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【女剣士エローナ登場!】

【スレーン王国】の隣国【オルバニア帝国】はスレーン王国とは冷戦状態にあり、いつ戦争が起きてもおかしくない関係にある。獣人差別が無いオルバニア帝国は多数の獣人が逃げ延びる国であり、現在のトライン達もオルバニア帝国領土に向かっていた


ヌタの森を抜け、岩山を抜けた先にある【マナリア森林】はスレイン王国とオルバニア帝国の国境に位置する森林地帯であり、トライン達はそこで食料を調達していた



「マッチョォ!!パワァァァァ!!!!」

大きな掛け声と共に大木を揺らすトライン。木の上から果物が沢山落ちてくる

「凄い…」

「この果物は果肉たっぷりで食べ応えがあるぜ」

「マッチョ…パワー…マッチョ…パワー…」

トラインはリズムを取りながら山菜やキノコを取る

「凄いっみんな食べられるんだ!詳しいね!」

「俺は農家だからな!山の知識は詳しいんぜ!マッチョ…パワー…マッチョ…パワー…」


「マッチョチョチョチョ!!パッワワワワワ!」

トラインは掛け声と共に木を擦る。即座に火がつき、焚き火が出来上がった


「うむ…これで火も問題ないな!」

「(なんでいちいちマッチョパワーって言うんだろう…)」


トライン達は採った食料で料理を作っていた

【焼きキノコ】【山菜のスープ】【果物の実】


「あれ?トライン…その草は何?」

「これは念の為に取っておいた【薬草】だ。細かく磨り潰して傷口に塗れば回復を早められるし、煎じて飲めば、軽い毒などを中和することも出来る」

「へー…凄い…」


食事を終え、また長い旅路を始める

「広い森だね」

「あぁ、もう少し歩くことになるだろうな…だが森を抜ければ町があるようだ。その町はもうアルバニア領土だから安心のはずだ」

トラインは地図を確認しながら歩く___






___すると突然、頭上から女の声が聞こえてきた

「見つけたわよ!トロールめ!!」

声の方を振り向くと、木の上にエルフ族の女剣士がいた


「女?エルフのようだな…」

「ト トラインの知り合い?」

「いや、あんな女は知り合いにはいないな」


「トロールめッ!覚悟ッ!!」


女剣士は剣を抜くや、トラインに目掛けて攻撃をする。トラインも瞬時に避ける

「うわっ!」

「避けるな!」

「避けるに決まってるだろ!」


女剣士の素早い攻撃を次々とトラインはかわす

「カリンダ!遠くに避難しろ!」

「うっ…うん!」

カリンダは言われたままに遠くの物陰に隠れ様子を伺う。女剣士はしつこくトラインに剣を振るう



そしてそれを全てトラインは避けていた


「くそっ!素早いトロールめ!」

「まて!誤解だ!俺は人間だ!」

「嘘を付くな!人間がそんな筋肉を持っているか!馬鹿にするな!」


カリンダは袖でトラインを心配し戸惑っていた。トラインも剣を避けながら、あることに気がつく


「(あれこの女、もしかして…)」



何を思ったのか___




___トラインはその場を立ち尽くす、これでは女剣士にとって恰好の的であった

「観念したか!覚悟!」

女剣士は剣を振りまくるがトラインにかすりもしない



「すっ凄い!トラインは立ってるだけなのに…次々と剣を避けてる!」

カリンダはトラインの凄技に驚く


「なぜだ!なんで当たらない!!!」

女剣士は戸惑う。そしてトラインは確信した



「(やっぱりだ…この女…









___超弱い)」


そうトラインが避けてるのではなく、そもそも女剣士の剣が当たっていないのだ

「(この女剣士、剣の扱い方がまるでなってない。テキトウに剣を振れば子供でも当たるというのに、当たらないってもはや才能じゃ無いか…?


