラインはエリート・トロールの背後に回り込み、掴み投げようとするがビクともしない

「くそっ!こいつ!そこらの岩石よりずっと重いぞ!!!」


すかさずトラインは下半身などを攻撃するが、これも通らない


「あぁ!そういうことか…こりゃ厄介だな…」


トラインはトロールの脂肪の下に大きな筋肉を隠し持っていることに気がつく


「(あれだけ重い脂肪を支えて動けるってことは…その脂肪の下には、強力な筋肉が備わってるはずだ…俺のようなトレーニングで身に着けた物とは違う。天然のマッスルってわけだ)」



さらに脂肪が付いてるため、エネルギーも蓄えられている。持久力からみても明らかに、トラインよりエリート・トロールの方が上であった


「どうだ?手も足も出ないだろう?俺様が最強だと言うことが分かったか?」

「あぁ…確かに強いな」

「お前ら人間がどんな攻撃をしようが、この俺様の脂肪でお前の攻撃を跳ね返す!お前に勝ち目はないという事だ!」


徐々に疲れを見せ始めたトラインは、ある事を危惧する。


「(もしここでまた…【オールアウト】を起こせば…体が動かなくなって、エローナ諸共、トロールの餌食になって終わる。カリンダも独りにさせてしまうだろう……)」


トラインは拳を強く握りしめる


「(カリンダを一人にする。それだけは絶対に避けなければならない!!!)」



エリート・トロールの攻撃をトラインは何とか避け続ける。しかし、傍から見ればトラインは手も足も出ない状態だ。他のトロールも逃げ惑うトラインをバカにするように嘲笑う

「弱キヤツ!早ク死ネ!!!」

「逃ゲ回ッテバッカ!雑魚ダナ!!」

「弱イ人間ハ踏ミ潰セ!!」


トラインは疲労がどんどん溜まる

「まずい…このまま避け続ければ、いずれ疲労が溜まりに溜まって【オールアウト】を起こすぞ…」


状況は絶望的だ、エローナもついに悲観し始める

「トライン、ごめんなさい…あんたまで巻き込む必要は無かったのに…」


エローナは憐れむようにトラインを見つめた








____だかしかし、トラインの目は死んでいなかった


「あのマッチョ目が死んでない…嘘でしょ?まだ諦めてないって言うの?」


そう、トラインはどれだけ絶望的な状況でも諦めない。エリート・トロールも、余裕の表情を崩さないトラインに徐々に苛立ってくる

「なぜだ!なぜ余裕を見せる!お前は俺様には勝てないのが分からないのか!?」

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…俺はな…」


トラインは疲労で息が乱れながらも、とても綺麗な【サイドチェスト】を披露した



__【サイドチェストとは大胸筋、三角筋、上腕二頭筋や三頭筋、大腿四頭筋や下腿三頭筋など…


全身の筋肉をバランス良く見せるポーズである


サイドチェストは肩や腕、胸や足など1つでも筋肉の発達が乱れていれば全体のバランスが崩れる、とても難しいポーズと言っても過言ではない


すなわち、綺麗で美しいサイドチェストとは、敵にもっとも効果的に筋肉を見せつける最高のポーズであり、全てのマッチョにとって〝希望の光〟でもあるのだ】



「筋肉を鍛えるって言うのはな!どんなに辛く絶望的な状況でも諦めないってことだぜ!トロールよ!死ぬまで俺は絶対に諦めないぜ!!」

「黙れぇ!!クソニンゲンガァ!!!」


激怒したエリート・トロールはトラインを挑発し始める

「雑魚の分際が!お前がどんなパンチをしても俺様の脂肪が跳ね返す!お前の弱わ弱わなパンチは【当たらない】も同然だ!!」



「ん?…|()()()()()?だと……?」


トラインはある事を思い出す。それはエローナとの出会いであった

「(確か…あいつも剣が当たらなかったよな?だからあいつは剣の勝負を一度諦めた。そうか!!その手があったかッ!!)」


トラインはエリート・トロールを倒す方法を閃い

「一か八か!やるしかねぇ!!」


突如、トラインはエリート・トロールの腹目掛けて突進し始める。エローナはトラインの不可解な行動に驚愕する

「ばか!何やってんの!あんた弾き飛ばされるわよ!!」

