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【アケノ山の決戦】

【オルバニア帝国】【アケノ山】


トライン、エローナ、リドルはギルドマスターによって派遣された二人のギルドメンバーと共にアケノ山の麓にまで来ていた


リドルは生命探知の魔法を使って山中に潜む人間を探る


「凄いな…この広範囲の場所を生命探知するなんて…」

ギルドメンバー達もリドルの魔法の能力に驚く。探知を終えるとリドルは場所を示した


「やはりあの場所から膨大な魔力と生命エネルギーを感じます。人がいるのは確かですね」

ギルドメンバーの一人は場所に心当たりがあるようだ


「あの場所には今は使われていない【監獄洞窟】があるはずだ。もちろん人なんか居ないはずだぜ?」



「でも反応があるってことは誰かはいるってことだろ」

「えぇ、間違いありません。もしかしたら、そこを拠点にしているのかも…」





道中を警戒しつつも着々と監獄洞窟へ向かう。ふと、エローナはトラインの装備を見てみた。普段のトラインとは異なりギルドマスターから貰った上質な防具や武器が目立つ。一際目立つのは腰に携えた剣である。なぜならトラインが剣を持つのを見たのは初めてだからだ



「アンタが剣を持つなんて珍しいわね」

「あぁ、剣を持つなんて何十年振りか分からねぇ。本当は持ちたくはなかったんだがな…」


そう真面目な口調で答える


「やっぱり何かあったの?あの意識の中で…仮面の女もそうだけど、あんたの過去に……」


「それはな…」

トラインは難しい表情で悩む


「言い辛いならいいわよ。あんたの過去がどうであれ私にはどうでもいいから」

「すまないエローナ…。今言えることは俺は剣を握ることがトラウマで仕方なかったんだ…。もしもお前が救ってくれなかったら俺はどうなってたか分からねぇ!本当にありがとうなエローナ!!」


トラインは自慢のスマイルをエローナに見せる。エローナは返事もせず顔を真っ赤にして下を俯いた


「ん…?」

「とっとにかくカリンダちゃんを助けるのに集中しましょう!!」

「あぁそうだな!!」


エローナはある事を危惧していた


「(あぁマズイ…。もしあの言葉を聞かれてたら…メッチャ恥ずいッ!!)」


それはトラインの意識下の時である。エローナは告白とも受け取れる発言をしたことだ。もちろん聞かれてないつもりで言った発言だが、もし聞かれてたとなればエロ―ナにとって、とても恥ずかしい事なのは間違いない

「(あぁ!!だめよッ!!今はカリンダちゃんの事に集中しないと…悩むのは全てが終わった後よ!!)」


エローナは何とかそう言い聞かせ身を引きしめた








___監獄洞窟まで残り半分の距離を進んだ頃、街の方面から野獣の轟声のような音が聞こえてくる


「今のは!?」

「月が真上に来ています…。日付が変わった頃ですね」


「ってことは今頃 魔獣達が街を襲ってるってことか…!?」

「早くなんとかしないと!!」

「急いで黒幕を止めましょう!今ならまだ被害を最小限に食い止められます!」




道中を警戒しながら進んだいたが、猶予が無いと感じた5人は監獄洞窟に急ぎ足で向かう


「なぁ?なんで鉱山にいる黒幕を止めると魔獣も止められるんだ?魔獣たちは街にいるんだぜ」



リドルは魔獣が街を襲う理由について説明する


「きっと魔獣たちには行動操作の魔法が掛かってるはずです。でなきゃ街を意図的に襲撃するのは無理ですから」


「行動操作?」


「単純な思考の生物の動きを操ることが出来る魔法です。基本的には遠隔で魔法を送り続けなければいけません」



「つまり魔獣を操っている黒幕を倒せば魔獣も止まる?」


「極論から言えばそうです。魔獣たちは街を積極的に襲う理由はありませんからね」


トライン達が急ぎ足で監獄に向う。しかしトライン達は気付いていなかった。木々の影に監視用の魔式道具が仕掛けられていたのだ。この道具は通った人間の生命エネルギーを感知して持ち主に知らせる