___てかっこの女!!目を瞑ったまま剣振ってやがる!ある意味危ねぇな!!)」



剣が当たらないことに苛立った女剣士は剣での攻撃を中断する

「くそっ!ならば必殺!【カカト落とし】だ!」


剣を地面に突き刺して高く飛んだ女剣士は、トラインの脳天に目掛けてカカト落としをする


トラインの筋肉が危険を察知したのか無意識で攻撃を避ける。相当な威力だったらしく着地した地面の衝撃も凄まじかった。もし頭に当たれば、トラインでも無事では済まない


「危ねぇぇ!剣士より武闘家の方が向いてるんじゃねーのか!?」

どんな生物も頭が弱点な事が多い。かかと落としはかなり厄介な物である


「クソっ!すばしっこいトロールめ!次こそは当てる!」

争いに見兼ねたカリンダは大声で二人に叫ぶ

「やめてください!喧嘩はダメです!」


女剣士はカリンダの方を向く

「なに!?てっきりトロールに誘拐された少女だと思ったが、貴様もトロールの仲間か!!」

女剣士は剣を振りながらカリンダに襲いかかろうとした。カリンダの安全のため、トラインはすかさず背中から手刀を食らわすと、女剣士はその場で気絶した





__気絶した女剣士を縄で拘束し様子を伺う。目が覚めて事情を聞こうとするも、まるで話が通じない


「離せ!くそっトロールめ!覚えてろ!」

「おいおい誤解だ…俺はオークに似てるとは言われるが、トロールと呼ばれたのは初めてだぞ」

「クッ…トロールめ…」

「話聞けよ!!」


「…私の体を好き勝手したいんだろ?」

「え?」

何を思ったのか女剣士は体をおっぴろげ始める


「さぁ!好きにするがいい!好きだけ犯せばいいだろ!でもな!どれだけ体が汚されようが!私の心までは汚されんぞ!!絶対にな!!!」


「こ…こいつ…」

トラインとカリンダは呆れるが、女剣士の目を見るや顔色が変わる


「トライン…これって」

「あぁこの女、目がおかしい…こりゃ毒にやられてるな」

「だからトラインをトロールだと誤解してるの?」

「そうかもしれんな」

「ねぇトライン。さっき採った薬草を使えない?」

「そうだな。無理やりでも飲ませるか」



煎じた薬草を飲ませてしばらく経った頃。どうやら薬草の効果が効いたようで女剣士も大人しくなる


「私はここで何を…」

正気に戻った女剣士は顔を見上げる。目の前のゴリゴリマッチョに仰天する

「ぎゃぁぁぁ!!!!トロールだぁぁぁぁ!!!」

「…トロール呼びは変わらないんだね」

「俺はトロールを見たことがないが、よっぽど凄い筋肉を持っているんだろうな…」



正気に戻った女剣士の縄をほどいて事情を伺うことにした

「申し訳ない…私は気が動転していたようだ」

女剣士はトライン達に謝罪の意を込めてお辞儀をする



「私は〝エローナ〟…剣士をしているわ。一応これでもギルド所属なの」

「そうか、俺はトラインだ、マッチョをしている。この子はカリンダだ」

「(マッチョって職業なのだろうか…?)」

カリンダはそう思いつつトラインの後ろに隠れて様子を伺う。カリンダを見たエローナは目をハートにする



「か…可愛いっ!そ それはお前の連れか!?モ…モフモフさせてくれないか!?」


カリンダは怯えてトラインの背中に隠れる。それをみてエローナはショックに落ちた


「わ、わたしは嫌われたのか!?なぁ!ねぇ!」

「い…いや、初めての人が怖いんだ、許してやってくれ」

「そうか…それならいいが…」


エローナはしょんぼりした




___「ところで…こんな森の奥で何をしてたんだ?」


改めてトラインはエローナから事情を聞く


「私か?私はトロール狩りをしにきたんだ、この周辺の村などでトロールによる襲撃が後を絶たなくてな。犠牲者も多い…」

「まさか一人でここに来たのか?」

「いや、小規模だがパーティーを組んでいる。しかし仲間とは気が付くとはぐれてしまったようだ。もしかしたら毒のせいで記憶が一部飛んでるのかもしれない…」


エローナはカリンダの方を見る

「そういえばその子は獣人でしょ?ここら辺はスレーン王国の国境の境目よ。こんな場所にいて大丈夫なの?」

「あぁ、俺たちは訳あって国を追われていてな。隣国のオルバニア帝国に逃げてる途中なんだ」

「国に追われた?まぁ深い話は聞かないでおくわ。私はトロール狩りの後でスレーン王国に金を貰いに行くの…助けてくれたお礼に謝礼金を渡そうと思ったけど…国を追われてるなら仕方がないわね…」