「クックック!馬鹿な人間よ!とうとう諦めたようだな!お前の筋肉諸共、この脂肪で吹き飛ばしてやる!!!」


トラインはエリート・トロールの腹に突っ込もうとする。同時にエリート・トロールも脂肪を押し出して、トラインを吹き飛ばそうと準備した

「トライン!危ない!!」


トラインはエリート・トロールの腹に両足を突っ込んだ。すかさず思い切りエリート・トロールの腹を蹴ると、まるでバネの様に上に弾いて、洞窟の天井までトラインは吹き飛ばされた


「ふっ!そのまま天井に突き刺さって死んでしまえ!!!」

「トライン!!いやぁ!!!!」


だがトラインは天井に足を付け着地する

「なに!?」


トラインはフルパワーで天井を蹴り弾いて、地面目掛けて急速に降下した





その降下先には…



エリート・トロールの頭があった

「トライン!?まさか!!」

「人間!!なにをする気だ!?」

トラインは片足を思い切り前に突き出す

「エローナが俺にやった、【あの技】だ!!喰らえ!!!」



エリート・トロールの脳天目掛け、強烈な【カカト落とし】が繰り出された。トラインは地面に勢いよく着地する

「どうだ…?」


エリート・トロールはトラインの一撃を直で頭上に受けた。致命的な一撃だったのは間違いない

「グッ…おのれ…にん…げん…め…」


エリートトロールは目が飛び出して吐血をし、フラフラとする

「俺の勝ちだな」


エリート・トロールはその場で思い切り倒れ込んだ。もう二度と起き上がることはないだろう

「どんな生物も…頭は弱点だ。もしお前に攻撃を避けようとする気が少しでもあれば、俺は負けていただろうな…」


トラインは倒れたエリート・トロールに向かって指を差す

「確かに…脂肪もひとつの武器になるのは十分に理解したぜ。だがお前は、その脂肪の完璧な鎧に過信し、攻撃を避けようとする意識が疎かになったんだぜ!」



エローナは倒れたエリート・トロールを眺める。エリート・トロールは本当に絶命していた

「勝った?嘘…本当に勝ったんだ、凄い…ッ!」




「俺タチノ…強キ者…負ケタ!?」

トロール達が困惑する。トラインはトロール達に喝を入れた


「いいかトロール共ッ!!もしまた村や人間たちを襲撃してみろ!!次はお前たちの脳天が飛ぶことになるぞ!!!」

「ヒッ!ユルシテ!」

「モウヤリマセン」


トロール達は洞窟を後にして全速力で逃げ去っていった。エローナも麻痺が弱まり、ヨロヨロと立ち上がる…

「あんた…一体何者なのよ…」


「俺か?俺は【筋肉が好きだけ】のただのマッチョさ」


エローナは不意に笑ってしまう

「ふっ…あんたほど変わってるバカ…初めてよ…」







____全てが終わり、トラインとエローナはカリンダと合流する。カリンダは心配そうに木の上で待っていた


「トライン!良かった…帰りが遅いから心配したの」

「あぁ悪かった…色々あってな…」


トラインはカリンダに事情を全て説明した

「そうなんだ…良かった…無事で。もしトラインが死んだらどうしようって思った…」

「安心しろ、俺は死なん」

トラインは笑顔でカリンダの頭を摩る。その様子をエローナは微笑ましそうに見る


「まるで親子みたいね」

しかし…



突然カリンダが怒りだした


「ト!トライン~!また服破ったの~!?」

「ご、ごめん!」


カリンダは手際のよい作業でボロボロになった服を縫い付ける

「全くもう、一緒に旅をしてから何度も服を破ってるの?全部私が縫ってあげてるだからね!筋肉を披露するのもいいけど、せめて服は脱いでね!」

「ご、ごめんなさい」

トラインは平謝りする


「(親子だと思ったけど、今度は夫婦のようね…)」



___エローナの案内でマナリア森林をしばらく歩いた一同は、最初の村【マナリアの村】に到着した


「む 村に着いた…トラインこれって…」

「あぁ!俺たちはスレーン王国を脱出したってことだ!」


そうここはもう【オルバニア帝国領土】である。この地に入れば、兵士や国から追われることも無い。ましてや獣人差別も無い。二人は喜び合う。カリンダは喜びすぎてピョンピョンと跳ねる。トラインは喜びの筋肉ポーズを沢山決める