「もうすぐ洞窟だ!!気を引き締めろ!!!」











______________________________

【アケノ山】【監獄洞窟】


「はははっ感じるぞ!!私が作った魔獣たちが街を襲っている!!兵士共が食い止めてるようだがそれも時間の問題だ!!」


魔術師が高らかに喜びをあげる。しかしテレブレアはそんな事など気に止めず、自身の魔式道具を確認していた


「あっおー…、へー驚き♡」

「なんだどうした!?」


テレブレアは不気味な笑顔で答える


「この場所が誰かにバレたわよ〝グリープ〟いま5人程の集団がこちらに向かっているわ」


監視用魔式道具を仕掛けたのはテラブレアであった




「何をいう!!この場所はワシとお前しか知らぬはずだ!!!貴様 裏切ったのか!!!」

グリープは杖を召喚してテレブレアに向ける。しかしテレブレアは気にせず独り言を呟いていた


「それにしてもどうして分かったのかしら?気になるわねぇ」


「むむむ無視するな貴様ッ!!!【王宮魔術師】であるワシを怒らせたいのか!!!」



テレブレアはグリープの発言を鼻で笑った


「ぷっ…王宮魔術師?笑わせないでよ。ちょっと【スレーン王国】で魔法に長けてるってだけでしょ?はっきり言ってあんたはコルシファーよりずっと弱いわよ」




グリープはテレブレアの態度に耐え難い屈辱を覚えた。怒りのあまり地面をドタバタ足踏みした


「貴様!!無礼な無礼な!!!!ワシはあの街を壊滅にまで追い込んで野獣の娘をスレーン王国に持ち帰るのだ!!そうすればワシはコルシファー様から賞賛され さらにさらに出世するのだ!!貴様が恐れ慄いて頭ァ下げるくらいにな!!!」