トラインはエルフがスレーン王国に行くことを疑問に思った

「まて…スレーン王国は亜人差別が酷い国だろ?そんな場所で亜人が仕事をして大丈夫なのか?」

「あぁ結構勘違いされてるけど、私たちエルフ族やドワーフ族などは、魔法ではなく自然に体の性質が変わった種族なの」

「自然に…?」

「そうよ。獣人やリザードマンが魔法で姿を変えた種族ならば、エルフやドワーフは環境によって姿が変わった種族ってわけね」

「なるほど…亜人は全部、魔法で姿を変えた種族だと思っていたよ」


「スレーン王国では神が授けた崇高なる肉体を穢したとして、亜人達を嫌ってるけど、私たち自然に生まれた亜人は例外ってわけ。まぁ人間こそが崇高って考えの国だから、エルフでも嫌われることはあるわ…」

「そうか…ありがとう。勉強になったよ」


一通り話を終えると、お互いはそれぞれの目的地に向かうことにした

「対したお礼も出来なくて申し訳ないわね、次会ったときはお礼をキチンとさせて貰うわ」

「気にしなくていい。そうだ、トロール狩りに行くんだろ?…





__俺達も一緒について行っていいか?」


「え?ダメよ!トロールはとても危険な種族なのよ。あなたは素人だし子供もいるじゃない!」

「それもそうだな…でも一人で大丈夫か?俺が手伝えばいくらか楽になるだろう」

「はぁ?あんた…バカなの?お人好しで命でも落とすつもり?」


カリンダはボソリと答える

「トラインはそういう人なの…困ってる人はほっとけない…」

「…変なマッチョね」


エローナは腰に手をやる

「心配は無用よ。多分仲間たちも現地にいるはずだから!」

「そうか…それなら仕方ない。じゃぁこれでな…」

「えぇ…また会いましょう」


別れを済ませると、それぞれ目的地を行く

道中でトラインが何やら物欲しそうな顔をしていたので、カリンダが声をかける


「どうしたの?なんか我慢してる顔をしてるけど…」

「あ…あぁ…いや大したことじゃないんだが…凄く気になることがあってな…」

「…?」









「トロールの筋肉ってどんなんだろうって…」

カリンダは内心こう思った

「(筋肉愛にも程がある……













___でもそんなトラインが好き…)」




______________________________


【マナリア森林】【トロール洞窟】


エローナは一人、草陰から様子をうかがう

「おかしい。仲間が一人もいない。それどころかトロールの気配もない…」


エローナはさらに様子を伺うも辺りはとても静かであった

「トロールはその巨体や防御力と引き換えに知能がとても低い。もしもトロールがいるなら気配や音ですぐに分かるはず。もしかしてとっくに仲間がトロールを討伐して帰ったのかな?」



