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【決意と旅立ち】前編

俺は今…監獄にいる


トラインは鋼鉄の拘束具を付けられ、二人の兵士に監視されていた


______________________________


【スレーン王国領】【ヌタの森】【トライン家】


それは突然の事であった


激しくドアが叩かれると、トラインはすぐに窓の外を確認する。



兵士を数人、武装して待ち構えていた



慌ててカリンダのいる部屋に行く。カリンダも窓から外の様子をこっそりと確認していた


「トライン…」

「カリンダ、兵士が来た」

「うん…外にいる…私を捕まえに来たのかな…」


「いや…お前がここにいることは、俺以外知らないはずだ…連中は俺に用があるってことだ」


すぐさまトラインは荷物をまとめる。その中にはダンブがマーリン達との取引で渡した荷物もあった

「これはなんだ?お前が気絶していた時に背負ってたよな?最初に会った時は、こんな荷物無かったはずだ」

「それは…悪い人から貰ったの…わたし荷物背負ってるのを忘れて無我夢中で走ってたんだ…」

「どうやら中には役立つ道具が入ってるな…丁度いい」


トラインは荷物をまとめたリュックをカリンダに渡す


「いいか…俺に出来ることは限られてる、俺に何があっても、俺の事は無視して一人でこの国を脱出するんだ」

「トラインは?酷いことされない?」

「大丈夫さ!」


トラインはすかさずサイドチェストを決める。筋肉がはち切れ背中から服がビリビリと破け散る

「このッ!筋肉がある!!!」


「と!トライン!!また服が!!!」


「大丈夫!いつものことだ!!」

「そんなに服を破いてるの!?」

「うん!もう30000着は逝ったぜ!農家の収入の半分は服代に使ってるぜ!」

「自分で縫えないの?」

「昔から服を縫うのだけは苦手なんだ…」

「貸してみて!私が縫ってあげる!」


とっさにボロボロの服をカリンダが取ると、服を縫い始める


「いやいや!外に兵士がいるし、そんな時間は…」

「縫えたよ」

「早い!!!服を縫う才能すげぇ!!!」


カリンダが高速で縫ってくれた服を着るトライン。その出来栄えは完璧だった



そしてトラインはカリンダの肩に手を置く

「ありがとうカリンダ…あと俺は本当に大丈夫だ…だから俺のことは気にせず行ってくれ…お願いだ」

「…うん…分かった…」

カリンダは悲しそうに下を向く


トラインは部屋から出ると、階段を降り玄関のドアに向かう。その間、激しくドアが叩かれていた


「おい!いるんだろ!居留守を使っても無駄だ!お前がいることはすでに周辺調査で確認済みだ!!早く出てこい!!さもなくば強制的に突入する!!」

「分かった!分かった!今開ける!」

トラインはドアを開けると、兵士たちは、その巨大な筋肉に驚愕する


「ヒッ!デケェ!」

「マジでオーク並だ」


リーダー格の兵士が紙を広げると、トラインに対し逮捕状を言い渡した

「ト…トライン・メルポン!貴様を国家反逆罪の容疑で拘束する!」

「国家反逆罪?何のことだ?」

「ここヌタの森で調査中だった兵士を無闇に殺めた罪だ!言い訳は牢獄で言え!手錠を持ってこい!」


兵士が手錠をトラインに掛けようとする、しかし中々掛けられない

「おいっ!何やってる!手錠もまともに付けられないのか!?」

「無理ですよ!!!腕が太すぎます!!!」

「なんだとぉ!?」

「俺の筋肉を褒めてくれてありがとう!腕の短橈側手根伸筋や尺側手根屈筋などを鍛えるのはとても大変で…」

「褒めてねーよ!!!いいからロープ持ってこい!!!」


トラインの腕はロープでギチギチに締め付けられた

「おい!貴様、家には他に誰もいないのか?」


トラインは窓の外から、こちらを覗くカリンダを確認する

「あぁ誰もいない…俺一人だけだ」