しかしテレブレアは冷静に そして冷淡に返す


「落ち着きなって 幸いにも人数は5人程度よ。アンタが全力を出せば潰せるくらいの数ってわけ…お分かり?」


「なな なんだと…?」


「ほらっ早く行ったら?善は急げとか言うでしょ?このままじゃ狭い洞窟の中で戦うことになるわよ?」



「くっ!!帰ったら覚えおけよ!!!」


グリープが檻に向かって魔法を唱える。檻の扉が開き 数十体の狼型の魔獣が出てきた

「くっコイツらは失敗作だがまぁいい!!邪魔者の始末には十分だ!!行くぞお前ら!!!」


狼の魔獣共の雄叫びを出すと、グリープの後に続いて洞窟から出ていった




それを確認するやテレブレアはカリンダのいる檻に近づく


「ねぇ子猫ちゃん?…やっと二人きりになれたね♡」

「だれ…?」

「ふふふ…♡」


カリンダはテレブリアの表情に言い表せぬ不気味さを感じていた




______________________________

【アケノ山】【山道中】


トラインは何か危険を察知した

「…ッ!!上空注意ッ!!!」


上空から放たれた氷の塊が勢いよく落下した。トラインの危機察知能力のおかげで全員避けきる


「危ねぇ…!!」

「クッ氷魔法か!!」

「デケェなぁ とんでもない魔力じゃねーか!!」



「みんな……上を見ろ」

「「「ッ!!?」」」


上空を浮遊する謎の人影。魔術ローブを身にまとい怪しげなオーラを放っている老人であった


「ほう…今の攻撃を避けるとは少しはデキるようだな」


リドルはその男から膨大な魔力を感じた

「あの魔力量ッ…!!間違いありません!彼が黒幕ですよ!!」

「なんだって!!」


「ほう…一人は魔術にかなり長けているようだな 私は〝グリープ〟スレーン王国の王宮魔術師だ」



「王宮魔術師だと!?」

「なるほど…これは厄介ですね。行動操作の魔法で常に魔力を消費してるとは言え、彼の魔術はかなり強敵です」


グリープは高らかに笑う

「ハハハッ!!そうだ、やっと私の実力を理解する人が現れたようだな!やーれ褒めてやるぞ!!」


「カリンダはどこだッ!!!無事なんだろうな!!」

「カリンダ?…あぁあの子犬か。安心しろ元気しておるよ…



___まぁお前らが会うことは無いがなぁ!!」


グリープは呪文を唱える

「【ギガンアイシクロス】!!」

巨大な氷柱の塊が出現し、トライン達に放たれる


「この氷柱魔法は避けられまいッ!!死ねえぇぇえ!!!」



「まずいッみんな避けて!!」

「あんなの避けられねぇよ!!」



「いや 俺に任せろ…」


そう言うとトラインはその巨大な氷柱に拳を数発撃ち込んだ。巨大な氷柱は粉々に粉砕され辺りに散らばる


「残りカスは私がやりましょう…」

リドルは熱魔法を使って散らばった氷の塊を全て蒸発させる


その光景を見たグリープは



「えぇぇえええぇえぇえぇえぇえぇ!!??」

有り得ない光景にグリープも口と目をカッ開いて驚いた


「ありがとうリドル」

「いえいえ、こんな氷結魔法は私ひとりで充分でしたよ。わざわざトラインさんのお手を煩わせることはありませんでした」


グリープは二人の実力に焦りを見せる

「(なんだこの二人の実力はッ!?直感的に見ても【グランテイル級】並じゃないか!!おかしい…あの街にそんな実力者は居ないはず…ッ!!まさかッ事前の下調べの時に放ったゴライザンも奴らが…ッ?)」



ギルドメンバー達も二人の実力を褒め称える

「す 凄いっ!これがトラインさんの実力!?」

「最強の魔術を持ったリドルさんと最強の腕力を持ったトラインさん!!この2人がいれば心強いぜ!!!」


「まだ喜ぶのは早い!!警戒を怠るな!!」


改めて5人はグリープに警戒する。リドルは冷静にグリープの戦力を分析する

「彼の魔力は大きいですが、行動操作の魔法で常に魔力を消費してる状態です!!要するに我々に強力な魔法を使う余裕はありません!!6人で掛かれば間違いなく勝てます!!」




「クククッ確かにさっきの攻撃は驚いたが…お前らなんぞ怖くはない」

グリープはなぜか余裕な表情を見せる。その表情に嘘は付いてないようだ


「お前一人に対して俺たちは5人だぞ?降参するなら今の内だ」


「クククッ残念だったな。得体の知れない貴様らの前にワシが一人でノコノコと来ると思ったのか!?」

グリープは手を上げ合図をする。茂みから狼の魔獣が数十体飛び出してきた



「なんだコイツら!?」

「ワハハハッハ!!!ワシが作ったご自慢の魔獣数十体が相手になろう!!」


狼の魔獣は顔が二つあったり、牙が刃物のように鋭いものや、氷の息を吐くものもいた


間違いなく魔獣たちを倒すのには時間が掛かるのが目に見える

「くそっ…早くカリンダの元に行きたいのにッ!!」



リドルとエローナはお互いに顔を合わせ頷く


「トラインさんは先に監獄洞窟に向かってください。この場は私とエローナさんで対処します」


「なんだって?どういうことだ?」

「肝心のカリンダさんを誘拐したテレブレアがこの場にいません。もし私たちが長時間、戦ってる隙にカリンダを連れて逃亡でもされれば、もう二度とカリンダさんは救えません」