エローナは洞窟に近づく。入口まで来ても音一つ無い

「これは中を確認する必要があるわね」


エレーナは洞窟の中に入る。洞窟の中にはトロールが食べたと思われる、動物の骨や人骨、またトロールが襲撃した際に、略奪した高価な物が散乱していた

「おかしい…もし仲間がすでにトロールを討伐した後なら、トロールの死体があるはず。それに高価な物がそのまま放置されてるのも変だ」



突如、エローナに頭痛を起こす

「うっ…何か忘れている気がする…なんだ…この感じ」


エローナは必死に記憶を巡らせる。毒の影響により喪失した記憶がふと戻ってきた

「そうだッ思いだしたッ!!私は仲間ととっくに此処に来ていたんだ。その時もトロールの気配はなく静かだった。私たちは洞窟の中に入って…そしたら上から…」




「グヘヘ…ヤレ…」

頭上の声に気が付いた時には遅かった。天井にはトロールが張り付いており、一人のトロールが毒粉をまき散らす。エローナは毒を吸い込み動けなくなる


「(う、嘘っ!?体が動かない…!!)」



トロール達が地面に降りてくると、硬直したエロ―ナの顔をジロジロと見る

「オ前ハサッキ来タ エルフ ダナ?」

「オマエ…運ヨク逃ゲラレタノニ…戻ッテキタノカ?」

「馬鹿ナ女ダ!」



エローナはトロールの発言で全てを思いだした

「(そうだ…私はさっきもトロールの奇襲で毒を浴びたんだ…)」

そうと分かると、一番の心配事は仲間のことであった。


「なっ仲間は!?私の仲間はどこに行った!?」

「オ前ガ 連レテキタ 奴ラカ?」

「そうだ!!私の仲間はどこにいるんだ!!」


トロール共はゲラゲラと笑い出す。エローナが辺りを見回すと洞窟の隅に、自分たちの仲間だったモノが転がっていることに気が付いた


「ま…まさか…」

「アァ… 喰ッチマッタゼ…オマエノ仲間」

「くッ!!」

エローナはトロール共をすぐにでも斬り殺してやりたいと思った。仲間の無念を晴らすため…だが体が麻痺して動くことが出来ない…


エローナはトロールが毒入り袋を持っていることに気が付く

「(きっと森で採取した毒草や毒虫などから、毒粉を作ったんだ…。私が最初に浴びたのは混乱系の毒、そして今浴びたのは麻痺系の毒のようね)」


だが、ここで一つの疑問が沸いた。エローナはトロールに質問をする

「なぜ!!お前らトロールは知能が低いはずだ!!奇襲作戦も毒攻撃も思いつくわけがない!!一体誰が考えた!?」


トロール達は首を傾げ後ろを振り向いた。トロール達の目線の先にいる何者かが喋りだす

「そうだ、大抵のトロールは馬鹿だ__




___だが、俺様は違う!」


洞窟の奥から一体のトロールが歩いてくる。普通のトロールよりもさらに体格が大きく、動物の骨や毛皮の鎧を身にまとっていた

「あ、あんたは…?」


「俺様は〝エリート・トロール〟だ!」

そのトロールは巨大な腹の脂肪をエローナに見せつける


「エリート?そんなの聞いたことが無い!」

「当たり前だ。エリート・トロールは世界で俺様だけだ!より賢く、より強いトロールにのみ授かることができる!」

エリート・トロールはかつて仲間だった遺体を、目の前で踏み潰す。


「き!貴様!!なにを!」

「人間はとても簡単で脆い生物だ…人間は俺たちを舐めている!だから簡単に殺せる!」

「奇襲作戦も毒攻撃も、全部お前の仕業かッ」

「その通りだ!この方法で何人も殺したぜ!」

「ッ!!!」

「俺様に殺された人間どもは!泣き喚いて命乞いをした!そういう奴ほど殺すのが楽しいんだ!下等な人間どもの苦しむ姿はいつ何時、何度見ても面白い!」



「クッ…クソ野郎ぉおおおお!!!!!」


エローナは全力で立ち上がろうとするが、麻痺で全く体が動かない。その様子をトロール達は嘲笑う


「(クソッ…私の仲間は…こんな奴らにやられたのか…)」

エローナはいつしか絶望と悲しみに打ちひしがれていた。その顔を見たエリート・トロールは歓喜する


「そうだ!その顔!恐怖の顔だ!俺様達の大好物だぜ!」


エリートトロールはトロールに指示を出す

「お前!その女を丸呑みにして食っちまえ!胃の中でじわじわと消化されて!痛みの悲鳴で胃を一杯にするがいい!」


「ヤッタ!ツヨキモノ!カンシャスル!」



エローナは絶望する、今日が自分の命日であること、自分はトロールに食われて汚され…







___殺されるということに




「(いやだ…誰か…助けて…)」

一体のトロールがエローナを掴み上げると、大きく口を開けた

「イタダキマースッ!」



「助けて…誰か!」













___その時であった



影と共に大きな衝撃音が洞窟内を響かせる。エローナは地面に落とされ、何が起きたのか辺りを見回す。他のトロールも突然の出来事に困惑していた


「な…何が起きたの!?」


「ソンナ…オレタチノ…ナカマガ…!」


どうやらエローナを掴んでいたトロールが洞窟の壁にめり込んで気絶をしていた


「一体…何でこんなことに…」


全身麻痺してるエローナは、なんとか力を振り絞って顔を見上げた

「嘘…」



そこには巨大な広背筋を持つマッチョが立ってい

「運が良かったな…女剣士!」

「あ あんた、何でここに!」

「困ってんだろ?力貸すぜ?」

「いや!なんでよ!危険なのに!どうして助けにきたの!?」



エローナは目の前のマッチョの行動に理解が出来なかった。余りにもお人好し過ぎる行動だったからだ。マッチョはエローナに笑顔で答える

「マッチョは困ってる人を…







___ほっとけないんだぜ!」


その言葉を聞いたエローナは安堵からか涙を流す。そしてカリンダのあの言葉を思い出した。

【トラインはそういう人なの…困ってる人はほっとけない…】


「そんな人…本当にいるんだ。本当…バカみたい…でも」




エローナは大声で叫ぶ

「助けて…ッ!トライン…ッ!」


トラインは拳同士を思い切り叩いて答えた

「もちろんだ!」

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