「よっぽど嬉しいのね…私は村のギルドにトロールの件について報告するわ。あと仲間達の埋葬もお願いしてくる。あとスレイン王国ほどじゃないけど、いくらか謝礼金も出るはずよ。ここで待っていて」

「あぁ!ここで待っているよ!!」

トラインはポーズを決めながら答える





エローナは村のギルドに寄り、いくらかの謝礼金を受け取った

「思っていたよりも良い金額だったわね」


エローナがトラインの元へ戻ると、なぜか人集りが出来ていた

「なんだろう?人が沢山集まってるけど…何かあるのかな?」


エローナが人集りの注目する場所を見てみる





そこにはパンツ一丁のマッチョが次々のポーズを決めていた

「フン!これが【フロントダブルバイセップス】!上腕二頭筋を強調するポーズだ!フン!これが【フロントラットスプレッド】!背中を大きく見せるポーズだ!」


村人たちがトラインのマッチョを目を丸くして感心する

「すげぇ筋肉だな!ありゃオークみたいだ」

「いや…オークよりデカいぞありゃ」

「こんな筋肉が世の中におるとはな…」


端っこで静かに見守るカリンダにエローナが話しかける

「ねぇ?一体どうしたの?」

「…きっと久しぶりに筋肉を人に見せられて嬉しいんだと思う…」

「やっぱり変わってるのね…」



村人が感服する中、一人の男がトラインの筋肉を見て立ち止まる

「へぇーこんな場所にもマッチョがいるんだな」



その言葉をトラインは聞き逃さなかった

「おい君!今言ったことは本当か?俺以外にもマッチョがいるのか?」


「え?あぁいるよ。お前のようにデカい筋肉を持った人達がな」

「本当か!?どこにいるんだ!?」


「ここからかなり遠い場所だな。俺は商人で世界中を旅してるんだ。あれだったら地図で場所を描いてやるよ」

「あぁ!恩にきるよ!」


男が地図で場所を記す。トラインが礼を言うと、カリンダとエローナの元に行く


「カリンダ!次の行き先を決めたぞ!」

「え?どこに行くの?」


「筋肉の楽園【ゴールドマッスル】だ!」


「ゴールド??」

「本当にそんな場所があるわけ?」

「多分な…だが行ってみる価値はあるだろう!」


トラインは筋肉を大きく見せてアピールする


「俺はもっと強くならなきゃならない。今日だってトロールとギリギリの戦いだった!強くなるためには、同じような同志と出会って、もっと筋肉を強くする方法を伝授してもらうしかない!」