大人しく連行されるトラインをカリンダは、ただ見てることしか出来なかった



___【スレーン王国領】【アシルダ地区】


アシルダ地区はヌタの森を抜けた先にある大きな町である。商業も盛んであり、住宅街や商店街、そして町の中心にはアシルダ基地と呼ばれる政治や軍の施設がある。


アシルダ基地では、王子や政治家の居住区、兵士や魔術師の駐屯所、地下には監獄や処刑場もある


____【アシルダ基地】【アシルダ監獄】


今日もまた一人…受刑者がやってきた。受刑者をみるや、牢屋の中にいる囚人たちが野次を飛ばす

「よぉ!新入りぃ!ようこそ地獄へ!!」

「そんな体じゃ、ここで3日も持たねえぜー!?」

「コロス!コロス!コロス!」


この監獄では新入りがやってくると、この様なヤジがお決まりになっている


そしてまた一人…受刑者がやってくる


「よぉ!アホ面!ちびってんのかぁ?」

「ごらぁ!新入り!可愛がってやるぜぇ!」

「コロス!コロス!コロス!」


受刑者は囚人達の圧に負け泣き出してしまう。それをみた檻の中の囚人は呆れて果てる


「チッ今回の囚人も雑魚メンタルだな」

「ありゃ三日どころか今日にも死ぬぜ?」

「おいっ!また次の受刑者がやってきたぞ!」


奥から看守を引き連れて、こちらに歩いてくる男が見える

「今日は新入りが多いな!!」

「よっしゃ!次はどんな言葉で泣かせてやろうか!」

「コロス!コロス!コロス!」



だか現れた者___








___それは巨大なマッチョであった



「ヒッ!?」

「よぉしん…え?新入り?」

「なんだ!?あの馬鹿でかい筋肉は!?」

「コワイ…コワイ…コワイ…」




トラインの巨大な筋肉を目の当たりにした囚人は全員戸惑い怯えてしまう



だが囚人達は負けじと野次を飛ばし始める


「おいっ腹筋ゴリゴリ野郎!!」

「肩にメロン乗っけてるのかよ!」

「胸の筋肉ドラゴンか!」

「土台が違うよ!土台が!!」

「両足太いよ!世界樹の幹!」

「筋肉バキバキ過ぎて危険地域!」


それを聞いたトラインは涙を流して喜んだ


「おぉまさか、俺の筋肉を褒めてくれる者がこんなにいるとは…!なんて素晴らしい人達だ!」


「いやバカにされてんだよ…」


看守にツッコまれたトラインは、牢獄のさらに深い場所に連れていかれる


途中で囚人が一人、こちらに走ってくるのが見えてきた


「おい!大変だ!囚人が一人逃げたぞ!」

どうやら脱獄を企てた囚人のようだ


「どけっ!邪魔だ!!俺はこの監獄を抜け出すんだ!」


しかし看守の一人が冷静に対処する

「慌てるな!【アイシボール】を投げるんだ」


一人の看守が投げたボールが囚人に当たると、当たった場所から氷が出現し、囚人は氷漬けにされる




「なんだ?それは?」

看守はトラインの質問に答える


「これか?これは魔式道具の一つだ。魔式は杖や道具に魔術師が魔法を込めることで作られ、魔法が使えない人間でも強力な魔法が扱える」


看守は片手ほどのボールをトラインに見せてきた

「この通称【アイシボール】を当てられた人間は、即座に氷魔法が発動され全身が氷漬けになる。あれを見てみろ。当てられた人間は全員が氷漬けで死ぬ。あぁなりたくなければ、逃げ出そうなんて考えないことだ」

「あぁ分かってる…」



トラインは奥の部屋に連れてかれる。その部屋は出入口が一つしか無く、奥に大きな檻が一つあるだけだ。トラインは檻の中に入れられると、鋼鉄で出来た拘束具を付けられ、身動きが取れなくなる


檻に鍵が掛けられ、魔道士が鉄格子に魔法を掛ける

「【コウカレンド】!!」

檻が紫色に光りだした


「この魔法は強硬化魔法の一種だ。鋼鉄の檻をさらに頑丈に硬くした。例えドラゴンであっても開けることは不可能だろう。さらに出入口は一つしかなく、兵士を2名で置いて常にお前を監視する。勿論兵士にはアイシボールを持たせてる」