「えぇそうよ!ここは私たちが残って戦うわ!!今のうちにアンタ達が行けばカリンダが助かる可能性が高いってわけ!!」


エローナは煙玉を地面に投げつけ、煙が辺りを包み込み視界を遮る



「走れ!!バカ筋肉!!」

「走ってください!!トラインさん!!」



「あぁ分かったッ!!!」



トラインは全速力で走る。途中で魔獣にも襲われるが自慢の筋肉で魔獣を吹き飛ばした。他の二人のギルドメンバーもトラインに加勢するために後を追った



「ちッ!!三人は洞窟に向かったか……。まぁよい、洞窟にはテレブリアがいる。ワシはこの場に残った奴らをさっさと始末して戻ればよいだけだ」



エローナとリドルは武器を構える


「優秀なのは分かってるけど足でまといにならないでよね」

「ご安心を…魔法は誰よりも自信がありますから」



数十体の魔獣の追撃、グリーブによる魔法攻撃が二人を襲った





____監獄洞窟はもうすぐそこだ。トラインは二人のギルドメンバーに気を遣って声を掛ける


「一緒に来てくれてありがとう!でも二人とも大丈夫か?相手は元【アドバンテイル級】だぜ?」


「えぇ大丈夫ですよ!私達は【ランドル級】のギルドメンバーです!相手がアドバンテイル級だろうが、私たちとトラインさんの3人がいれば絶対に余裕ですよ!」


「あぁ心強い!ありがとうな!」


「実は僕…帰ったら【結婚】するんです!だから何としても今回の任務は頑張らないといけません!」

「そうなのかッ!!結婚おめでとう!!この戦いが終わったら是非、挨拶させてくれ!!」


「えぇ!もちろん喜んで!」


「俺はもうすぐ女房が【出産】するんだ!初めてのパパになるんだぜ!この任務が終わったら赤ん坊の顔を拝むんだ!!」

「そうかッ!それは早く終わらせて奥さんの元へ帰らないとな!!」


「えぇ!でも貴方と会えたのも何かの縁です!無事に帰ったらお酒を1杯奢りましょう!」

「私も是非奢らせてください!」



「それは悪いなぁ!(困ったな…酒は筋肉に良くないから控えてるんだが…)」




______________________________

【アケノ山】【監獄洞窟】


テレブレアは椅子に座りながら魔式道具でトラインの同行を確認する

「三人ほどこっちに向かってるじゃん。残りは私がやれっとこと?追加で料金貰わないと割に合わないわね」


テレブレアの前にはカリンダが立っていた。カリンダはテレブレアに質問をする


「なんでこんなことを…?目的は金…?」


「あーうん。まぁ生きるためには金が必要よね。でも私は金よりもずっと欲しいものがあるのよ」

「欲しいもの…?」


「安らかな最期よ。私は人を殺すのが好きだった。命のやり取りは気持ち良かったわぁ♡…でも、同時に私はある事に気がついたの」


「ある…こと?」


「人を殺し過ぎた人間はね…楽には死ねないのよ。最期は苦痛に悶えて命を引き取る…。きっと私もそうなのかもしれない。だから私は、私を楽に殺してくれる人を探してるの。だから危険な仕事をやってるのかもしれないわね」


「死にたくて危険な仕事をやってるってこと?」


「少し違うわ。人は誰しも必ず死ぬ。だから人は死ぬために生きることが快感になるの。それこそが人が生きる目的なのよ?」


「何を言ってるか分からない…」

「ふふふ♡」


テレブレアは不気味な笑みを浮かべた


「でもなーんで逃げないわけ?牢には入ってないし拘束もしてない♡今なら逃げられるわよ?」

「私は逃げられない…」


「ご明察!私は貴方を絶対に逃がさない♡」


怯える事もなく立っていたカリンダのことが気に食わないのかナイフを取り出す。テレブリアは咄嗟にナイフをカリンダに向けると、カリンダは最初は驚くも、ナイフに臆すること無く我慢した


「普通アンタくらいの子供なら泣いて喚くわよ?どうしてそんなに冷静でいられるわけ?」


カリンダは質問に答えずに黙っている


「まーいいわ…アンタが助けにくる連中は全員私が殺すから♡もしかしてその中に貴方の大切な人でもいるのかしら?」

「絶対に勝てないよ…」


「へー本当に…♡?」

「トラインはあなたと比べ物にならないくらい強いから…絶対あなたなんかに負けない!」


「ふーん♡それが我慢出来る理由ってわけね…でもそんな強い人がいるなら、私も楽に殺してくれるのかな??」

そう言うとテレブリアは自身のコートを広げた



「ッ!?」

コートの中にはナイフや爆弾など様々な武器を隠し持っている


「驚いた?これが私のやり方。私はどんな敵でもありとあらゆる対応をする。ウサギを一匹殺すのにだって上級魔法を躊躇なく使えるのよ」


「…………」


「だから私は最強なのよ。あんたが大切に思ってる人がどんな人か知らないけど、せめて死体が綺麗な状態で残ることを祈ることね」



「……」

「また黙っちゃった♡まぁいいわ…そろそろ来る頃だろうし」



その言葉通り洞窟の入口から懐かしい声が聞こえてきた

「カリンダ!!」



トラインの声が聞こえ、カリンダは後ろを振り向いた。洞窟の入口からトライン達が駆けつけてくるのが見える。カリンダは嬉しさのあまり咄嗟にトラインの元へ駆けつけようとした