「あんた程の筋肉持ち…他にいないと思うけど?」

「わたしっトラインが行くなら着いてくっ!」


「ありがとうカリンダ」


「あんたらは気楽ね…私なんかパーティーが無くなって今日から無職よ…まぁ私ほどの剣術ならすぐにパーティーも見つかるだろうけどね」

「…それなら俺たちと一緒に旅をしないか?」

「え?旅?」


突然の申し出にエローナは戸惑う


「旅はとても危険だ。俺だけでカリンダを守り切れるか不安だし、仲間が多い方がやはり心強い…どうだ?」

「確かに仲間はもういないし…これからどうしようかなって思ったけど」


しばらく考え込んだエローナは答えを出す


「悪いけど遠慮しておく。私は旅をするって柄じゃ無いし…」

「そうか…それなら仕方ない」


「第一!常にゴリゴリのマッチョが隣にいるなんて不安で仕方ないわ!」

「なんだと!この筋肉の素晴らしさが分からんのか!!」


トラインの筋肉アピールは日が暮れるまで続いた。トライン達はその日、村の宿に泊まることにした



______________________________

【オルバニア帝国領土】【マナリアの村】【旅の宿】



部屋に隣接するお風呂場で、久しぶりに体を洗ったカリンダが出てくる

「気持ちよかった…」

「おぉカリンダ!大分綺麗になったな!」


「お風呂なんていつぶりだろう…まさか温かいシャワーが浴びれるなんて…凄い」

「あぁこの宿を紹介してくれたエローナに感謝だな!」


一方でエローナは別の部屋に宿泊していた


お風呂場でエローナをシャワーを浴びている。地下から組み上げた冷水は魔式道具の筒を通して温められ、温水になる仕組みだ


「一緒に旅か…」


エローナはトラインからの提案を考えていた

「私は常にギルドに所属して、仲間と共に戦ってきた。でもこれからどうするべきだろうか?同じようにギルドで仲間を探そうと思ってるけど…」


トラインのフロントダブルバイセップスが脳裏を過ぎる。それを考えないように頭を振った

「違う違う!私はあんな筋肉ダルマに惚れてるんじゃない!確かにカッコイイ所はあるけど、でも図々しくて…バカで…筋肉しか脳が無い……





___でもお人よしで…優しくて…」



エローナは迷っていた。共に行くかどうかを…しかしエローナはギルドの仕事で各地を行くことはあっても、世界を旅したことはない。なので旅をすることは不安で仕方なかった


すると突然 部屋のドアが叩かれる

「だ!だれ?」

「わ…わたしです…」


ドアを叩いたのはカリンダだった


「カリンダちゃん?ごめんね!いま私、裸なの…何かあった?」

「ううん…大した事じゃないんだけど、私達、明日の早朝には旅に出るの…」


「そ、そう…それは残念ね。まぁ別れは仕方ないけど」


「私…こんなこと言うのはあれだけど、エローナお姉ちゃんは…少しだけ信頼出来る」

「そ、そう?」

エローナは満更でもない顔を見せる


「うん…無理には言わないけど、もし来てくれるなら明日の早朝、村外れで少しだけ待ってるから…」

「そ、そう、お気遣いどうも!でも多分行かないと思うけど一応は考えてみる」

「うん…お休みなさい」

「…お休み」



カリンダはトラインのいる部屋に戻った

「どうだった?」

「考えてみるって…来てくれるかな?」

「まぁ彼女の自由さ…俺達が決めることじゃない」

「うん…そうだね」


灯りを消して二人は就寝する



エローナもベッドに入り、カリンダの提案に頭を抱えていた






______________________________

【オルバニア帝国領土】【マナリア森林】【マナリアの村】


時刻は早朝、天気は快晴であった。トライン達は村外れの丘にいた

「来ないね…」

「あぁそうだな」


いつまで経ってもエローナの来る気配はない。しばらく時間が経つとトラインが動き出す

「仕方がない。俺たちはもう行こう、旅は長いからな」

「うん…そうだね」


カリンダは落ち込で下を向きながら歩く。トラインはカリンダを励ますために歩きながらマッスルポーズをする


「どうだ!?ほらっ!明け方に筋トレをしたんだ!パンプアップしてるだろう!」



すると突然、前方の方から声が聞こえた

「本当に大きい筋肉ね。バカみたい」

「…ッ!?」


なんと目の前には荷物を背負ったエローナの姿があった

「エローナ?なんで!?」


エローナはトラインの元に近づき、顔に指を差す

「か!勘違いしないでよね!私は心配で来ただけよ!」


エローナはカリンダの方を向く

「だって幼い女の子がゴリゴリのマッチョと二人きりで旅だなんて!危なくて仕方がないわ!私が付いて監視しないと不安なのよ!」

「そ、それじゃあ…もしかして…」


エローナは腰に手を当てる

「えぇトライン!カリンダ!私も一緒について行くわ!






__この一流の剣士であるエロ―ナがね!」



カリンダとトラインはお互いの顔を見て頷いた

「エローナ!これからよろしくな!」

「よろしくお願いますっ」


「えぇ!よろしくね二人とも!」


こうして新たな仲間、エローナを迎えたトライン一行は次なる町へと旅立つ


目指すは筋肉の楽園【ゴールドマッスル】。果たしてトライン達はたどり着けるのか?ていうかそんな場所など本当にあるのか!?


旅はまだまだ始まったばかりであった

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