「ほう…ただの容疑者にしては随分と要心深いな」


「〝あの方〟のご命令だ…お前にはあの方が直々に尋問をする」

「あの方?」


「王宮魔術師の〝コルシファー〟様だ。残念ながらコルシファー様は大変に忙しい。ここに来るのも今日になるか明日になるかは分からん」


「じゃあソイツが来るまで、俺はじっとここにいろと?」

「仕方がない」

「筋トレの時間はあるか?」

「無い」

「せめて腹筋は鍛えられぬか?」

「無理だ」

「ならばスクワットはどうだ?」

「無理」

「足の筋肉をもっと鍛えたいんだ」

「知らん」




「じゃ腕立て伏せは?」



「無理だっつってんだろぉ!人の話聞けよ!!!!」



兵士が二人が残され、他の者は部屋を出る。トラインは拘束されたまま、刻々と時間が過ぎるのを待っていた


「(はぁ…暇だ…いつもなら、筋トレの時間のはずなのに…そういや…カリンダは無事にしているだろうか…まぁあの荷物の中には役に立つ道具もあったし…俺が一人でもここにいれば時間は稼げるはずだ…)」


兵士たちも檻の外からトラインを見つめる

「お前さん、基地でも噂になってるぜ」

「え?噂?」

「あぁ化け物みたいな筋肉の男がいるってな…」


どうやらマッチョが捕まったという話は、基地全体に広がっているらしい…


「まぁお前がここにいることは一部の人間しか知らないが…みんなお前を見たがってるよ」

「そういや俺はまだ容疑者なんだろ?釈放されるのか?」

「さぁな…運が良ければ釈放だが、国家反逆罪が確定すれば、良くても斬首刑だ」

「良くて斬首刑?、悪かったらどうなる?」



「苦しんで斬首刑だ」






時間がただ過ぎていく…二人の兵士が立ち話をしていた


「なぁ今何時だ?」

「え?さぁな…ここは窓もねぇから、まぁ陽は落ちてる頃だろう…」

「これじゃ王宮魔術師が来るのは明日になるぜ」


すると一人の兵士が部屋を出ようとする

「おいっどこに行くんだ?」

「休憩だよ…休憩」

「ここで見張ってろと言われてるだろう?」

「バカ…いくらマッチョだからって、拘束具と硬化魔法の檻なんか破れねぇさ…お前もずっと突っ立ってるつもりか?」

「ま…まぁそりゃ…」


二人の兵士が部屋から出ていく


「(行ったか…)」

部屋で孤独となったトライン、しかし現状はどうすることも出来ない


「(鋼鉄の拘束具程度なら破けれるが、いくら俺でも硬化魔法の檻を破るのは厳しいかもしれん…仮に檻を出られたとしても、看守たちのアイシボールで氷漬けにされて終わるだけだ…)」


普段、筋肉しか考えない脳をフル回転させ考える


「(やはり、捕まった時に逃げた方がよかったか?、いや下手な動きをして家の中を調べられてもマズイ、あの場で大人しく連行されたことで、カリンダも見つからなかったわけだし…)」