「トライン!!!」

「カリンダ!!ダメだ動くなァ!!!」


「えっ?」「しばらく眠ってなさい♡」

テレブレアがカリンダの腹部を思い切り蹴りあげた。カリンダは宙へ飛ばされ、壁に打ち付けられる


「う…うぅッ!」

カリンダは痛みで動けなくなる。その光景をみたトラインは激怒した

「カリンダ!!!貴様ぁぁあ!!!」



「さぁ強いって奴はどれ?お手並み拝見ね♡」

テレブレアは姿くらましの魔法で姿を消す


「消えた…ッ!?」

「全員気を付けろッ!!」


テレブレアの居場所が分からないため三人は周囲を警戒をする


「これは姿くらましの魔法だ!!どうする!?」

「大丈夫です!私の生命探知の魔法を使えば探し出せます!!」


メンバーが魔法でテレブレアの居所を探る


「俺は魔法でバフを掛けるぜ!!【バップバップ】!!」

トライン達に攻防力上昇の魔法を掛ける


「この魔法で剣による攻撃力があがるし、刃物や鈍器の攻撃からも一定の効果がある!!それでどうだ!!奴はどこにいるッ!!?」

「わ…分かりません!どこを探さても見つからない!」


「後ろだよ♡」

「なにッ!!?」


背後から姿を現したテレブレアはメンバーの背中をナイフで突き刺す


「グワッッ!!!舐めるなぁぁあッ!!!」


メンバーは杖を振り下ろすが、もうその姿は無い

「どこいった!!?」


血だらけになりながらもメンバーは生命探知を用いて探そうとするが見つけられない

「有り得ない!!生命探知に引っかからないなんて!!」


「いや…







___違う!!上だ!!!」

テレブレアは姿くらましと空中浮遊の魔法を用いて天井に張り付いていた



「あら見つかっちゃった♡」

「クソッ!!喰らえッ【ライトニングアロー】!!」


メンバーは強力な電撃魔法をテレブレアに浴びせる。その衝撃で煙が辺りを包み込んだ



「当たった!!ざまぁみろ!!全力の魔力を込めた渾身の一撃だ!!!」

だが煙が晴れるとテラブレアが平然とした様子で立っている。まるで攻撃が効いてないようだ


「う、嘘だろ…上級魔法の攻撃だぞ…あの無傷なんて有り得ない…」

メンバーは戦意が喪失したかのように杖を降ろしてしまう


「いやまてッ!!!油断するなッ!!!」

「【大禍死超斬(おおかしちょうざん)】」


テレブレアが呪文を唱えると高速で飛び出し、メンバーの首を斬り込んだ。メンバーは血を吹き出して倒れてしまう


「くそぉ!!!てめぇ!!!」

もう一人のメンバーが後ろから剣を突き刺すも、服が硬くて剣が弾かれる


「な…にッ!?」

「服は魔法で硬化させるって想定しなかったの?狙うなら皮膚だよド素人♡」

「うるせぇ!!!!」


憤慨したメンバーが斬り込もうとするが。テレブリアはそれを軽々と笑いながら避ける


「くそっ!!なんで当たらない!!化け物がぁ!!!」

「バーカ、お前が弱いだけ………







…ッ!?」


突然後ろから殺気を感じたテレブレアは咄嗟に避ける。トラインの高速で撃ち出された拳は避けた先の壁が粉砕される程であった


「うわっ危なっ!その筋肉やば♡!!」

テレブレアは体を捻らせて、すぐさま距離を取ると腰を低く保って呪文を唱える


「【大禍死連斬(おおかしれんざん)】」

トラインは嫌な予感を感じ警戒したがメンバーは怒りで我を忘れテレブレアの方に無造に駆ける


「ダメだッ!!!避けろッッ!!!

トラインの叫びも虚しく、テレブリアのコートから高速で無数のナイフ発射される。メンバーはナイフの雨に巻き込まれ、その場から吹き飛んで壁に打ち付けられた


「くそっ!!!」

もちろんトラインは筋肉が硬いため無事だった


「へーっあんた凄い筋肉じゃん♡」

「てめぇ…」


「アンタがトラインだよねー?今の攻撃で死ぬようなら拍子抜けだもの♡」

テレブレアはトラインの巨大な筋肉を興味津々で見る


「どうやったらそんな筋肉が巨大になるわけ?化け物みたい♡あっでも勘違いしないでよ?私は好きよ?あんたみたいな巨大な人…」

「無駄話はいらん カリンダを返してもらおうか」


カリンダは意識が朦朧としながらもトラインを見つめる


カリンダの無事を目視したトラインはテレブレアを強顔で睨みつける

「嫌だって言ったら?」

「容赦はしない」


トラインは拳を構える

「俺は悪人だろうが殺すのは避けたい。だがあの子がこれ以上傷つくっていうなら俺はお前を殺す」


「なにそれ…正義のヒーローのつもりw?安心しなよ思う存分殺し合ってあげるから♡」


テレブレアは腰を低く保ちナイフを両手に構える

「【大禍死超斬(おおかしちょうざん)】」


テレブレアの呪文は身体中に黄色いオーラを纏わせ、超高速移動と超人的攻撃力を有して攻撃をする技であった。数メートル離れていたテレブレアは一瞬の間にトラインの元まで詰めると魔法強化されたナイフがトラインの腹目掛け突き刺さる