それでもトラインはカリンダが心配であった…カリンダは無事にしているだろうか?役に立つ道具を持たせたが…やはり一人は心配だと不安が過ぎる



「(はぁどうするべきか…)」

そう考えていたとき、何処からかカリンダの呼ぶ声が聞こえる

「トライン…トライン…」

「(やれやれ…こんな時に幻聴とは…)」


しかし声はどんどん大きくなる


「トライン…トライン…!」

「いやまて…幻聴じゃない!?」


トラインは筋肉を敏感に刺激して、声の出処を探る。檻の外からカリンダの気配を感じる


「トライン!トライン!良かった!無事だったんだね」

「カリンダ?なんでここにいるんだ!?」

「あの悪い人から貰った道具を使ったの…姿が消せる道具を使って…」

カリンダはダンブから取引で受け取った【隠密のマント】を見せる。だがトラインはカリンダを叱った


「違う!そうじゃねぇ!なんでここにいるかって言ってんだ!」

「そ、それは…私…トラインを助けたくて…」

「俺の事は無視して行けと言ったはずだ…」

「だって私…トラインが心配で…」


カリンダは悲しそうにトラインを見つめる。その顔を見たトラインは叱るのを諦める


「…まぁ来たものは仕方ない…そうだ…牢屋の鍵を見てないか?」

「ううん見てない…どうしよう」

「そうか…いいか?もしかしたら兵士が戻ってくるかもしれない。その時はすぐに逃げ…」


トラインは何者かが近づいてくる気配を筋肉で察知する。どうやら兵士が戻ってくるようだ


「まて…兵士が戻ってくる…いいか?姿が消えてるとはいえ油断は出来ない…念のために隠れていろ…もし隙があったらすぐに逃げるんだ…」

「う…うん」


カリンダは隠密のマントで姿を消して隠れる



兵士と、謎の男の声が聞こえてきた

「困りますよぉ秘密なんですから」

「俺に逆らうつもりか?俺は噂の巨大筋肉を見たいんだ」

「ですが…コルシファー様に止められて」

「黙れ!王宮魔術師より俺様の方が偉いのだぞ!」


先程の兵士二人と共に、身なりの良い男が現れる

「これが噂のオーク人間か…たしかに滑稽だな」

「お前が王宮魔術師か?」



「はぁ?違ぇよ!てか…俺様も知らないとは、辺境の田舎だからって教育不足にも程があるぜ」


「じゃあ誰なんだおまえ」


トラインの態度に兵士はキレる

「貴様!この方を何方と心得る!この方はスレーン王のご子息!第三王子のベランダ様であるぞ!態度を改めろ!」

「ほう…王子様か…」


ベランダ王子は気取りながら答える


「その通り、この俺様がスレーン王国の第三王子である。つまりこの国で王の次に偉いってわけだ」

「王子様がなんで首都から離れた町にいるんだ?」


「ちょっとした修行ってやつさ。お父様は俺を期待しているからな…このアシルダ地区を任せてもらい俺の実力を見ているのさ」

「なるほど…で?何の用だ?」


ベランダ王子はトラインほ筋肉をまじまじと見つめる


「筋肉ムキムキの醜い男がいるっていうから来てやったのさ。どんな滑稽な姿かってな」

「そうか…楽しんだか?」


「あぁ…まぁ確かにデカいが…それ以上の感想はないな…。お前も面白そうな奴でも無い…期待はずれだ」

「そうか…それは悪かったな」


ベランダ王子は部屋から出ようとする。だがベランダ王子のマントがカリンダに掛かってしまう

「!?」


「なんだ!?何かいる!」


「まずいカリンダが……逃げろ!!!」


だが無情にもカリンダは捕まってしまう

「チッ姿くらましの魔式道具か…てっコイツ獣人だぞ!」

「やめろ!その子を離せ!!!」


動揺するトラインを見たベランダ王子は、何かを察しカリンダの髪を掴んで檻に近づく

「その慌てよう…お前の大事な獣か?」


「ち…違う…その子は関係ない…だから離してやってくれ」


「へっ無理だな!施設の無断侵入、それだけじゃなく、獣人ってだけで罪だ!!」


そういうとベランダ王子はカリンダを床に叩きつけ、足で顔を踏む


「お前ッ!!!何をする!!!」

「はぁ?何をそんなに慌ててんだぁ?こいつはお前とは関係ないんだろうぉ?」


トラインは緊張で汗を垂らし息遣いも荒くなる、それを見たベランダ王子は歓喜に震える

「そうだ!その顔だ!やっと面白くなってきたじゃねぇーか!」

「面白い…だと?お前…」


王子はカリンダの顔を掴んで、じっと見つめる

「ほう…顔は人間に近いタイプの獣人か…顔立ちもいい方だな…」


「やめろ!その汚い手をどけろ!!」

王子はニヤリと笑う

「へっ…いいことを思いついたぜ」


王子は兵士に質問をする

「おい兵士、このマッチョの罪状はなんだ?」

「はっ…はい!国家反逆罪です!」


「あっそう…まぁいい!おいっ!そこのオーク男!取引をしようぜ!」


「と…取引…だと?」


「そうだ…お前の国家反逆の罪…






__ぜーんぶ、この獣人に擦り付けちゃえよ」


トラインや兵士はその発言に驚愕する

「てめぇ…何を言って…」

「そうそう、その顔だ!!面白い顔も出来るじゃないか!!」


兵士は王子に懇願する

「王子様!困りますよ!コルシファー様に怒られます!」

「はぁ?俺は王宮魔術師より偉いんだぜ?俺と魔術師どっちの言うこと聞くんだ?」

「お…王子…様です…」



王子はカリンダの顔を掴みあげると、カリンダの頬を舐める

「クッ!!この外道め!!!」

「どのみち、この小娘は奴隷行きか死刑。だが…俺の夜のペットとしてなら、生かしてもいいぜ?」

「貴様…」


「さぁどうするオーク人間!この獣に罪を擦り付けるか?それとも獣のために命を捨てるか!?」


「俺は…」

トラインは考えた。どうすればカリンダを救えるか…この状況では、もはや絶望的だ。それでもトラインはカリンダを救いたい…一体どうすれば…


だが口を開いたのはカリンダだった


「トライン…







___私に罪を擦り付けてよ…」




「!?」


トラインはカリンダの発言に驚く


「カリンダ…何を言ってんだ…」

「私の命で…助かるんでしょ?なら私が…全部背負うから…」


「ふざけるな!なんで俺のために!俺とお前は関係ないだろ!お前が俺に命を掛ける理由はねぇ!!」


「じゃあ…なんで私を助けてくれたの…?」


トラインはその言葉を聞いて口がつぐむ


「私はトラインに助けられた…こんな私をトラインは受け入れてくれた…もう私にとってトラインは…ただの人じゃない…」


「それは…」


「みんな死んだ…お兄ちゃんも死んだ…私の大切な人はみんな死んだ。…でもトラインだけは…トラインだけは生きて欲しい。トラインが生きてくれるなら。また楽しく筋トレしてくれるなら…私は幸せだから…」



「カリンダ…」


「あぁーはいはい…そういうの面白くないわー」

王子はカリンダの腹を蹴る


ガッ!!!

「獣人が勝手に喋りやがってよぉ、しらけちまっただろが!!」


王子はさらに二三発蹴りを入れる。トラインは必死に叫ぶ

「やめろ!やめてくれ!!」

「さぁどうんするんだマッチョ男!おれは気が短ぇんだよ!!」







トラインは沈黙する





そしてトラインは王子に一つ質問をした


「ひとつ聞きたい…」

「なんだ?」

「カリンダをペットにすると言ったな…生かしてくれると言うのか?」


「あぁそうだ___





____散々痛めつけて楽しんでやるよ!」


「!!!!」

「一週間くらいは楽しめるだろうな!まぁ使い物にならなくなれば、捨てるだけだ!ギャハハハ!!!」




「貴様…!」

トラインの筋肉は大きく震えた

「てめぇ…生かしちゃおけねぇな…!」




トラインは息を吸い込み力を込めると鋼鉄の拘束具が引きちぎれる「フンッ!!!」という掛け声と共に、拘束具の金具が吹き飛んだ


「ひっ!!?」

王子や兵士は有り得ない出来事に喫驚する


トラインは拘束具を脱ぎ捨てると、ゆっくりと鉄格子へ近づく。王子は慌てて兵士に問う

「お前ら!あの格子は大丈夫だよな!!」

「だっ大丈夫です!硬化魔法ですよ!いくらあの筋肉でも開けるのは不可能です!」



だがトラインは格子に手をやると、大きく息を吸い込み、広背筋や上腕三頭筋がプルプルと震える。全身に血管が浮き出て、身体中が熱気に包まれる


「グッ…パワァァァァァアアアア!!!!!」


鉄格子はみるみるうちに大きく曲り、ついには人が通れるほど広がってしまった


「なんてやつだ!硬化魔法の檻を曲げやがった!!」


兵士と王子は思わず後ずさりする


トラインは檻から出てくると、倒れているカリンダに喋りかける

「カリンダ…お前は俺の事を誤解してる」


「ご…ごかい?」


「あぁ、お前は俺が楽しんで筋トレをすると思っているのか?お前を犠牲にして、家に帰って、のうのうとトレーニングをすると?…ふざけるな!!!」


「トラ…イ…ン?」


「俺は誰かを犠牲にして筋肉を得るくらいなら…












___そんな筋肉は捨ててやる」

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