トラインは瞬時に腹筋に力を入れ防御を取る。テレブラアの強力な攻撃によって、トラインの巨体が数メートル後方に移動する程であった。テレブレアはもう片方のナイフを背中に突き刺し電撃魔法を浴びせる

「これで死ぬなよぉ!!!【テラサンダクロス】!!!!」


強大な電撃が放たれると、巨大な雷鳴が轟き、衝撃で天井が壊され穴が開く


その光景を見たカリンダは心配で叫ぶ

「トラインッ!!!!」


電撃は天まで届き、山全体を眩く光らせるほどであった。テレブレアは即座にトラインから距離をとって様子を見る。普通の人であれば黒焦げになって即死する魔法だ。当の本人でさえ魔力を使い果たして今にも倒れそうなほどだ


「はぁ?嘘でしょ?」


トラインは膝が崩れるも無事であった。肌は少し焦げ体中に湯気が立ってるものの、何とか立ち上がる


「ふははははッ♡その筋肉は魔法無効効果でも備わってるわけー?」

テラブレアが持っていたナイフを確認する。背中に刺したナイフは刺さらなかったようだが、もう片方のナイフは完全に折れていた


「魔法強化されたナイフ折れやがったぁすげぇ♡」


トラインの腹筋に刺さったナイフの割れた刃先は、内蔵までは届かなかったとはいえ、力を込めた筋肉に初めて刃が刺さった瞬間であった。トラインは冷静にナイフを取り除く


エロ―ナは回復ポーションを飲んで体力を回復させた

「一番良いポーションを使ったのはコレが初めてよ。カリンダちゃんの言うとおりね。アンタ凄いわ♡」

「無駄話はいらんと言ったはずだ」


トラインの態度にテレブレアはつまらないような表情を見せる


「なによー…せっかく褒めてるのにー♡ねーアンタ…なんで剣を抜かないわけ?」


テレブレアはトラインが剣を抜かずに拳で戦ってることに疑問を持った

「今の攻撃で分かったでしょ?あんたが私と互角に戦うんだったら剣を抜けばいい。なんで抜かないの?もしかして…



剣を抜くのが怖いわけ」


「……ッ!!」


トラインの目に宿る暗い闇をテレブレアは見逃さなかった


「ねぇ一つ聞いてもいいかしら?」

「…なんだ?」




「あんた今まで…








__何人殺してきたの?」


「ッ!!?」




その言葉を聞いたカリンダがテレブリアに向かって叫ぶ

「違うッ!…トラインは…私や兄を助けるために…人を殺すことはあったけど、それだけ!!トラインは決して貴方みたいな人殺しじゃない!!!」


カリンダの言い分にテレブレアは全てを察して不気味に笑った


「あはぁはは♡もしかしてあの子は知らないんだぁ♡」


「やめてくれ…」

「あの子がアンタの正体を知ったら…どう思うかなぁ♡」

「やめろッ!!!」


トラインはこれまでに無いくらいに焦りはじめる

「僕はあの子に…これ以上傷ついて欲しくないだけなんだ…」


カリンダも徐々に不安になってくる

「違うよね…トラインはそんな人じゃない…私は…分かってるから…」


テレブレアはカリンダに質問する

「じゃあ聞くけど彼が人を殺すときに躊躇は見せた?」


「え…?」

「普通はどれだけ覚悟は決まっていても相手がどれだけ悪人だろうとも…慣れない殺人は躊躇するものよ?この男にそれはあった?」



「それは……」

カリンダは思い出す。トラインはカリンダを守るためとはいえ人を殺すことに一切の躊躇は見せなかった


「違う…トラインは…違うよねっ…違うって言ってよ…」

「……カリンダ








___この女の言う通りだ。お前は俺を誤解している」


「トライン…?」

「カリンダ…俺は決して___







___褒められた人生は送ってないんだ」

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